表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/78

前の終わり

来ていただいてありがとうございます!

新しい物語を始めました。

よろしくお願いします。



湖に張り出した桟橋の先に建てられた塔。その屋上。


湖には精霊がたくさん集まってる


粉雪が舞い散る中、私は歌った。精霊達を称える歌を。大好きな歌を。


でも心の中では精霊に愚痴ってた。



聞いてよ!

私、婚約者に心変わりされたの!私よりお姉様の方が相応しいんだって!


お姉様は最近になって婚約者の不義理で婚約を解消したから、ちょうど良かったってお父様とお母様も喜んでた。


いつもそう……。私よりお姉様の方が皆に優先されるの。


でも私もちょっとホッとしちゃってた。だって不愛想で何考えてるか分からない人だったから。そんな人と結婚なんて憂鬱だったんだ。私、怒られてばかりだったから。苦手だったんだよね。だから、まあいいかって思ったの。



そうしたらすぐに次の縁談が決まっちゃって、明日結婚式なの。どうなの?これ?私まだ十八歳なのよ?この国では貴族は学校を卒業して大体二十歳を超えてから結婚するのに。でも新しい婚約者は五つも年上だけど優しい人だからいいかなって思ってた。



でもね、今日言われちゃった。


「他に好きな人がいる。申し訳ないけど君を愛することはできない」


って。要するに私って隠れ蓑ってやつよね?ああ、私気付いちゃった。私、もう誰からも愛されないんだって。家族は……少しなら愛してくれてる、かな?でも明日結婚しちゃったらもう一生恋はできないんだわ。だって不倫なんて絶対に嫌だもの。



……でも仕方ない事だわ。私は何もしてこなかったんだもの。誰かに愛される努力も誰かを好きになることも親友のように夢を見ることも。だからこれからは結婚していても何かできることを探そうと思うの!

……本当は大好きな歌を歌っていたかったけど、仕事にはできなかった。歌は今みたいに一人でも歌えるから、いいや。


そうね、たとえば慈善活動をするとか、お店を経営するとか。今日はその決意表明よ!この先の人生は長いんだから、きっと何か見つけてみせる!



「え?」


突然、背中に衝撃、そして感じる浮遊感。私は塔の外側へ投げ出されていた。


落ちる落ちる落ちる………どうして?


私を突き落としたのは誰?誰かの顔が見えた気がする。でも分からない。





私は薄氷の張った冷たい湖に落ちてそのまま沈んでく。


真っ暗な水の中。冷たくて、体が痛くて、苦しくて。




沈んでいく私の手を温かい何かが掴んだ。


それから何かが全身を包んで温かくなる。とてもいい気持ち。


そして何も感じなくなった。







これが私の前の終わり。









ここまでお読みいただいてありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ