第20話「影の輪郭」
体育祭の熱気が冷めやらぬ月曜日。教室は、週末のリレーの話題でまだザワザワしてる。藤堂翔と高嶺美咲のバトンパスが見事に決まり、原作通りのラブコメ展開を死守した俺、存在感ゼロのモブは、窓際の特等席でほくそ笑む。佐藤健太――改変モブ2号の計画を、俺の地味な石の細工でまた潰した。でも、奴の「レーンに細工があった」とモブ連合に報告した言葉が、頭から離れない。モブ連合の「緊急プラン」が、すぐそこまで迫ってる気がする。
(佐藤、諦めてねえな。次のイベントはなんだ?原作の日常パートをどうやってかき乱す気だ?)
朝、佐藤が藤堂に絡んでる。「リレー、めっちゃ盛り上がったな!美咲ちゃんとのバトンパス、最高だったぜ」と、いつもの明るい笑顔。藤堂が「まぁ、俺と美咲のコンビは無敵だからな!」と返す。美咲は窓際で友達と話しながら、チラッと佐藤の方を見る。あの視線、体育祭の時より明らかに鋭い。ヒロインAが、佐藤の不自然さに気づいてる?いや、まさか。でも、彼女の「背景くん」発言が、ますます怪しく感じる。
(美咲、お前、ほんとにただのヒロインAか?何か知ってるなら、俺、どう動くべきだ?)
ホームルーム。担任が「体育祭、お疲れ!次は中間テストが近いから、勉強も気合い入れろよ」と言う。クラスが「えー!」とブーイングする中、俺は佐藤をガン見。奴、ノートに何か書き込んでるけど、今日は美咲をチラ見する頻度が少ない。代わりに、クラスの他の生徒――特に地味なモブキャラっぽいやつらに話しかけてる。なんだ?新たな作戦か?
(モブ連合の「緊急プラン」、他のモブを巻き込む気か?いや、でも、原作に中間テストの大きなイベントはねえぞ)
昼休み。佐藤がクラスの端っこで、地味な男子二人と話してる。「テスト勉強、みんなでやったら効率いいよな。スタディグループ作らない?」と提案。スタディグループ?原作にそんなイベント、なかった。佐藤がまた新たな舞台を仕掛けて、物語をいじろうとしてるのか?藤堂が「いいね、俺も混ぜてよ!」とノリノリで参加表明。美咲は友達と話しながら、遠くからその様子をチラ見してる。
(スタディグループで、藤堂と美咲の時間を減らす作戦か?それとも、別のモブを動かして何か仕掛ける?)
俺は、教室の隅でパンをかじりながら考える。親睦会や体育祭では、ペア操作やバトンパスで直接的な改変を狙ってきた佐藤。でも、今回はもっと間接的だ。モブ連合の指示で、他のモブキャラを操って、物語の流れを変えようとしてる可能性がある。問題は、どのモブが怪しいかだ。佐藤が話してた二人の男子――名前も覚えてないような、めっちゃ背景っぽい奴ら――が、なんか引っかかる。
(モブ連合って、モブキャラを裏で動かしてる組織だろ?なら、佐藤以外にも、このクラスに連合のスパイがいる可能性が……)
放課後、佐藤がスタディグループの打ち合わせを始める。藤堂と、地味なモブ男子二人、女子一人。美咲は「テスト勉強なら、図書室の方が集中できるかな」と、別グループで動くらしい。佐藤が「美咲ちゃんも一緒にやればいいのに」と言うけど、美咲が「私は自分のペースでやるよ」と軽く流す。彼女のその態度、なんか意味深だ。
俺は、存在感ゼロを活かして、佐藤の後をつける。奴が打ち合わせ後、校舎裏のベンチでスマホを取り出す。やっぱり、モブ連合に連絡だ。「スタディグループ、順調。モブBとC、動ける状態。美咲の行動、徐々に誘導する。次の指示を」と、囁くように話してる。モブBとC!?さっきの地味な男子二人か?
(くそ、佐藤、クラス内のモブをスパイとして使ってるのか。モブ連合、ガチでヤバいな)
心臓がバクバクする。俺は、校舎の影に隠れて考える。モブ連合が他のモブキャラを動かしてるなら、佐藤だけを警戒しててもダメだ。モブBとC――名前すら出てこないような背景キャラが、物語をいじる駒になってる。スタディグループで、藤堂と美咲の時間を減らしたり、変な誤解を仕込んだりする気か?
(よし、俺もモブとして動く。スタディグループに潜り込んで、モブBとCの動きを監視だ)
次の日、朝の教室。佐藤がスタディグループのメンバーに「今日、放課後に図書室で勉強会な!」と声かけてる。俺は、存在感ゼロをフル活用して、図書室の予約リストに自分の名前を忍び込ませる。モブの俺が参加しても、誰も気づかない。完璧だ。
放課後、図書室。藤堂、佐藤、モブBとC、女子一人がテーブルを囲んでる。俺は、隣のテーブルで参考書を開き、耳を澄ます。佐藤が「藤堂、数学得意だよな。モブBに教えてやってよ」と振ると、藤堂が「任せとけ!」とノリノリ。モブBが「マジ助かる!」と返すけど、なんかその声、わざとらしい。モブCも、妙に佐藤の目を見て頷いてる。
(こいつら、絶対モブ連合のスパイだ。藤堂を巻き込んで、何か仕掛ける気だな)
勉強会が進む中、モブBが「美咲ちゃん、頭いいから、こっちのグループにも来てよ」と、遠くで勉強してる美咲に声をかける。美咲が「んー、今回はパス」と笑顔で断るけど、モブCが「一緒にやると楽しいのに」と食い下がる。佐藤が「まぁ、マイペースな美咲ちゃんらしいね」と笑うけど、その目がギラッと光った。
(美咲をグループに引き込む気か?藤堂と絡ませて、変な空気を作る作戦?)
俺は、参考書に顔を埋めながら考える。直接干渉はリスク高すぎる。でも、モブBとCの動きを乱すなら、地味な細工でいける。俺は、モブBのノートに、さりげなく付箋を貼る。「問題集、間違えたページ開いてるよ」と、誰とも分からない字で書く。これで、モブBの注意を少しでも逸らせれば、佐藤のプランが狂うはず。
勉強会が終わり、モブBが付箋に気づいて「え、なんだこれ?」とつぶやく。佐藤が「どうした?」と聞くけど、モブBが「いや、なんでも」とごまかす。俺の細工、効いてる!藤堂は美咲と直接絡まず、原作通りの距離感をキープ。佐藤の笑顔、ちょっとだけ硬いぞ。
夜、部屋で原作を読み返す。二学期の日常パートは、藤堂と美咲がクラスで軽い絡みを重ねる時期。スタディグループみたいなイベントは原作にない。佐藤とモブ連合が、日常の隙間を突いて物語をいじろうとしてる。でも、俺の細工で、今日のところは防げた。
(でも、モブ連合の「緊急プラン」、まだ見えてこねえ。佐藤以外のモブBとC、もっと監視しないと)
美咲の「面白いことが起きる」って言葉が、また頭をよぎる。あの鋭い視線、彼女が佐藤やモブ連合に気づいてるなら、俺、彼女に近づくべきか?でも、ヒロインAに絡むなんて、モブのルール違反だ。いや、ルールなんて、俺が転生した時点で壊れてるのかもしれない。
(美咲、お前、ほんとに何を知ってるんだ?)
夕闇が窓の外に広がる。俺は、深呼吸して考える。佐藤、モブBとC、モブ連合――物語の裏側の輪郭が、だんだん見えてきた。俺は、存在感ゼロのまま、その影を追い続ける。次のイベント、どんな波乱が待ってるのか。モブの勘が、ビンビン反応してる。
(モブ連合、お前らの正体、俺が暴いてやる)
俺は、静かに決意を固める。物語の次のページ、裏側への戦いは、まだまだ続く。




