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絶対に目立ちたくない元社畜おっさんの職人NPCスローライフ~推しモブに成り代わってしまったので代わりに夢を叶えます~  作者: 嘉神かろ
第1章

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第11話 モブサブの新居紹介!

 この日は夕暮れまで作業を続け、一度宿に帰った。もう一泊分代金を払ってあったし、今後の予定をセフィアと共有したかったから。

 あれこれと聞かれるかと思ったが、今は楽しみにしておくらしい。


 翌日は道中で弁当だけ買って、朝から作業をする。昨日の時点で住居の基礎部分までは手を付けられたから、今日は建物部分だ。


 幸いだったのは、ここの土地が無駄に広いことと、人通り自体がもの凄く少ないってことだ。多少の音なら通りや隣まで届かないから、一人でこんな作業をしていても目立たない。


 敷地を囲う石垣が腰ほどまでしかないから、場合によっては野次馬対策をしないといけないかもしれないなんて考えてたけど、必要無かった。


 おかげで人の目を気にすることなく、あらゆるスキルを使える。ユグクロの生産システムはけっこう他の生産職のスキルを使うと便利な場合が多いけど、門外不出なんて言って教えられることもあったからな。衆人環視じゃ気軽には使えない。


 そうして黙々と作業をしているうちに影は短くなって、そしてまた長く伸びる。気がつけば、西の空が茜色に染まり始めていた。


「ふぅ……」


 腰に手を当て、一つ息を吐く。それから、改めて眼前の光景を確認した。


「確かに、ある、な……」


 正直信じられない。スキルもステータスもあるから、普通よりずっと早いとは思っていた。それでも、だ。


「まさか、ほとんど一日で完成するなんて思わないだろ……」


 目の前でだんだんと赤く染まる光に照らされているのは、今日から暮らす、新しい我が家だ。昨日は基礎しか無かったはずの、新築二階建てだ。

 我ながら恐ろしい。この世界で生産職を極めたら、こんなことができるのか。


 それでもなお簡単には辿り着けないのがアルゴスやエルダスの夢ということでもある。

 もしかしたら、思っていた以上に、ずっと、道は険しいのかもしれない。


 達成感と恐怖にも似た何かという、まったく正反対の感情が胸の内を満たす。真逆の感情であるはずなのに、もたらした結果は同じだ。両方が、アルゴスの夢を叶えるという決意に薪をくべて、いっそう、熱く燃え上がらせる。

 より多くの商品を売るだとか、新しい顧客を獲得するだとかより、ずっと闘志が湧いてくる。


 思い返せば、営業時代も取引先の人が満足して浮かべる笑顔を見るのが好きだった。もしかしたら俺は、人のために何かするのが好きなのかもしれない。それか、人が何かを成し遂げて喜ぶ姿を見ることか。


「こんにちは……って、えぇ!?」

「ああ、セフィア。ちょうど良かった」


 石垣の向こうで目を見開くハーフエルフへ手招きして、新居の前へ呼ぶ。どうやら新しい我が家は、さっそく初めてのお客さんを招き入れることになるらしい。


「なんでもう完成してるんですか!?」

「それは、あれだ。……頑張ったんだ」

「頑張ったからってこうはならないと思うんですが……」


 まったく以て同感だ。スキルって凄いな、という感想しか出てこない。

 もちろん生産用サブとして鍛えあげた肉体があってこそでもある。


「まあなんだ。せっかく完成したんだ。中を案内させてくれ」

「っ! はい! ぜひ!」


 他人の新居だっていうのに、妙に嬉しそうだな。しかしそういう反応をされると少し、こちらも張り切ってしまう。


「裏にも工房があるんだが、とりあえずはこっちからだな」

「はい。外観はこの街の様式に合わせたんですね」

「目立ちたくないからな」


 石造りの土台の上に木造の建物。屋根は赤い瓦。見た目だけなら周囲の建物と全く同じだ。素材は手持ちであれこれしたから多少違うが、まあ、見た目に分からなければ大丈夫だろう。


「その割にはなんだか立派ような気もしますが……。元々あった家より一回りくらい大きいですよね?」

「そこは、あれだ。途中から楽しくなってきてな……」


 大の大人が恥ずかしいと言われたら正直否定はできない。あまりにサクサク作業が進むから、調子に乗ってしまった感はある。


「ふふ、なるほど。やっぱりアルゴスさんも職人ですね」


 言われてみれば確かに、ゲーム時代の生産勢も似たような感じだったな。ときどき暴走して変なものを作ってた。

 爆発反応装甲の盾だったか、ガード時に爆発を起こしてダメージ軽減とカウンターをとか言いながら、実際に使ったら盾役が吹っ飛んだなんてこともあったな。


 それに比べたら、予定より家が少し大きくなってしまったことくらいは大した問題じゃないだろう。掃除は大変そうだが……。


「そう言ってもらえると多少気が楽だな。中を案内しよう。玄関はこっちだ」


 少し大きめに作ったのは、体の大きな種族を想定してだ。巨人族を招待する予定はないが、一応、この街に入れる程度の体格の人がどうにか入れるくらいにはしてある。

 玄関はそれとは関係無しに広め。靴を脱ぐ文化は無かったはずなので、下駄箱は置いていない。というか、大きめの靴箱を置く想定で設計したせいで広くなってしまった。


「かなり広く作りましたね」

「ああ。スペースには余裕があったし、広くて困ることはないからな」


 これも一応嘘ではない。再設計しなかった理由だからな。

 玄関にあれこれ置くこともあるし、備えあればってやつだ。


「まずは、応接間だな。しばらく使う予定がないから後回しにはなるが、そのうちローテーブルとソファを置いて最低限は整えるつもりだ。絵なんかもあった方がいいか?」

「そう、ですね。貴族というわけではないので、別になくてもいいと思います。むしろ、豪華すぎるのも問題かと。簡単なものならあっても良いと思いますよ」


 ふむ。まあ、何か見つけたら飾るくらいでいいか。

 家具については他の部屋のものも含めて自作する予定だ。たぶん、作った装備を売る商人相手に使うくらいだろうし、ほどほどの品を目指す。


「この奥にある二部屋は客間にするつもりだが、そっちも整えるのは後回しだな」

「客間が二つも……。ずいぶんしっかり作ったんですね」

「これだけ広いとあってもいいかって思ってな」


 本当に、無駄に広いからな。そのせいで部屋数がやたら増えた。

 リビングなんかはともかくとして、自室はあまり広くすると落ち着かないから細かく分けることで対応した。


「こっちはパーティルームか、何かしらの作業で使うつもりの部屋。そっちがダイニングで、突き当たりがトイレだ。で、ここがリビング」

「広いですね……。こんなリビング、貴族でも下位の家じゃなかなかありませんよ。十人以上でパーティができるじゃないですか」


 これも広くて困ることは無いからな。将来ペットを飼うこともあるかもしれないし。

 というか飼ってみたかったんだよ、ペット。前世は賃貸の一人暮らしだったから諦めたが、犬猫は好きだから。


 こっちの世界にも従魔や使い魔って概念があるし、基本家に居るはずだから現実的なはずだ。ただまあ、日本で飼うような犬猫よりずっと大きいから、リビングも広くした。


「こっちはもう家具を入れてあるんですね。シンプルなものが多いですが、一目で上質だって分かります。もう少しよく見てみてもいいですか?」

「ああ。いくつかは端材で作ったやつだし、気にせず触ってくれ」


 それとゲーム時代に作ったやつだな。

 家を建ててる途中に息抜きがてら、思いつきで作ったものなんだが、けっこう気に入ってる。


「うわ、こんな綺麗な白木、上位貴族の家でもなかなかありませんよ。このソファも凄く座り心地が良さそう。この翡翠色は、オリビエクロス? カーペットはスノウシルクとブラウンウールですね。これも壁に掛けてあってもいいくらいの質です。昨日今日でできるものじゃないですよ!」


 急に目を輝かせて。さっきまではずっと横か後ろについて部屋を見てたのに、ずいぶん忙しそうだ。

 商人の血なんだろうか。


「それは昔作ったやつだな」

「なるほどなるほど。じゃあ、端材で作ったのはこっちの白木のテーブルと椅子ですか?」

「よく分かったな。ささっと作ったにしては上出来だと思ったんだが」


 目利きのプロからしたらやはり違うものなんだな。


「いえ、これらも十分すぎるほどに高品質ですが、他がそれ以上に素晴らしい品だったので」


 それは、まあ、素材のランクからして違うしな。木材の方もストレージに大量に持たせてただけあってそれなりだが、あの辺は最新に近い素材。ランクで言えば三つくらいは違う。

 それに売る用だったりメインキャラの家に置くようだったりで、作るときも手間をかけた。差があって当然だ。


「ちなみに、これらの家具や雑貨を卸していただけたりは……」

「まあ、頼まれたらやるぞ」

「やった! あ、すみません、ありがとうございます!」


 目標の神話級の剣を作るのに、他の生産職のスキルが必要になるかもしれないしな。もともとレベル上げに何かするつもりではあった。


「そちらの扉がキッチンですか?」

「ああ。まだコンロとシンクを置いてあるだけだがな」

「アルゴスさんの置くコンロですか。興味ありますね」


 そう言われては見せないわけにはいかない。コンロやらの魔道具もメインの家用に試作した残りだから、自信作の部類に入る。

 それだけじゃない。部屋そのものも色々と拘った。



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