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絶対に目立ちたくない元社畜おっさんの職人NPCスローライフ~推しモブに成り代わってしまったので代わりに夢を叶えます~  作者: 嘉神かろ
第1章

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第17話 モブサブのオークション参加!

 オークション会場は外街の、家から十五分ほど歩いた位置にあった。市民ホールのような見た目で、思っていたよりも大きい。日常的に行われるオークションらしいから、元からその為に建てられたのかもしれないな。


「すみません、取り乱して……。あ、あとスキはスキルのことであって異性に好意を向ける好きってわけじゃないですからね! いえ別にそうではないとも言ってないんですが……!」

「ああ、うん、分かったから、落ち着いてくれ」


 あまり気にしていないし。なんなら、オークション側に提出する用紙と睨めっこしながら表情をコロコロさせているのは、なかなかに面白かった。セフィアくらいの年齢の子に言うことじゃないから黙っておくが。


 ともかく、入り口で話していても仕方ないので中に案内してもらう。

 中もやはり市民ホールのようで、エントランスとホールを囲むようなロビーには多くの人が集まっていた。見た感じ、商人や傭兵がほとんどだ。


「普段からこんなにいるのか?」

「どうでしょう? 前回来たのはずいぶん前なんですが、その時と同じくらいな気がします。あ、でもあの時は珍しいものが出品されるって噂があったので、多い方なのかもしれません」


 なるほどな。

 オークション自体は月に二回行われるそうだから、それも踏まえると、やはり普段はもう少し少ないんだろう。


 受付で入札に必要なあれこれを受け取って、ついでにさっきの剣に関するあれこれを書いた紙を渡したら、いよいよ入場だ。

 ホール内は階段状になっていて、最下層中央のステージを見下ろすように配置された椅子は既に、その半分以上が埋まっていた。


 二階や三階部分にはバルコニー席もあるな。それ以外は日本でよく見るのと変わらないか。


「あ、始まるみたいですね」


 セフィアの視線を追えば、ステージの端からタキシード姿のウンディナの男が出てくるのが見えた。異世界感は無い服装だが、元がゲームだからな。仕方ない。


「お集まりの皆様、お待たせいたしました。これより、ミラディスオークションを開始いたします。品目についてはお手元のリストをご覧ください」


 ふむ。ざっと見た感じ、出品されるのは武具ばかりではないらしい。宝石や魔道具の類いもある。見覚えのある名前も少なくないし、迷宮から見つかったものだったり、迷宮攻略に必要なものだったりが集まるオークションなんだろうな。


 最初は、イヤリング型の魔道具か。名称は書かれてないから、迷宮から見つかった一般には知られないものとかだろうか。当時のようにフレーバーテキストや性能がウィンドウで出てくるわけじゃないしな。


「まずはこちら。ポイズンアメジストのイヤリング! なんと、身につけるだけで毒に対する耐性を得られる魔道具です! 百万ユグから始めましょう!」


 ポイズンアメジストは魔法毒の属性を持った宝石だったか。だがあの見た目と効果は、ゲーム内で耐毒の耳飾りって名前だったアクセサリーと同じだ。


「毒への耐性ですか。なかなかいい効果ですね」

「ああ。十階層台は毒持ちも多いしな。貴族も欲しがりそうだな」


 なんて話してる間にも競売は進んでいく。今少し前の席の商人らしい男が上げた札で四百万ユグだ。

 凄いな。ゲーム時代ならせいぜい十万くらいだったのに。


 武具の売れ行きがイマイチなら、露店でも出して耐性系のアクセサリーで稼ごうと思ってたんだがな。耐毒の耳飾りであれだと、必要以上に目立ってしまいそうだ。

 うん、無しだな。売るにしてもセフィアを通そう。


「どうしたんですか? 急に頷いて」

「いや、セフィアと出会えて良かったと思ってな」

「ふぇっ!? そ、それってどうい――」

「八百二十万! 八百二十万ユグが出ました! もうありませんか!?」


 おお。凄いな。小さな家なら買えそうな額だ。

 どうやらこれで決定らしい。競り落としたのは、バルコニーの人か。


「上にいるのはどんな人なんだ?」

「え、あ、えっと、貴族ですね。どれだけお金を積んでも、あそこは貴族以外入れない席なので」


 ほう。なら以前はセフィアもあの席からオークションを眺めてたのか。

 しかし残念だ。あの席は客席からは顔が見えないようになってるから、目立たないって思ったんだが。


 その後もつつがなくオークションは進んでいく。意外だったのは、客の出入りがそれなりにあることか。けっこう品数が多い分時間がかかるからなんだろうが、二、三だけ見て帰って行く人もいた。


 落札価格はまちまちで、高い物で千数百万。安いものだと十万以下で決まってしまう。最初の八百万はわりと高値の部類だったらしい。

 なるほど、これは面白い場所だ。


「それでは、次が午前の部最後の品物となります! 皆様、驚きすぎて椅子から滑り落ちないようご注意ください……。アイランドウルフの牙より作られた、超業物の解体ナイフです!!」


 ホール内がどよめいた。表情を見れば、目を見開いている人が多い。視線をギラギラさせはじめた者も少なくない。リストにはモンスター素材の解体ナイフとしかなかったからこその驚愕なのだろう。


「どうして解体ナイフなのかは分かりません! どうせなら武器にすれば良かったのに! しかしこれは解体ナイフ! どんなモンスターの素材も綺麗に剥ぎ取れるだろう解体ナイフです! 開始は、一千万から!」


 なんか軽くディスられたな。

 いや、それはともかく、アイランドウルフの素材はそれほどなのか。まさか一千万開始とは。おまけのつもりで作ったものなのに。


「単品で出したんだな」

「それはそうですよ! あれがおまけだなんて有り得ません! まさかアイランドウルフの牙からだとは思いませんでしたが……」


 つまり、性能だけ見て判断したと。実際、基本職のうちに手に入るどの剣よりも高い攻撃力があるとは思う。俺の体に刺さらなくて勝手に折れるくらいの素材なのに。


 ただ、戦闘に使うことは想定してない形だからな。だからおまけと考えていた。


「千三百万! 千三百十万! おっと千五百万が出た!」


 嘘だろ。なんかどんどん上がってるぞ。

 変な汗が出てきた。もういい。そろそろ落ち着いてくれ。そんな額がつくもんじゃない。それくらい、いくらでも作ってやれるから。


 ああ、千七百に乗った。これは絶対、俺が作ったってバレちゃいけない。絶対目立つ。超目立つ。そしたら仕事が馬鹿みたいに増えるぞ。それはもう嫌だ。


「千八百二十万! 千八百二十万で落札です!」


 せん、はっぴゃくにじゅうまん……。


「なあ、これは、悪い夢か?」

「夢だとしてもいい夢ですよ。いえ、それにしても、思った以上に……」


 ここから五パーセントがオークション側の取り分になるから、千七百万ちょっと受け取れるわけか……。その内俺の取り分が千二百万? おまけのナイフで?


 これは、オークションの参加は時々にした方がよさそうだ。出品するにしてももっと抑えたものにしないと。


「ちなみに、セフィアの予想はいくらだったんだ?」

「千三百から、いっても千五百くらいかと」


 それでも上で千五百の予想だったのか。おまけのつもりだったのが悪い気がしてくるな……。


「今落札したの、伯爵家の当主ですよ。傭兵をたくさん抱えている方ではありますが、普段は自分で来ることなんて無いのに。祖父の教えに従って一応噂を流したのが、まさかこれほどの結果に繋がるなんて……」


 伯爵か……。恐ろしいな。

 しかもまだ本命の剣があるんだ。いったい、いくらになるのか。 


 待てよ? 順番はどこだ?

 えっと、それっぽいのは……。


「まさか、これか?」


 魔銀製バスタードソード、と書かれている項目がある。一番下に。


「なあ、オークションって、やっぱり最後の方がはぶり良くなるよな?」

「そうですね。もう後のことを考えなくて良いので。……心の準備をしておきましょう」


 ああ、くそ。何が何でも俺が制作者って隠さないと……。



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