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精霊の歌姫  作者: ゆきあさ


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卒業

来ていただいてありがとうございます!


※少しだけラーシュ視点があります




「リファーナの制服姿も今日で見納めだね」

「卒業試験も受けてないのにいいんでしょうか……」


本来ならスモールウッド学園ではそろそろ春休みに入る時期なんだけど、大雪のために卒業式が延期されていたの。今日は私達三年生の最後の日。他の生徒達は自宅での卒業の為の課題や試験をこなして卒業資格を貰ったそうなんだけど、当然私は何もできてない。


「リファーナお嬢様は精霊達を連れ戻してくれた王国の恩人なのですから、そのくらいはよろしいのではないですか?」

サーラが制服のリボンを整えてから、私の後ろに回って最終確認をしてる。

「それに途中になってしまっている課題は卒業後に提出なさるおつもりなのでしょう?」

ヒースコートさんもエントランスまで見送りに出てきてくれた。

「はい。そのつもりです」

やりかけの卒業課題、私は精霊様についての研究をまとめた小論文を提出するつもりだった。本を読んで調べたことは大体まとめてあったけど、今回時の聖地へ行った時のレポートも組み込もうと思って欲張っちゃったのもあってまだ完成できてないの。


「先生方もリファーナのレポートを楽しみになさってるようだし、しっかりとした内容のものを提出すればきっと喜ばれるよ。僕も楽しみにしてる。だから今日は学生最後の日を大切に過ごしておいでよ」

「……はい!ラーシュ様。それじゃあ、行ってきます!」


私のスモールウッド学園最後の日は、雲一つない良く晴れた温かい春の日だった。


夕方近くまで友人達とお話したり、後輩達に囲まれたり、お世話になった先生達にご挨拶したり、校舎の中を歩いたりしてゆっくり過ごした。そして最後に訪れた場所は音楽室だった。最後の一年こそあまり来れなかったけど、ここはラーシュ様と過ごした時間の長い大切な場所。


「初等部も中等部も音楽室の雰囲気は大体同じだったわね」

私はクラヴィーアの蓋を開けて一音弾いてみた。

「懐かしい音……」

「ああ、やっぱりここだったんだね」

「ラーシュ様!」

音楽室の入り口にラーシュ様が立っていた。

「迎えに来てくださったんですか?」

「うん。……懐かしいね」

ラーシュ様はクラヴィーアに近づくと静かに奏で始めた。

「あ、この曲……」

水の精霊様を讃える歌……。一番練習した歌だわ。私はラーシュ様のクラヴィーアに合わせて歌った。


「うん。完璧。さすがだね。精霊達も喜んでる」

気が付くと音楽室の中は精霊様達がたくさん集まって来ていた。

「私もラーシュ様に褒めてもらえるようになれたんですね……」

感慨深いわ。ラーシュ様の練習の厳しさは今も変わらないけれど、その分褒めてもらえるととっても嬉しいの。


「僕は一番最初のリファーナのファンだからね」

「え?」

ラーシュ様の周りを精霊様達が飛び回って、髪や服を引っ張ったりしてる。まるで抗議してるみたい。

「駄目だよ。これは譲れない。僕がリファーナの歌を一番最初に好きになったんだよ」

ラーシュ様に群がる精霊様達が増えた。

「これは堪らないな……。さあ、リファーナそろそろ帰ろう。サーラが卒業祝いのご馳走をつくって待ってるから」

「わあっ!楽しみです!」


その夜は私が時の聖地から戻った夜よりも更にたくさんの料理やお菓子が私達を待っててくれた。サーラやヒースコートさん、アンさんやお屋敷で働いてくれている人達も一緒に楽しいお祝いの夕食の卓を囲んだの。








食事の後、私はラーシュ様と二人で居間に移り、お茶を淹れてもらったの。そしてずっと気になっていたことを思い切ってラーシュ様に尋ねてみた。


今日の卒業式にはロッティー様の姿が無かった。


「あの、ラーシュ様……、私、お聞きしたいことがあって……」

私は膝の上でスカートをぎゅっと握りしめた。ラーシュ様の温かい手が私の手に重なった。

「彼女達は城で投獄されている。これから裁判が始まるだろう」

「っ……」

「罪の減免は不可能だ。特にケント・メリッサの行いは婚約者の為だったとはいえ、この王国に対する反逆に等しい」


「ロ、ロッティー様は……」

「リファーナにかけられた呪いはケント・メリッサから贈られたあの呪具によって偶発的に発動したものだった」

「呪具……あの黒い宝石のことですか?」

「そう。あれを身につけていたことでリファーナへの逆恨みが呪いとして発動してしまったという見立てだ。今、調査が進められてる」

「じゃあ!ロッティー様の罪は」

そんなに重くはならない?

「しかしその後、精霊を操った呪法は彼女自身の意思で行われている。再び精霊王の怒りを買う原因となったリータ子爵令嬢にも厳しい処罰が下るだろう」

「…………」


言葉が出なかった。

「そんなに泣かないでリファーナ……」

ラーシュ様が私の肩を抱き寄せた。

何がいけなかったんだろう。

「リファーナは何も悪くない」

どうしたら良かった?

「誰にどうにもできなかったよ。あれ以上被害が広がらなくて良かった」

それでも今回は大雪の被害で犠牲になった人も出てしまったと聞いてる。


私、何もできなかった。役立たずだわ……。










「ラーシュ様、リファーナ様のご様子は……」

「泣きつかれて眠ってしまったよ」

たった今、部屋へ送り届けてサーラに託してきたところだった。アレンもリファーナを心配していたようだ。

「リータ子爵令嬢のことをお知りになったのですね」

「ずいぶん気に病んでた。リファーナは悪くないのにね……」

「嫉妬、妬み、羨望……といったところでしょうか……。リファーナ様はお辛いでしょうね」

アレンも沈痛そうな顔をしてる。


今回の件、リファーナは危うく殺されるところだった。精霊王のおかげで助かりはしたものの、こちらの世界へ二度と戻ってこられないところだった。かつての親友だとしても許せるものではない。

「リファーナは完全な被害者だ。でも最初の時はずっと仲が良かったから、この先彼らの事を見るのは苦しいだろう……」

「……そうですね。彼らへの処罰は大変厳しいものになるでしょうし」

「なるべくあの子爵令嬢には接触させたくない。なるべく話もリファーナの耳に入れたくないな……」


もう傷ついて欲しくない。リファーナには温かで楽しくて幸せな時間だけを過ごして欲しい。そう思っているのに……。



「ラーシュ様、私、ロッティー様とお話がしたいんです」


翌朝のリファーナの言葉に僕もアレンも酷く驚いたのだった。









ここまでお読みいただいてありがとうございます!

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