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王国巡り

 俺が目を覚ました日から、7日が経過した

 その間特に進展はなかった

 とりあえず記憶を取り戻す手段として、本の知識から何か得られるものがないかと画策してみたが、何も思い出す気配はない

 というか知らない知識しかない

 読んだ本がこの国、ロンディール王国の基本的な文化や法律の書かれたもので、王国民ならだれでも知っている内容だとノエルが言っていた。……もしかしたら俺はこの国と関係ないところから来たのかもしれない

 まぁ、空から落ちてきたらしいし、住民でない可能性が高いよな

 

 ……と、この話は置いておくとして

 

 今日は街に出て、何か思い出せないか探そうと思っている

 出身国が違ってたとしても……きっと何か手掛かりがあると信じて


「トキー!仕度できたー?」


 ノエルに呼ばれた

 仕度は既に終わっていたが、部屋から出ていなかったからな


「ああ。待たせて済まない」


 階段を下りて、ノエルの待つ玄関の方へと向かう


「遅い。先に出ていくところだったよ」


「悪かったって……」


「謝られちゃうと……。うぅ……

 えっと、行こう。トキ」


 ノエルに手を引かれ外に出る

 はじめの目的地は西の教会

 家からそれほど離れておらず、俺が信仰?というのはよくわからないが神を信頼していたと言ったら決まった場所だ


 少し歩いて、時刻通りに来ないバスに乗ること1時間

 俺たちは目的地の教会にたどり着いた

 

「ここが教会。王国内で一番大きい教会で、王様とかが眠っている場所だよ。私も時々祈りに来るの」


 そこは、神が存在するわけでもないのにどことなく神聖さが感じられる場所だった

 呆気にとられていると、ノエルから声がかけられる


「こういう場所は、初めて…なのかな?」


 教会という言葉を俺は知らなかった。だが、この神聖な感じは見覚えがある


「ここより神聖な場所に居た……気がする。もっと加護が強力な……」


「加護?トキ、霊感でもあるの?」


「レイカン?

 ノエルは感じないのか?聖属性の結界が」


「感じないよ。トキ、どこから来たの……」


 自分が何者なのか、教会に来てから余計に分からなくなってきた


 そんな疑問を抱いたところで時計の針が頂点に近くなっていたから、俺たちは近くの店で昼食をとることにした


*****


「ここ、おすすめなんだ。シェパードパイが一番おいしいお店」


「甘いのか?」


「ミートパイ。甘くないよ」


「よかった」


 甘いのは苦手だ。目覚めて3日目に食べた”マカロン”とか言う甘味を食べて苦手と知った

 というかここの食べ物はどれも見たことない食べ物ばかりだ


 提供されたシェパードパイはとてもおいしかった

 じゃがいもと肉のバランスがちょうどいい

 ノエルが絶賛していた理由がわかる


「気に入ってるって顔

 おすすめしてみたものの、自信…なかったんだよね」


「記憶がなくてもわかる。こんなにおいしいもの食べたことなかったって」


「食に乏しい場所で、神聖な場所……。思い当たらないなぁ」


 食事が終わった俺たちは、次の目的地を考える


「神聖そうな場所なら教会以外にお城とか。……どう、かな?

 あまり遠くない距離に観光地になってる場所があったはず」


 次の目的地の決まりだ


 *****

 

 教会は割と街中にあったが、城は街から外れたところにあった。自然に囲まれているような場所だ


「お城。大きいでしょ。昔の貴族様が住んでいた場所だって。さっき調べた」


「ああ。よくこんな巨大な建造物が作れるな。昔の人、すごいと思う」


 素直な感想だ。どのくらい昔なのか知らないけど

 そういえば、現代だとテレビとか、スマホとか、初めて見たとき驚いたなぁ

 

「中、見に行こう」


 城の中は思ったより華美ではなかった

 窓が大きくとられていて、光がよく入るデザインでライトをつけなくても明るい

 家具は、アンティーク調と言うのだったかな。木造の家具で、よく見ると花の意匠が施されている

 本で読んだから知っている。チューダー様式とか言う建築様式だ

 

 ただ、ノエルには申し訳ないのだが――


「神聖さとは程遠い場所だし、観光に来たって感じだな。見るのは楽しい」


「そっかぁ。力になれなくてごめんね。無駄な労力だったよね」


 落ち込ませてしまった。俺的には、別に無駄だと思ってないんだけど


「ここまで来たら楽しんでみないか?城を見に行くなんて滅多にないだろう」


 ノエルの垂れ下がっていた頭が上がり、俺と視線が合う

 罪悪感半分、安心感半分といった感じだ


「本当に……そう思ってる?」


「嘘を吐く意味あるか?」


「……ありがと、トキ

 そうだね。見れるところ全部見に行こうか」


 エントランスから、リビングに書斎、和室?とか言う東洋風の部屋もあった。それにキッチンなどの使用人が使う部屋に寝室も見に行った

 

 帰路に着いたのは、日が落ちてからだった

 一日外に出て楽しかったと思う

 

 こういう楽しい毎日を過ごしたいと思う一方で、俺は、早く記憶が戻れと焦っていた

 

 *****

 

 西の教会に向かってから3ヶ月

 俺たちはいろいろなところに向かった

 ノエルが通っていた学校、博物館、図書館、思いつく観光地や生活していていきそうな場所には行ったし、ただ街中を散策したりもした。もちろん貧民街とかも

 けど、欠片も記憶を思い出さない

 教会に行ったときだけだった。僅かでも記憶を思い出したのは


 そして俺たちは、首都へ向かうことにした

 ここまで何も思い出せず気落ちしていたから、たまにはただの観光に行こうという試みだ

 

 首都には電車で向かう。しばらく揺られながらノエルと他愛のない会話をして、気づいたら到着していた


「人が多い」


「首都だから仕方ないよ」


「こんなに人が多い場所には来たことないと思う」


「新しい発見だね」


 人だらけのあたりを見回しながら歩く

 首都でいちばんの観光地らしい、時計台前までたどり着いた


 そこに、変わった女性がいた

 周りには多かったはずの人が、その女性以外誰もいなくなっていた

 美しいスタイルで、輝くような黄金の髪で……

 鎌を持ってノエルに切りかかってきた

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