8
お読みいただきありがとうございます! ちょこっとだけシリアス要素あるかもしれないです。
積まれた山のてっぺんから十匹とって、近くに落ちていた長めの枝に刺し通していく。ちょっと可哀想だけど左右の目を貫通させる、所謂目刺しというやり方だ。
刺し終わったら、川から何個か大きめの石を取ってきて、円を作るように並べる。そして円の中を掘る黎月に掘ってもらう。
「五十センチぐらいの深さまで行ける? 」
「そのごじゅっせんちとは、どれくらいなのだ? 」
「えーとね、大体これぐらい? 」
「ふむ、ならば五ロージほどか」
世界が変わると単位も変わるのか。ふと、穴堀中に尻尾がパタパタしているのを見てしまった。
狼なのに・・・。
本人のツンデレ属性を刺激しないよう、黙っておいてあげることにした。
「できたぞ」
「じゃあ・・・」
次は穴の底に枯れ枝を入れて、目刺しにした魚を穴の上に掛ける。
「こんな感じか」
あとは火種だけど・・・。
「火ならあたしがつけるわよ? どこにつけるの? 」
紅羽が名乗り出てくれた。
「この枯れ枝に」
「この中の枯れ枝ね」
そう言って、紅羽が中を覗き込んだ瞬間、ボッと明るい炎が立った。
おお、さすが神獣。視線ひとつで・・・。
「これでいいかしら? 」
「うん、充分。ありがとう」
最後に、川の真ん中にある大きな岩を持ってきて、穴に被せる。
「運んでやろうか? 」
「ううん、全然大丈夫」
子供の体のはずなのに、全く重さを感じない。正確には、重さは感じるけど、全く力をいれなくても持ち上げられるのだ。たぶん、ティリアネが言っていた身体能力の限界値化の影響だと思うけど。
怪力幼女、ここに爆誕。・・・うん、全然面白くないな。
蓋をした隙間からもくもくと煙が上がっているのを確認したら、後は待つだけ。
その間に少し状況整理といこう。
思い思いにくつろいでいるところ悪いけど、一度みんなにも集まってもらう。
「何個か聞きたいことがあるんだけどさ」
「なんだ? 愛し子よ」
「みんながさっきから呼んでいる、その『愛し子』っていうのはなに? 」
答えてくれたのは白氷だ。
「そなたはティリアネ様が祝福し、我らが世界へ来させた。謂わばこの世界から祝福されている存在である。故に、『ティリアネ様の愛し子』であると同時に、『世界の愛し子』でもあるのだ」
すごい大層な肩書きだな・・・。
「じゃあこれからはシエルって呼んでくれない? 」
「ほう、なぜじゃ? 」
「せっかくティリアネが付けてくれた名前だから。それに、いつまでも愛し子愛し子呼ばれるのは、あんまり好きじゃないんだよね」
「ふむ。ではこれからはシエルと呼ばせてもらおう」
「シエルね? いい名前ね! 」
「じゃあシエル。他になにか聞きたいことはあるか? 」
「えーと、みんなはどこまで私を助けてくれるの? 」
「どこまで、とは? 」
「たとえ私が世界を滅ぼそうとしても、着いてきてくれるの? 」
「ああ。ティリアネ様から御命をもらったその時から、我らはそなたのためだけにある存在となった。そなたが何をしようとも、それを支えるのが我らの使命なのだ」
「・・・そっか。ありがとう」
本来なら自由気ままに生きる彼らが、私のためにいきる存在になってくれたというのだ。そんな彼らに報いる方法が、今はまだわからない。
よっぽど複雑な表情をしていたのか、常夜が語りかけてきた。
「のう、シエルよ」
「なに? 」
「そなたが国を滅ぼすというのなら、我らはいかなる町をも廃墟にして見せよう」
常夜の一言に絶句した私を置いて、黎月、紅羽、白氷がその後を紡いだ。
「国を興すというのなら、我らがその土台となる」
「この星を滅ぼすというのなら、いかなる国々も焼き尽くすわ」
「この世界を滅ぼすというのなら、どんな星でも壊し尽くしてやろう」
ッ、・・・。
川の流れだけが静かに響く空間で、なにを言えばいいかわからず、俯いてしまう。
「・・・ありがとう」
彼らは私のために全てを捨てるというのだ。一のために百をも千をも捨てるその決意の重さを、私は知っている。
こんな私に対して、彼らはどこまでも、慈しみと忠誠を抱いてくれている。ならば私もこの命を賭けよう。
これからなにがあっても、彼らを守るためなら、私はどれだけの殺戮も構わないだろう。どれだけの犠牲でも払おう。
この手がいくら血塗られようとも、この命を賭して彼らを守り通そう。