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絶対に目立ちたくない元社畜おっさんの職人NPCスローライフ~推しモブに成り代わってしまったので代わりに夢を叶えます~  作者: 嘉神かろ
第1章

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第12話 モブサブの教会?

「大型の魔物も捌けるようにかなり広く、かつ換気能力が高くなるように設計した。例えここで血抜きなり何なりまで済ませても、すぐに匂いは消えるはずだ」

「そんな機能まで……。あ、コンロも四口ありますね。下のこれは、もしかして魔力式のオーブンですか?」

「そうだ。サンダーバードだって丸焼きにできるぞ」


 つまりは、人間が一人まるまる入るサイズだ。加熱効率だとか、ゲーム内で実際に使うわけでもないのにもの凄く考えたのを覚えている。

 設計に技術者のフレンドが協力してくれなかったら、ここまでのものは作れなかった。


「いいですね……。ちなみに、同じものを作って売っていただくというわけには……」

「素材的に難しいな」


 二つ先の龍族の世界まで行かないと手に入らない素材を使ってるからな。


「そうですか……」

「セフィアは料理はするのか?」


 元貴族だし、使用人に任せてそうなイメージがあるが。


「一応できますね。昔は自分ですることはあまり無かったんですが、ある程度のことは自分でできるようにしておけというのが我が家の方針でして。今はわりと好きな部類です」

「なるほどな。なら、機会があればここで腕を振るってもらえるとありがたい」

「いいんですか!? ありがとうございます! 楽しみにしてます!」


 わりとだなんて言ってるが、やはりかなり好きが正しいらしい。良い道具、新しい道具を使ってみたいという気持ちは俺も分かる。ゲーム時代、新しい生産用装備が出たらいの一番に試していた。


「さて、あとは二階だが、そっちは私室予定やら書斎予定やらと、何に使うか決めてない部屋がいくつかあるくらいだ。見るか?」

「はい、お願いします!」

「じゃあ玄関まで戻ろう」


 玄関横の階段を上り、二階へ。こちらは同じような部屋ばかりだし、家具もまだだからサクサク見せていく。セフィアが気にしたのは、窓からの景色か。


「こうして見るとやっぱりずいぶん広い土地ですね。高位の傭兵が模擬戦をしても問題無さそうです」

「だな。仮に顧客をとるなら、裏で巻き藁を切る以上の試し切りをしてもらうのもいい。建物に囲まれた部分は庭園にでもしようかと思ってるから、もっと奥の方でだが」

「いいですね。買う前に実際に戦う想定で振るえるところは案外少ないので、喜ばれるかと。……ところで、そこの綺麗な赤い建物が工房で間違いないですか?」


 さっきからチラチラ視線がいっていたからな。気になっているのは分かっていた。


「ああ。正解だ。昔見た建物を真似てみたんだ」


 赤いレンガを積み上げた異国情緒溢れるデザインは、横浜の赤レンガ倉庫のもの。本物よりは少し小さいが、見た目はほとんど一緒だと思う。行ったのはもう随分前だから、多少記憶違いはあるだろうが。


 当時は、大学生だったか。現代的な街並みに突然あんな建物群が現れたものだから、思わず軽く見蕩れてしまったのを覚えている。あの時は夜だったから、余計に綺麗だったな。


 あの感動はいくつも連なってこそかもしれないと思っていたけど、こうして作ってみると、一棟でも良いものだ。目立つから表には出せないが、作って良かったと思う。


「なんだか異教の教会にありそうですね。あんな建物で結婚式があげられたら素敵です」


 セフィアも女の子だな。

 しかし教会か。たしかにそれっぽくも見える。赤レンガ倉庫ってイメージばかりだったから、考えつきすらしなかった。


「そうかもしれないな。まあ、あれは鍛冶工房なんだが」

「正直、もったいないって思っちゃいますね。あっ! 別にダメとかではないんですが」

「はは。分かってるよ。さて、それじゃあ案内しよう」


 一度一階に降りてダイニングを経由し、キッチンの勝手口から外に出る。キッチンで処理できない大物を庭で処理したり、バーベキューしたりすることを想定したから、ここの扉も大きめだ。


 外に出ると、正面の窓越しには客間が見える。家をコの字に作ったからだが、空いてる側に工房があることを考えると、ここは中庭ということになるんだろう。

 南側で日当たりもいい。そのうちガーデニングをするのもいいかもしれないと思った理由だ。


 前世と違って時間はたっぷりある。鍛冶ばかりするのももったいないし、鍛冶作業の中にも待ちの時間があるんだから、目立たない範囲で色々とやってみたい。


 まあ今は工房の案内だな。


「下から見てもやっぱり綺麗ですね。これは、煉瓦を積み上げてるんですね。北の方の工法でしたか」

「たしかそうだな。この位置なら通りからは見えないし、目立つことも無いだろうから少し趣向を変えてみたんだ」


 セフィアの工房を見る目は、年相応の女の子のようなキラキラとしたものだ。さっきリビングで見た輝きとは違う。あれは商人の目だった。

 どちらがいいとかは無い。両方とも、アルゴスと同じ、応援したくなる人の目だ。


 実を言えば、彼女に工房の中まで見せるかは悩んでいた。工房まで案内すればあの異常な魔力濃度について説明しないといけなくなるからだ。

 誤魔化そうにも、工房の機能に利用している以上、魔力の発生源を知ってるってことはすぐにバレる。そうすると迷宮のことも説明しないわけにはいかない。


 ただそれは、俺にとってはリスクだ。

 もし彼女の口からバレたら、確実に目立つ、それはもう、非常に目立つ。


 この場所に住み続けられるだけなら、なぜか、たまたま大丈夫だった。運がよかったでも十分に通じる。

 細かな調査をしている様子が無かったからな。


 しかし、原因をそのままに利用しており、その上でミラディス大迷宮に続く隠し通路の入り口を所有してるなんてことになったら、どれだけの人から悪感情を向けられるか分かったものじゃない。


 しかしだ。彼女の夢を応援するなら、隠し通路のことを知っておいてもらった方が動きやすい。素材の出所をいちいち誤魔化さなくて済むし、必要があれば秘密裏に彼女を鍛えることもできる。


 大迷宮とはそれだけ価値がある場所だから。


 つまりだ。本気で応援するなら、中まで案内するのが一番良い。


「それじゃあ、中を案内しよう。一階はただの倉庫で、工房は地下にある」

「お願いします!」


 願わくば、この選択が悪い未来に繋がらないことを、だな。



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