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絶対に目立ちたくない元社畜おっさんの職人NPCスローライフ~推しモブに成り代わってしまったので代わりに夢を叶えます~  作者: 嘉神かろ
第1章

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第13話 モブサブの工房紹介!

 おっと、そうだ。その前に確認しないといけないことがあった。


「そういえば、今日は体調はどうだ? 昨日はこの敷地内にいるだけで苦しかっただろう」

「あ、言われてみれば、凄く楽ですね。少しだけ息苦しい感じもしますが」


 なるほど。どうやらセフィアはかなり魔法適性が高いらしい。その上で、職業レベルはもの凄く低い。一桁の可能性すらある。

 このまま工房の中に入れたら、数分で魔力中毒になるな。


「これを付けろ。魔力の影響を軽減するネックレスだ」

「国宝級のアクセサリーじゃないですか!? どうしてそんなものを……」


 そ、そうなのか。プレイヤーにとってはただのプレイ継続特典で、誰でも手に入るものなんだが。

 これを手に入れる頃にはもう必要無くなってるから、サブキャラ育成用か、あとはせいぜい、見た目装備として使われるくらいだった。シルバーのチェーンに紫の宝石が付いたシンプルさがなかなかオシャレだしな。


「色々あってな」

「なるほど……。分かりました。首にかけるだけでいいんですね?」

「ああ」


 こういうところは話が早くて助かるな。聞かない方がいいことを心得てる。

 ただ、緊張してるのか、上手く留め具を付けられないらしい。


 仕方ない。付けてやるか。


「後ろ向いてくれ」

「えっ、あ、すみません、ありがとうございます」


 よし、これで大丈夫だ。効果も問題なく発動してるな。

 しかし、紫の瞳に紫の宝石か。これはなかなか。


「よく似合ってるじゃないか」

「本当ですか? ふふ」


 うん? 顔が少し赤い。魔力にあてられたか? まだ地上部分の魔力も薄まりきってはいないし、あり得る。

 これはサクサク案内した方がいいかもしれないな。


「それじゃあ行くか」

「分かりました」


 倉庫部分の右奥にある階段を下りると、まず青い金属製の扉がある。これはウンディナメタルという耐熱性と軽さが特徴の金属で、元々水属性の魔力を帯びてるから魔力耐性も高い。一応の熱気対策で選んだ素材の扉だ。


 その向こうには小部屋が一つ。セフィアの目の色を変えたのは、反対側にある白い扉だ。


「精霊銀!? え、まさか、鍍金ではなく!?」

「ああ。混ぜ物も一切無しだ」

「これだけで家が一軒買えますよ……」


 今はそんなに高価なのか。何世代か前の素材なんだが。

 ストレージに大量にあるって言ったらどんな反応をするのやら。まずストレージの時点で白目をむきそうだな。


「いえ、それより、この扉を使う必要があって、さらにはこのネックレス。それに、昨日のあの息苦しさ。とすると、建物が崩壊する原因は……。アルゴスさん、この先には、高濃度の魔力を発生させる何かがあるんですね。そしてそれを鍛冶に利用していると」

「正解だ」


 さすが賢いな。精霊銀の扉を見ただけでそこまで分かるとは。

 たしかに精霊銀は魔力耐性の最も高い素材の一つだし、体調のことやネックレスを事前に渡したこともあるから、予測できるだけの材料はある。しかし、鍛冶に利用しようとしてるところまで考えが及ぶ人間はどれだけいるだろうか。


「たまたまあの商人の周りやこの土地に関わった人で魔力適正の高い人がいなかったんだろうな。そういう意味だと、運が良かった」

「ですね。でなかったら、魔力の流出を防ぐくらいはできていたはずです。そうとうのコストがかかりますが。……もしかしてですけど、この先全部、精霊銀で作られていたり」

「はしないぞ。別の素材を使ってる。まあ、見れば分かる」


 さすがに工房一個まるまる精霊銀にしてしまうと、手持ちが尽きるからな。


 固唾を呑むセフィアに見守られながら、見た目以上に、それこそ精霊なんじゃないかってくらい軽い扉を押し開く。中に見えるのは、大きな炉が一つと白いブロックが積み上げられたままの空間だ。


「石材? いえ、それだとすぐに崩れてしまうはず。でも、見た感じ変わったところはなさそう? アルゴスさん、これはどういう素材ですか?」

「土に砕いた魔石を混ぜて、錬金術師と鍛冶師のスキルで整形しただけのブロックだ」

「……たぶん、その知識を売るだけでもそれなりのお金になりますよ」


 ああ、たしかに。その発想はなかったな。要は特許的な話になるんだろうが。

 ただ、他のプレイヤーが見つけた技術で俺が利益を得るのは気が引ける。それ以上に、目立つだろうから嫌だ。


「秘匿の方向で頼む」

「まあ、アルゴスさんがそうおっしゃるなら」


 それより、急いで案内しないと。ネックレスも完璧ではない。少しずつ影響を受けてはいるから、急に症状がでるかもしれない。


「工房はこんな感じだ。もう試運転も済ませたから、やろうと思えばいつでも剣を打てる」

「もうですか? 昨日土地を買ったばかりなのに、早いですね」

「自分でも驚いてるよ」


 早くても一週間はかかると思ってたからな。


「そういうわけだから、必要ならいつでも依頼してくれ。それじゃあ次だ」

「次、ですか? ……あ、魔力の」


 一つ頷いてさらに奥へ向かう。

 炉に隠れるような位置に作ったそれは、真っ黒な押し開きの扉だ。龍血石というゲームのシナリオ上三番目の世界で採れる鉱石と精霊銀の合金で作ったこの扉は、精霊銀と同程度の魔力耐性に加え、高位の竜のブレスすら耐えられる強度がある。


 常設ダンジョンである大迷宮からモンスターが出てくるなんて話は聞いたことが無いが、インスタントダンジョン、定期的に現れたり消えたりする迷宮でならあった。

 現実とゲームとで微妙に違うところもいくつか確認してるし、アップデートで追加された部分については俺も知らないから、用心するに越したことはない。


 相応に重量のある扉を開き、セフィアを招き入れる。灯りは無いが、奥から漏れる青い光で十分視界は確保できていた。


「……! これは、もしかして、迷宮の入り口、ですか?」

「ああ。正確にはミラディス大迷宮の三十一階層に続くショートカットだ」

「そんなものが……。たしか、現在の最高到達点が五十階層あたりですから、ほとんど最前線じゃないですか」


 五十階層か。まだそんなあたりなんだな。

 アプデ前で解放されていたのがたしか、百五十階層までだったはずだ。

 それから何階層増えたのかは知らないが、まだまだ先は長い。


「この場所のことはトップシークレットで頼む。絶対に目立つから」

「えっ、あ、そう、ですね……。分かりました。誰にももらしません! 私とアルゴスさんだけの秘密です!」

「助かる」


 言い方が少し引っかかるが、まあいいか。

 それより、セフィアの体に影響が出る前にさっさと出よう。本当に突然くるからな。


 少し急ぎ足で地上に戻り、倉庫内で一息吐く。セフィアは、元気そうだ。見たところ顔が青白くなってるだとか、苦しげだとかという様子はない。


 今も倉庫内を興味深げに見回している。まだほとんど何も無いんだがな。

 あるのはせいぜい、昨日炉の試運転で雑に打ったロングソードが数本くらいだ。それも樽に放り込んであるだけだから、一目で大した物じゃないと分かる。


 なんて思ってたら、彼女の興味もちょうど剣に移ったらしい。


「これが試しで打ったって剣ですね。少々拝見しても?」

「大丈夫だ」


 お、目つきが商人のそれに変わったな。

 しかしあの若さでここまで多方面の目利きができるのか。そうとう厳しく仕込まれたのかもしれないな。なんにせよ、将来有望だ。


「大した出来じゃないだろ。本当に雑に打ったからな」

「え、これでですか?」


 ん? エルダスの工房なら大抵の人間が越えてくる程度のものだと思うが。


「これでも十分すぎるというか、小さな武器屋なら壁に掛けてあってもおかしくないレベルですよ?」

「何を言って――本当だな。思っていたより上質だ。なんでだ?」


 打った感覚と仕上がりが一致しない。俺のレベルでそんなことはあり得ないはずなんだが。


「あ、もしかして、エルダスさんの工房のレベルを勘違いしてません? あそこは国内でも上から数えた方が早いところですよ?」

「そうなのか? いや、それにしたっておかしいぞ。初心者向けの安物の感覚で打ったからな」


 ならなんだ?

 普段と違うことと言えば……、あ、そういうことか。


「これはあれだ。鍛冶場の魔力濃度が影響したんだ。無意識に魔力と鉄が馴染むように打ってたらしいな」

「なるほど、そういうことですか。それなら納得です」


 しかし、そうか。あそこで打つと自動的に一定より上のランクのものになるのか。

 そうすると商品のつもりで打った武器なんか売りに出した日には、かなり目立ってしまいそうだな。


 それは困るというか、嫌だ。しかし収入的な意味でも、夢のためのレベル上げのためにも、鍛冶をしない、あるいは売らないという選択肢は無い。


「なあ、俺が打った剣は全部セフィアが買い取ってくれないか? 他にも卸すとなると、想定以上に目立ちそうでな」

「そう、ですね。そうしたいのは山々なんですが、今の店舗だと武器を置くスペースは無さそうなんですよ。すみません……」


 スペースの問題は仕方ないな。色々と契約は結んでしまってるだろうし、今から商品を変更してスペースを作れとは言えない。

 ならどうする? 一応、しばらくは働かなくても生きていけるだけの金はある。鉱石を買い足す必要があるだろうことを考えても、数ヶ月はもつだろう。


 その頃には状況も変わってるかもしれないし、今は約束に留めるか?


「他の店に卸すということならできるかもしれないですが……」


 だがそうすると、商談のためにアレコレ動いてもらう必要があるな。これから立ち上げで忙しくなるだろうに、寄り道をさせることになる。それはさすがに悪い。


「あ、一つ、良い話がありました!」


 うん?


「アルゴスさん、オークションに出品してみませんか?」



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