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絶対に目立ちたくない元社畜おっさんの職人NPCスローライフ~推しモブに成り代わってしまったので代わりに夢を叶えます~  作者: 嘉神かろ
第1章

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第21話 モブサブの初傭兵ギルド!

 ケインたちの案内してくれた傭兵ギルドは大通りを少し進んだ所にあった。俺の家からは徒歩で一時間もかからないくらいか。

 黒を基調に塗装された建物は、いつかの教会と同じく周囲より明らかに大きい。造りも他より頑丈そうだし、魔法的な防御も張り巡らされているから、ちょっとやそっとの攻撃じゃビクともしないだろう。


 聞けば、ここも避難所の一つになっているようだ。普通よりも大きなリスクの上にある発展だから、もしもへの備えを怠らないようにしているんだろうな。


「それじゃあ、僕らは報告をすませてきます。そんなにかからないと思いますので」

「ああ。急がなくていいからな」


 少し早足に離れていくケインたちに苦笑いしつつ、見慣れないギルド内を見回す。造りは、俺のよく知る中街のギルドと変わらないらしい。

 こちら側と職員のスペースを区切るように木製のカウンターがあって、端の方には依頼の張り出されたクエストボードとテーブルがいくつか。床が石材なのは、掃除を楽にするためだろうか。獲物も怪我人も多い場所だし。


 昔のゲームみたいに棒立ちの施設担当がいないのは当然だが、その他の施設はだいたいあるらしいな。転職用の神官の窓口もギルド案内人の窓口も見える。暇そうにしているが。


 対してケインたちの向かった窓口にはそれなりに人の影があった。どうやら今は傭兵たちが戻ってくる時間らしい。


 暇だし、クエストボードでも見てみるか。どんな依頼があるのかは気になる。


 素材採取や討伐依頼、街の雑用、護衛あたりはゲーム時代にあったのと同じだな。相場は、違うか。さすがにただの雑用で一万ユグも貰えるなんてことはない。

 お、迷宮の調査依頼。こんなものもあるんだな。未踏破領域に限られてないな。定期依頼のものもある。


 なるほど、こうして見ると、やはり迷宮を中心に生きているんだって実感が湧くな。ちゃんと暮らしてる。残さざるを得なかったゲームっぽさがなくなってるというか。


「お待たせしました。何か面白い依頼でもありましたか?」

「いや、そういうわけじゃないんだ」

「じゃあ、やっぱり傭兵になってみたくなったとか……」


 そんな期待に満ちた目を向けられてもな。


「それはない。それより、さっさと酒場に行こう。腹が減った」

「そうですか……。残念ですが、お腹が減ったのは同感です。行きましょうか」


 半分は言ってみただけなんだろう。すぐに切り替えて歩き出すケインのあとを追う。

 直後、後ろの入り口の方が妙にざわついた。振り返ると、見覚えのある金髪イケメンを先頭にした四人組が目に入る。腰に下げているのは、俺が打った剣だな。


「おっ、あれは確か……」

「勇者ですよ! やっぱりカッコいいなぁ。オーラが違う」


 さっきより目が輝いてるな。こいつ、もしかしてミーハー的なところがあるのか?

 そう思ってチラリと他の面々へ視線を向ければ、カロックとリリエは苦笑と共に首肯。ルカは、ケインと同じ目をしてるな。ただし、視線の先にいるのは魔法使いだ。


「噂で聞いただけなんですが、オークションで凄い剣を手に入れたとかで、試し切りに行ってたらしいんですよ! あの表情、きっと期待通りだったんでしょうね!」


 テンション高いな……。まあいいんだが。

 それより、彼の鞄からはみ出してる牙。それに斥候系っぽい女性が持ってるあのナイフ。


「なあ。あいつらの最高到達階層って五十階層台だったよな」

「ええ、その通りです。正確には五十六階層ですね」


 とすると、つまり彼らは記録を更新したのか。あの牙は六十階層のボス、スカイドラゴンのものだし、ナイフはレアドロップだ。一発で引き当ててるあたりは、さすが勇者ってところだな。主人公補正というかなんというか。


 剣の一振で五階層更新、か。しかも一日で。あいつらの実力が大きいと思うが、それはつまり、実力を活かせるだけの装備が無かったということだ。

 今日歩き回った感じ、職人たちの腕が足りないというよりは素材の問題だろう。素材が十分手に入らないからその知識を得られていないって意味じゃ腕の話かもしれないが。

 何にせよ、俺の考えは間違って無かったってことになる。


「お前らもアレくらい活躍できるよう装備くらいは整えてやるよ。前も約束したしな。だから頑張ってくれよ?」

「勇者くらい……。ちょっと自信無いですが、アルゴスさんが協力してくれるなら百人力ですね! 頑張ります!」


 実際見込みあるしな、こいつら。

 まあ今は腹ごしらえだ。さっきからぐうぐう鳴ってるんだよな。


 酒場は一階の奥にあった。内装だけ見ればどちらかというと社食とかフードコートとかって方が近い。ただ、客が荒くれ者の傭兵たちばかりだからな。


 奥の方の席に座って適当に料理を頼む。セフィアと一緒の時より肉が多いのは、肉体が資本のケインたちが一緒だからだ。

 酒もいくらか注文して、料理が来たらまずは乾杯。俺とカロックはエールで、ケイン、ルカ、リリエは果実酒だ。


「とりあえずお疲れさん」


 労ってやれば、各々が礼を言ってくれる。


「それで、どこの迷宮に潜ってたんだ?」

「ラデリア異平原です」


 異平原、てことは水曜ダンジョンか。初心者向けの曜日限定経験値ダンジョンだ。

 今の世界だといつでも行けるみたいだな。


「ウルダの森も選択肢にあったんだが……」

「絶対、嫌だからね」

「私もちょっとぉ……」


 なるほど。女性陣が反対する気持ちは、正直わかる。特に苦手意識のない俺でもあそこは躊躇するからな。


「まあ、異平原でいいんじゃないか? 森は虫系が多くて状態異常が怖いしな」

「ですね。それに異平原は動物系が多いので、素材にも食料にも困りませんから」


 ああ、食料か。そういう視点もあった。

 どうしてもゲームの時の感覚で考えてしまうが、死ぬ要因は当時より多い。この辺の感覚も擦り合わせていかないといけないな。


「そうだな。しかし異平原か。とすると、数日でもそれなりにレベルが上がったんじゃないか?」

「ああ。索敵系スキルの訓練にならない以外は、ちょうど良い所だと思う」

「平原だしな。まあ、カロックの技量ならしばらくは困らないだろ」


 だといいが、と言う茶髪の青年は、やはり真面目なんだろうな。パーティ最年長の責任感なのかもしれない。


 実際、敵や罠に気付けるかはパーティの生存率に大きく影響する。これはゲーム時代でも同じだった。

 とはいえ、カロックの索敵能力は職業レベルからすれば十分すぎるほどに優秀だ。ただ雑にスキルを使ってるだけじゃないって証だな。


「まあなんだ。調子は良さそうで安心したよ」

「当然ね」

「調子が良すぎて回復魔法の練習ができないくらいですねぇ。もう少しくらい怪我してくれてもいいんですよぉ?」


 ふむ、この中じゃルカが一番自信家だな。しかし現実が見えていないわけじゃないのも知っている。


「はは。怪我は、あまりしたくないかな」

「そりゃそうだな」


 肩をすくめて見せれば、四人が笑う。旅の間でも思ったが、本当にいい雰囲気のパーティだ。

 というか、リリエもこういう冗談を言うんだな。少し意外だった。


「しかし本当に美味いな、ここの料理は」


 串焼きに唐揚げ、ピザにフライドポテト。酒場らしいジャンキーなメニューだが、味は間違いない。


「でしょう? 僕たちも最初驚きました。ハーフグロウのギルド酒場は、その、かなりイマイチでしたから」

「そうなのか? それはそれで気になるな」

「えぇ。やめた方がいいですよぉ。お腹と時間とお金の無駄ですからぁ」

「そうね。アルゴスなら自分で作った方が絶対いい」


 あー、そういえば野営の時に何度か作ったな。そんな大したものじゃなかったんだが、それでもか。

 うん、やめておくか。帰省することがあれば素直にエルダスに甘えよう。


「ちょっと用を足してくるよ」

「はい、行ってらっしゃい」


 えっと、確かトイレはあっちだったな。ついでに支払いも済ませておくか。多めに払って、おつりがあればチップなり他の傭兵たちへの奢りにするなりすればいい。


「しかし良い仕事だな。酔ったふりして――女二人――店を襲うだけ――てよ」

「馬鹿野郎! ――じゃねぇ!」


 ん?

 今の会話は……。


 くそ、いつの間にか人が増えててどこから聞こえたのか分からない。


 所々しか聞き取れなかったが、嫌な予感を覚えるには十分な内容だった。


「セフィアの店は、あと一時間ちょっとで閉店か……」


 ケインたちには悪いが、予定より早めに帰らせてもらうか。

 開店初日だし、杞憂ならそれでいいんだ。



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