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夏の初めのダンスパーティー

来ていただいてありがとうございます!



「綺麗な花の色のドレス……」

寮の部屋に届いたドレスはピンクと白の綺麗なドレスだった。寮の友人達とメイクや着替えを手伝いあってなんとか支度を済ませて寮を出ると、ラーシュ様が待っていてくれた。正確に言うと結構な人数の男子生徒が正装で待っていて、女の子達を迎えに来ていたの。寮の門の前はとても華やかな雰囲気だった。


「ああ、ドレス似合ってる。リファーナはそういう淡い色が似合うね。制服の濃紺も肌の色が白いから似合ってるけど」

ラーシュ様は機嫌が良さそうだった。

「前に贈った髪飾りもつけてくれてるんだ。良かった。気に入ってもらえなかったのかと心配してたんだ」

「高価なものなので、普段使いにするのは怖くて。でも今日ならいいかなって思ったので」

小さな花がたくさんついた髪飾り、その花弁は宝石だと思う。たぶん物凄く高価な。

「そうか……、高価なものだけじゃなければいいのか……」

「ラーシュ様……?」

「いや、なんでもない。そうだ、これもつけてよ」

「綺麗な緑水石のイヤリング……」

イヤリングはちょっと苦手。だけど髪飾りにもついてる宝石で同じお花の形だった。お揃いみたいだったからつけさせてもらうことにしたの。

「うん、似合ってる。行こう」


ラーシュ様のエスコートで高等部の学生ホールへ向かった。嬉しい。憧れてたの。前の時は、一年生の時はラーシュ様は不参加で、二、三年生の時は新しい婚約者の公爵令息様は年上で学園にいなかったから。前の時に一度だけ参加した時と同じ会場なのに景色が全然違って見える。次は参加できるかわからない。もしかしたら今回で最後になるかもしれない。たくさん楽しんでおこう。


「ちょっと、いきなりどこへ行く気?」

真っ直ぐ壁際のテーブルにケーキを食べに行こうと思ったんだけど。ダメだった……。もう夕方に近い。朝早かったからお腹空いちゃったんだけどな。まあ、そのうちラーシュ様も他の人の所へ行くだろうし、その時まで我慢しよう。

「人が多いんだから、離れては駄目だよ」

ラーシュ様に叱られちゃった。なんだか親子とか兄妹みたい。



「まあ!リファーナ・スティーリア様ですわね?」

ラーシュ様と会場を歩いていたら、突然声を掛けられた。マーガレット・オルコット様だった。

「そして、ラーシュ=オーラ・グラソン様!演奏会見せていただきましたのよ!素晴らしかったですわ!」

純粋そうで人懐こそうな笑顔がとても可愛らしい方だわ。菫色の瞳が優しく細められてる。綺麗な銀色の子犬みたい。あ、ちょっと失礼だったかも。

「ごきげんよう、マーガレット・オルコット様。お褒めに預かり光栄です。ご挨拶が遅れ申し訳ありません。グラソン侯爵家のラーシュです。こちらは僕の婚約者のリファーナです」

「は、初めまして」


「まあ、ふふふ。可愛らしい方ですわね。ステージの時は堂々となさってて女神のようだと思っておりましたけど、今は妖精さんみたいですわ」

「え?」

マーガレット・オルコット様はそう言って私の頬に手を伸ばして触れた。

「オルコット様、それは……」

ラーシュ様は眉をひそめてる。

「まあ、ごめんなさいね。大切な婚約者の方に触ってしまって。だってあまりにも可愛らしいんですもの!」

可愛らしいのは貴女の方です……!同性の私でも好きになっちゃいそうな素敵な笑顔だった。心配になってラーシュ様を見上げると、ラーシュ様は珍しく顔を引きつらせてる。許可なく相手の顔や体に触れるのは同性でもマナー違反。相手は女性で、さらに隣国の高位貴族令嬢だから止めるに止められない。でも女の子同士だから私は気にならない。ちょっと驚いただけ。

「あのラーシュ様、私は大丈夫ですから」

こんな綺麗な方に触れられたら、なんだか幸運なことがありそう。

「…………」


「ふふふ、グラソン様はやきもちやき屋さんみたいですわね。スティーリア様、そのイヤリング、とても似合ってますわ!」

「ありがとうございます」

「そうそう!わたくしも今年の選抜チームに入れましたのよ。お二人もでしょう?そちらでもよろしくお願いしますわね」

「こちらこそ、よろしくお願いいたします」

「……」

ラーシュ様と私が一礼をすると、オルコット様はパートナーの男子生徒と去って行った。春のちょっと強めの風みたいな方だった。


「素敵な方でしたね」

「そう?」

「なんだか、同い年なのにお姉様みたいでした」

演奏会のこと褒めてもらえたし。嬉しかったわ。

「リファーナはああいう感じが好きなんだ」

「好きっていうか、憧れます。綺麗で優しくて社交的で……。私にはないものばかりで」

「綺麗で、優しくて努力家で、透明感があって、引っ込み思案なくらいがいいと思うよ」

「ラーシュ様はそういう方がお好きなんですね」

「…………」


あれ?アグネータお姉様は綺麗だけど、その他は少し違うような……?どちらかといえば天才肌で努力しなくても何でも出来るもの。あ、優しくないのは私に対してだけね。他の人にはきっと優しいんだろうな。好きになればその人が好みのタイプになるってサーラが言ってた気がする。そういう事なのかもしれないわ。


「音楽が始まった。踊ろう」

ラーシュ様と一緒にホールに出る。わあ、こんな感じなんだ。前は見られなかった景色。華やかな光の中の景色。あ、ロッティー様達もいる!みんな楽しそう。体を動かすのは結構好きな方だし、歌を歌うのも体力を使うから定期的に運動もしてるの。でもね、続けて四曲も踊るのはちょっと厳しかった。ラーシュ様と踊りたい女子生徒達がこちらを見てるけど、ラーシュ様は全く気にしてない。これって交流のためのダンスパーティーよね?交流しなくていいのですか?ってラーシュ様に聞いてみた。


「リファーナは他の男と踊りたいの?」

「いいえ、それは嫌です」

私と踊りたい人はいないと思うし。たとえ踊ったとしてもあまりに会話が続かなくてがっかりさせちゃうもの。ダンスの間、しらけた空気を味わうのは目に見えてるわ。それよりも早くケーキを食べに行きたい。

「即答なんだね」

ラーシュ様は何が面白いのかクスクスと笑ってる。

「そろそろ良い頃合いだし、ケーキを食べに行こうか」

「え?」

「リファーナの考えてることは分かりやすい。ほら、行くよ」

なんでわかっちゃったんだろう?そんなに物欲しそうにしてたかしら。恥ずかしい……。


「美味しい……。幸せ」

やっとお腹が満たされて私は幸せいっぱいだった。

「今度王都に新しくできた菓子屋に行こう。リファーナが好きそうなふんわり系のお菓子がたくさんあるって聞いてるから」

「え?本当ですか?」

私が好きなふんわり系とは色が綺麗で柔らかくて甘いお菓子のことなの。私が勝手にそう呼んでるのを聞かれてしまって以来、ラーシュ様も言うようになってしまった。嬉しい気持ちになったけど、すぐにその気持ちは沈んでく。

「……クラスメイトの方からの情報ですか?」

「いや?母だよ。母はよく王都や色々な街へ出かけるから詳しいんだよ」

そうなんだ……。グラソン侯爵夫人の……。なんだ、そっか。

「グラソン侯爵夫人は活動的な方なんですね」

「落ち着きが無いともいうけどね」

「王都のお菓子屋さん、行ってみたいです。いつか連れて行ってください」

「うん。じゃあ夏休みに行こう」

「はい……!」

わ、約束しちゃった。これってデートの約束?夏休み、楽しみだわ。





「なんだか楽しそうね?」

艶やかなワインレッドのドレスを身につけたアグネータお姉様が私達のいる壁際へやって来た。










ここまでお読みいただいてありがとうございます!

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