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第1話
生まれつき、何かがずれていた。
走れば遅く、計算は遅れ、声を出せば笑われた。周りの子どもたちにとって「当たり前」にできることが、どうしても自分にはできなかった。
努力はした。誰よりも必死に。
夜遅くまで机に向かい、鏡の前で言葉を繰り返し、擦り切れるほどノートを埋めた。だけど、追いつけなかった。
いや、追いついたとしても、次の日にはまた置き去りにされていた。
「どうしてできないの?」
「なんでお前だけ違うんだよ」
そんな言葉に混じって、机に落書きされ、靴を隠され、笑い声の標的にされる。
気づけば、誰も信じられなくなっていた。
―逃げた。
学校からも、人からも、未来からも。
もし願えるなら、過去に戻りたい。もう一度やり直したい。
けれど、それは叶わない。時間は残酷に一方通行で、後悔を振り返る余地すら与えてはくれない。
だから、足掻くしかない。
這いつくばってでも、今を生きるしかない。
たとえ誰にも理解されなくても。
たとえ再び笑われるとしても。
―願うなら。
せめて、自分だけは自分を見捨てないように。




