第21話「モブの賭け」
火曜日の教室は、いつも通りの騒がしさだ。体育祭の熱も落ち着き、みんな中間テストの話題でザワザワしてる。俺、存在感ゼロのモブは、窓際の特等席でパンをかじりながら、佐藤健太――改変モブ2号をガン見してる。昨日、スタディグループでモブBとモブCの不自然な動きを封じた俺の付箋細工、なかなか効いたぜ。藤堂翔と高嶺美咲のラブコメは、原作通りの空気をキープ。でも、佐藤のあのスマホ会話――「モブBとC、動ける状態」「美咲の行動を誘導」って言葉が、頭から離れない。モブ連合の「緊急プラン」、次は何だ?
「おはよ、翔!テスト勉強、昨日の続きやろうぜ!」
佐藤が、朝から藤堂に絡んでる。いつもの明るい笑顔だけど、目がなんかギラついてる。藤堂は「いいね、図書室また行こう!」とノリノリ。美咲は窓際で友達とテストの範囲を確認しながら、チラッと佐藤の方を見る。あの視線、体育祭やスタディグループの時と同じ、鋭くて意味深だ。ヒロインAが、佐藤の企みに気づいてる?いや、まさか。でも、彼女の「背景くん」って言葉、ただの気まぐれじゃない気がしてきた。
(美咲、お前、ほんとに何を知ってるんだ?モブ連合の影に、どこまで気づいてる?)
俺のモブの勘が、ビンビン警報を鳴らしてる。佐藤はスタディグループで美咲を巻き込むのに失敗したけど、モブ連合の指示で次の手を準備してるはず。モブBとCがスパイなら、クラスの他のモブも怪しい。問題は、モブ連合の「緊急プラン」がどんな規模なのか。原作の日常パートをどうやってかき乱す気だ?
ホームルーム。担任が「中間テストまであと一週間。勉強頑張れよ」とダラダラ言う。クラスが「マジかよ」とため息つく中、佐藤がノートに何か書き込んでる。ペンが止まるたびに、モブBとCの方をチラ見。やっぱり、こいつらを動かして何か仕掛ける気だ。スタディグループの次は、テスト勉強の流れを利用して、藤堂と美咲の関係に割り込む作戦か?
(スタディグループの失敗で、佐藤も焦ってるはず。モブ連合の指示、そろそろ具体化してくるな)
昼休み。佐藤がモブBとC、女子一人を引き連れて、藤堂に「今日の勉強会、もっと人数増やさない?クラスみんなでやったら盛り上がるよ」と提案。藤堂が「いいね!美咲も誘おうぜ!」と言うと、佐藤が「うん、でも美咲ちゃんマイペースだから、別のグループでもいいかも」と、さらっと流す。そこだ!また藤堂と美咲を離そうとしてる!
(くそ、こいつ、しつこいな。モブBとCを使って、美咲を孤立させる気か?)
俺は、教室の隅で考える。親睦会や体育祭では、ペア操作やバトンパスで直接的な改変を狙ってきた佐藤。スタディグループではモブBとCを動かして、間接的に仕掛けてきた。今回は、もっと大人数の勉強会で、藤堂と美咲の時間を減らしつつ、モブ連合のスパイを使って誤解を仕込む可能性が高い。俺の存在感ゼロ、もうバレかけてるかもしれない。でも、ここで引いたら、原作のラブコメがズレちまう。
(よし、俺も賭ける。モブ連合の動きを暴くため、勉強会に潜り込んで、モブBとCを潰す)
放課後、図書室。スタディグループが拡大して、クラスメイト十数人が集まってる。藤堂、佐藤、モブBとC、女子二人、他のモブっぽい奴ら。美咲は別のテーブルで、友達と参考書広げてる。俺は、存在感ゼロを活かして、佐藤の近くの席に滑り込む。誰も俺に気づかない。完璧だ。
佐藤が「じゃあ、グループ分けて勉強しよう。藤堂、モブBと数学やってよ」と仕切る。モブBが「翔、頼むわ!」とわざとらしく絡む。モブCが、別の女子に「美咲ちゃんのグループ、こっちに合流しない?」と声かける。美咲が「んー、こっちで大丈夫」と笑顔で断るけど、モブCの目が佐藤と合う瞬間、なんか企んでるのがバレバレだ。
(モブBで藤堂を縛り、モブCで美咲を誘導か。シンプルだけど、効きそうな作戦だな)
俺は、参考書に顔を埋めながら動く。モブBのノートに、また付箋を貼る。「問題集、ページ間違えてるよ。50ページから」と、誰とも分からない字で。モブBが付箋に気づいて「え、なんだこれ?」と混乱。藤堂が「どうした?」と聞くと、モブBが「いや、なんでも」とごまかす。よし、モブBの注意、散らせた。
次、モブC。奴が美咲のテーブルに近づく瞬間、俺はさりげなく近くの棚に参考書を落とす。バサッと音がして、モブCが一瞬ビクッとする。「あ、ごめん」とモブっぽい声で呟いて、俺はすぐに席に戻る。モブC、タイミングを逃して美咲に話しかけられず、佐藤の方をチラ見。佐藤の笑顔、ちょっと硬いぞ。
(ふふ、モブの地味な反撃、効いてるぜ)
勉強会が終わり、藤堂が「美咲、ちょっと数学分かんねえとこ教えてよ」と美咲のテーブルに移動。原作通りの軽い絡み、復活!佐藤が「いいね、みんなで教え合おうぜ」とフォローするけど、目が笑ってない。俺の細工、また成功だ。
でも、図書室を出る時、佐藤が俺の方をチラッと見た。いや、気のせいだろ?存在感ゼロの俺を、奴が見つけるわけない。でも、ゾクッとする感覚が消えない。モブ連合の「緊急プラン」、まだ見えてこないけど、佐藤の警戒心が上がってるのは確かだ。
夜、部屋で原作を読み返す。二学期の日常パート、藤堂と美咲の小さな絡みが積み重なる時期。スタディグループみたいなイベントは原作にないけど、佐藤とモブ連合が日常の隙間を突いて物語をいじろうとしてる。モブBとCの動きを封じたけど、連合の規模が分からない。佐藤以外に、どれだけスパイがいるんだ?
(モブ連合、どんな組織だ?佐藤が動いてる以上、もっとデカい何かが裏で準備されてるはず)
美咲の「次は、もっと面白いことが起きるから」って言葉が、また頭をよぎる。あのニヤリとした笑顔、「背景くん」と呼んだ瞬間。彼女、ほんとにただのヒロインAか?もし、物語の裏側を知ってるなら、俺、彼女に接触すべきか?でも、モブがヒロインに絡むなんて、リスクがデカすぎる。物語のルールを壊すことになる。
(いや、ルールなんて、俺が転生した時点で壊れてる。佐藤もモブ連合も、ルールの外から動いてるんだ)
次の日、朝の教室。佐藤がモブBとCに「勉強会、もっと効率上げようぜ」と話しかけてる。モブBが「うん、でも昨日、なんか変だったよな」とボソッと言う。佐藤の目が一瞬鋭くなる。「変?」と聞き返すけど、モブBが「いや、なんでも」と誤魔化す。俺の付箋、モブBの頭に残ってるな。佐藤、焦ってるぞ。
昼休み、佐藤が一人で校舎裏に。俺は、存在感ゼロで尾行。奴がスマホで話してる。「スタディグループ、想定外の妨害。誰かがモブBとCを乱してる。モブ連合、緊急プランを急いで」妨害!?俺のことだ!でも、俺を特定できてない。存在感ゼロ、最高だぜ。
(でも、モブ連合の「緊急プラン」、そろそろヤバいのが来るな。俺、もっと大胆に動くべきか?)
夕陽が教室をオレンジに染める。俺は、深呼吸して考える。佐藤、モブBとC、モブ連合――物語の裏側の輪郭が、もっとハッキリしてきた。美咲の視線、彼女の謎、全部繋がってる気がする。俺は、存在感ゼロのまま、次の手を考える。次のイベント、どんな波乱が待ってるのか。モブの勘が、ビンビン反応してる。
(佐藤、モブ連合――お前らの正体、俺が全部暴いてやる)
俺は、静かに決意を固める。物語の次のページ、モブとしての賭けは、これからが本番だ。




