契約結婚
「契約結婚になるけど」
「契約結婚?」
「要するに形だけの結婚って事」
「形だけって――でも、結婚するのなら一緒の家に住むのでしょう? 今、付き合っている彼女はどうするのですか?」
「彼女とも結婚する。法律上の結婚は君として、彼女とは屋敷の離れに一緒に住むよ」
「は?」
思わず本音が漏れてしまった。百歩譲って私とではなく、彼女と一緒に住むというのは分かる。私だって、こんな訳の分からない人と結婚なんてしたくない。でも、離れに一緒に住むというのは顔を合わせることがあるということだ――果たして、彼の彼女が呪われている家に一緒に住むことを、承知してくれるのだろうか。
「だめかな?」
「いえ、その――彼女さんは、結婚しなくても一緒に住むことを了承してくれるのでしょうか? 呪われている家ですよ?」
「そこは、なんとか説得しみるよ。彼女に断られても、君とは結婚生活を送るつもりはないから安心して」
彼はそう言うと、とびきりの笑顔で微笑んだ。彼は東郷家の三男だったが、跡取りを兄達から押しつけられていた。それもそのはず――八ツ柳家の本家の跡取りは私しかおらず、結婚相手である私は、ミスブサイクで一位を取ったことがあるほど、容姿に恵まれていなかった。
大学でミスブサイクが行われた訳ではない。秘密裏に男子学生間で投票が行われていたのだ。それを、友達のマリアが教えてくれたのだが──どうでもいいことだった。
東郷家の跡取り息子達から犬猿されてもしかたがないだろう。しかしながら、彼の彼女と一緒に住まなければならないということに対しては、漠然とした不安を抱えていた。
「それで、何とかなるのでしょうか」
「何とかしてみせるさ」
彼の言葉に一抹の不安を抱えながらも、私は彼の言葉に同意したのだった。