表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/46

第18話「裏側への一歩」

月曜日、親睦会の翌週。教室はいつも通りの騒がしさで、週末のBBQの話題で盛り上がってる。俺、存在感ゼロのモブは、窓際の特等席でパンをかじりながら、佐藤健太――改変モブ2号をガン見。親睦会での二人三脚、俺のくじ引き細工で藤堂翔と高嶺美咲がペアになって、原作通りのラブコメを死守した。あの瞬間、佐藤の笑顔が一瞬だけ歪んだのが、俺の小さな勝利だ。でも、奴のスマホでの「くじ引きに細工があったかも」って言葉が、頭から離れない。


(モブ連合の「次の指示」って何だ?佐藤、絶対諦めてねえぞ。次は体育祭か?それとも、もっと近い何か?)


朝のホームルーム前、佐藤が藤堂に絡んでる。「週末のBBQ、楽しかったな!美咲ちゃん、二人三脚めっちゃ息合ってたよな」と、ニコニコ話しかけてるけど、目が笑ってない。藤堂は「まぁ、俺と美咲のコンビは最強だからな!」とドヤ顔。美咲は窓際で友達と話しながら、チラッと佐藤の方を見る。なんか、彼女の視線がいつもより鋭い気がした。まさか、佐藤の不自然さに気づいてる?


(いや、ヒロインAがそんなこと気づくわけない……よね?でも、美咲のあの「背景くん」発言、ただの気まぐれじゃなかった気がする)


俺のモブの勘が、ビンビン反応してる。佐藤は親睦会で計画を潰されたけど、モブ連合と繋がってる以上、次の一手を準備してるはず。問題は、奴が俺の存在感ゼロにどこまで気づいてるかだ。親睦会のくじ引きで「細工」を疑ってたってことは、俺の動きを完全に読んでるわけじゃない。でも、油断したらヤバい。


ホームルームが始まり、担任が「体育祭の準備、そろそろ始めるぞ」と言う。クラスが「おー!」と盛り上がる中、俺は佐藤の反応をチェック。奴、ノートに何か書き込んでる。ペンが止まるたびに、美咲の方をチラ見。やっぱり、体育祭が次の舞台だな。原作じゃ、体育祭のリレーで藤堂と美咲が一緒に走って、関係がグッと縮まる大事なイベント。佐藤がそこを狙ってくるのは間違いない。


(体育祭か……。リレーのメンバー操作とか、応援席の配置とか、色々いじれそうなポイントあるな。俺、早めに動かないと)


昼休み。佐藤がクラスの体育委員と話してる。「リレーのチーム分け、どうする?ランダムもいいけど、バランス考えた方がいいよね」と、さりげなく提案。体育委員が「そうだな、速い奴と遅い奴で調整するか」と乗っかる。佐藤のあの笑顔、絶対裏がある。藤堂と美咲を別チームに分ける気か?それとも、もっと巧妙な何か?


俺は、教室の隅で観察しながら考える。親睦会で俺の細工がバレかけてる以上、佐藤は警戒してるはず。くじ引きみたいな直接的な干渉は、リスクが高すぎる。もっと地味に、でも効果的に動く方法は……。ふと、体育祭の準備リストが黒板に貼られてるのに気づく。リレーのチーム分けや役割分担が、明日から本格的に決まるらしい。


(よし、準備リストをいじるか。存在感ゼロの俺なら、誰も気づかずに細工できる)


放課後、佐藤が体育委員と打ち合わせしてる隙に、俺は職員室近くの掲示板に近づく。準備リストの紙が、ピンで留めてある。誰もいない廊下で、俺はリストにそっと手を加える。藤堂と美咲を同じリレーチームに、しかもアンカーとその前で走る配置に調整。佐藤がどんなペア操作を企んでも、これで原作の流れは守れるはず。


(ふふ、モブの地味な反撃、完璧だぜ)


でも、リストを元に戻した瞬間、背後に気配。振り返ると、誰もいない。いや、待てよ。遠くで佐藤が廊下の角を曲がるのが見えた気がした。まさか、俺の動き、見た?いや、存在感ゼロの俺に気づくわけない……。でも、心臓がバクバクする。


(落ち着け、俺。佐藤が気づいてても、証拠はねえ。モブ連合に報告したって、俺を特定できないはず)


その夜、部屋で原作を読み返す。体育祭のリレーシーン、藤堂が美咲にバトンを渡す瞬間、彼女の「ありがとう、翔!」って笑顔が、物語のターニングポイントだ。佐藤がこのシーンを壊そうとしてるなら、俺の細工がどこまで効くか……。モブ連合の「次の指示」が気になる。佐藤のノートにあった「美咲の行動を誘導」って、何を意味するんだ?


ふと、美咲の「次は、もっと面白いことが起きるから」って言葉が頭をよぎる。あの時、彼女は俺を「背景くん」と呼んで、ニヤリと笑った。ヒロインAが、物語の裏側をどこまで知ってるのか。もし、彼女が佐藤やモブ連合の動きに気づいてるなら、俺、彼女に接触すべきか?いや、モブがヒロインに絡むなんて、ルール違反すぎる。


(でも、ルールなんて、誰が決めたんだ?この物語に転生した時点で、俺、ルールの外にいるようなもんだろ)


次の日、朝の教室。佐藤が体育委員とリレーのチーム分けについて話してる。「アンカーは藤堂でいいよな。速いし」と、ニコニコ提案。美咲の名前は出さない。やっぱり、奴、チーム分けで二人を離そうとしてる。俺の細工がバレてないか、ドキドキしながら聞く。


昼休み、黒板の準備リストが更新されてる。俺の細工通り、藤堂と美咲が同じチームで、アンカーとその前。クラスメイトが「このチーム、強すぎじゃね?」と盛り上がる中、佐藤の表情が一瞬だけ曇った。やった!また俺の勝ちだ!


でも、佐藤が俺の方をチラッと見た気がした。いや、気のせいだろ?存在感ゼロの俺を、誰も見つけられない。なのに、なんでこんなゾクゾクするんだ?


放課後、体育祭の練習が始まる。藤堂と美咲がリレーのバトンパスを練習してる。美咲が「翔、タイミング遅いよ!」と笑いながら言うと、藤堂が「悪かった、ヒロイン様!」と返す。原作そのものの空気。俺の箱庭、守れてる。


でも、練習が終わった後、佐藤が一人で体育館の裏に移動。俺は、存在感ゼロを活かして尾行。奴がスマホを取り出して、また誰かと話してる。


「リレーのチーム、想定外だ。誰かがリストに細工した可能性。モブ連合、次のプランを急いで」


やっぱり!佐藤、俺の細工に気づいてる。でも、俺を特定できてないみたいだ。モブ連合の「次のプラン」が気になる。体育祭本番で、何かデカい動きがあるのか?


(佐藤、モブ連合――お前らの計画、俺が全部読んでやる)


夕陽が校庭をオレンジに染める。俺は、体育館の影で深呼吸。美咲の視線、佐藤の疑い、モブ連合の影――物語の裏側が、どんどん見えてくる。俺は、存在感ゼロのまま、その全てを暴く。次のページ、体育祭本番。どんな波乱が待ってるのか、俺のモブの勘がビンビン反応してる。


(美咲、お前、ほんとに何も知らないのか?それとも……)


俺は、静かに一歩踏み出した。物語の裏側への一歩。モブとして、俺の戦いはまだ続く。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ