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お読みいただきありがとうございます! ちょっとシュールかもしれないので、苦手な方は飛ばしてください。
その時、とある木々に囲まれたところに、謎の水球が現れた。
その水の中に含まれた金色の粒子が、だんだんと集まって人の形を形成していく。
やがて光の粒子はなくなり、代わりに美しい少女が現れた。
雪のように白い肌に、ほっそりとした手足。長く伸びた透き通るような白銀色の髪は、水の中で自在に漂っている。右側に一房だけ混じった漆黒は、白と銀で統一された色彩の中では、異質な存在だ。
器用に巻き付けられた一枚の布が、右肩の出るワンピースになっていて、腰周りを余った部分で締めてある。
ふよふよと水中で漂う少女の口から、ゴボッと息が漏れた瞬間、パンッと音を立てて、水球が弾けた。不思議なことに、水滴は地面に触れることなく蒸発していく。
ゆっくりと地面に下ろされた少女は、眠ったまま、自然と木の幹にもたれるような形で座り込んだ。銀糸のような髪が無造作に肩から流れ落ちる。
それからどれくらい経っただろうか。
一匹の狼が、草木を掻き分けて少女の隣までやって来た。人間の身長を優に越えた巨大な白い狼だ。青の混じった銀色の毛並みと、金色の鋭い目をもっている。
狼は少女が寝ているのを見ると、尻尾で器用に少女の背中を支えて、自身の体を少女と木の間に割り込ませる。少女を自身の腹にもたれさせた狼はくわっとあくびをすると、自身も丸まって眠りについた。
それから時を置かずして、今度は一匹の白馬が空から降り立った。金のたてがみと尻尾を持ち、背中と額には、氷のように透き通った羽と角が生えている。
狼と少女を見た馬は、何度か尻尾を揺らすと、羽を畳んで少女の側まで行き、体を横たえた。そのまま少女の肩に頭を預けると、馬もまた静かに目を閉じた。
いつの間にか日は傾き、差し込んでくる光は鋭い西日へと変わっていく。
真っ赤に染まった空を背景に、バサバサと翼をはためかせながら、鷲と同じくらいの大きさをした、一匹の鳥がやって来た。燃えるような深紅を全身にまとい、金色に輝く長い尾を靡かせながら、その鳥は着地する。目の前の一人と二匹はまだ眠ったままだ。
しばらく周りをうろうろしていた鳥だったが、とうとうつまらなくなったのか、少女の膝の上に乗って、眠り始めた。
やがて最後の一筋の光もなくなり、夜空では星々が輝き出している。
そんな静かな空間を、ふと大きな影が横切った。影の正体は巨大な龍だ。真っ黒の鱗に覆われ、見る限り五メートルは越えている。
少女を見つけた龍は、迷うことなく地面に向かって降下し、側の木ごと三匹と一人を囲うようにしてとぐろを巻く。そして他と同じように目を閉じた。
そのまま夜が明け、森が朝の喧騒に包まれる中、その少女の周りだけは、美しく神秘的で、ただただ静謐な癒しの空間が広がっていた。