表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/34

お読みいただきありがとうございます!

 暖かい・・・。


 ぬくぬくとした、心地よい温度だ。いつまでもくるまっていたい。


 でももう起きなきゃ。


 眠気を引きずりながらゆっくりと目を開いた私は、知らないところにいた。


 一面に真っ白な靄に包まれていて、天井も床も壁もない。


「なにここ・・・」


『起きたか? 』


 ふいに聞こえてきた声に周りを見渡すものの、それらしき人影はない。


「・・・起きたけど? 」

『・・・なんでそんなに警戒するんだ? 』

「今の状況じゃ誘拐されたに等しいんだから、当たり前でしょ」

『誘拐・・・』


 姿が見えなくとも、落ち込んだのが伝わってきた。


『なあヘルメス、俺は誘拐犯なのか? 』

『クロノス。悪いけど、客観的に見たらそうだよ・・・』

『一応助けた側なのだが? 』


 こそこそしてるのも全部聞こえてるんだけど。


『俺の名前はクロノス。時空管理神だ』

「あ、やっぱり神様だったんだ。で、何で私はこんなとこにいるの? 」


 衝撃的ではあったけど、なぜか、自分でも驚くほどの冷静さを保てている。


『そなたは時空の帯の裂け目から落ちてしまったのだ』


「時空の帯? 」

『ああ。魂というものは普通、時空の帯に乗って冥界へ送られ、そこで記憶を消される。それからまた時空の帯へ戻されて輪廻を繰り返すのだが・・・』

「私はそこから落ちてしまったと」

『そういうことだ。本当に申し訳なかった』

「申し訳なかったって言われてもね~。今ここにいるってことは、もうその時空の帯とやらには戻れないんでしょ? 」


『一度離れたものをもう一度無理矢理ねじ込もうとすれば、綻びができてしまう。その綻びはだんだんと因果律をねじ曲げ、やがて狂わせる。昔それである世界が滅んだのだ。それ以来、時空の帯への手出しは厳しく規定されるようになったため、時空の帯に戻すのは不可能に近いだろう』


 戻れるか戻れないか聞いただけなのに、思った以上に長々と説明してくれた。でもこれってつまり・・・。


「つまり私は、完全にそっちのミスで転生できなくなったと」


『ウッ、すまない・・・』


 元気出せよと、誰かが慰めている声が聞こえてくる。たぶんその人も神様なんだろう。


「じゃあ私はこれからどうしろと? 」


『時空の帯に戻せなくとも、今の状態でそのまま転生させることはできる』


「地球に? 」

『いや、違う世界だ』

「異世界ってこと? 」

『まあそんなとこだ。そなたにはエーレスという世界に転生してもらう』


 はあ・・・。小説の定番ではあるけど、まさか現実にもあったとは。


『初めまして~! 私がエーレスの管理神、ティリアネよ! 』


 突然、クロノス様とは逆タイプの、ハイテンションな声が割り込んできた。


『あとは任せたぞ? 』

『ええ! 』


 担当交代かな。


『さて、ちょっとそっちに行くわよ! 』

「そっちに行く? 」


 意味がわからないまま首をかしげていると、突然目の前に光が現れ、人の形を成した。光が収まると、そこには輝くばかりの黄金色の髪と目を持った美女が佇んでいた。ギリシャ神話にいる女神と似た感じの、布を巻き付けたようなワンピースを着ている。


「改めて初めましてね! 」

「あ、ティリアネ、様? 」

「様なんて要らないわよ! ティリアネでいいわよ、ティ リ ア ネ ! あと敬語も禁止ね! 」

「じゃあ、ティリアネで」


 なんか・・・すごく明るい神様だな。


「ねえ、私たち友達にならない? 」

「別にいいけど・・・、逆にいいの? ティリアネは神様でしょ? 」


「そんなの関係ないわ! ありがとう! 私、人間の友達は初めてなのよ! 」


 私の手を握ってそう言うティリアネは、本当に嬉しそうにしていた。










評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ