「魔力をください!」
いつも通り2ヶ月ぶりに目が覚めてきた。
いつも通り私の体は2ヶ月前と同じ台座に載せられている。
ここはとある建物の地下。
太陽の光は見えなくて、もちろん外の事は全く分からない。
「もう何千年もこのままなんだけど、早く誰か拾ってくれないかなぁ」
私は体をピクリとも動かさないままそうつぶやいた。
私は剣。
自分で言うのもちょっと恥ずかしいんだけど、はるか昔に作られた凄い魔剣。
最高の鍛冶屋たちと最高の魔術師たちが集まって、最高の材料と最高の道具を使って、その上で何年もの時間をかけて作られた最高の剣。
そんな私が何千年も放置されているのには理由があって。
あれは私がまだ新品でピカピカの剣だった頃の話。
剣の大学を卒業したばかりだった私はここで私の持ち主が決まるのを待っていたの。
初めは同級生たちも一緒にここで待っていたんだけど、1本ずつ持ち主が決まっていってみんなここから出ていっちゃった。
私はなぜか売れ残ったけど、あんまり悲しくなかったかな。
私は最高の剣だからいつかは持ち主が決まると思っていたし。
剣のお世話係の人たちがみんな私1人のために働いてくれて、お姫様みたいな気分になれたから。
でもある日、ドラゴンとの戦争が始まって全てが変わっちゃった。
突然大移動を始めたドラゴンの群れがいろんな街を襲い始めたの。
剣のお世話係の人たちは凄い魔術師だったからみんなドラゴンと戦いに行って。
その間にこの建物のある街が別のドラゴンに襲われて廃墟になって。
で、1本の売れ残った剣しかないこの場所は忘れられてしまったというわけ。
そういえばお世話係のみんなは無事にドラゴンを倒せたかなぁ。
はわわぁ。
昔の事を思い出していたらもう眠たくなってきちゃった。
私は魔剣だから魔力がないと起きていられない。
んだけど、私は剣だから自分で魔力を作る事ができなくて。
だから魔力を誰かにもらうか、空気中に少しだけ浮いている魔力を集めたりしないといけないの。
もちろんこんな場所に人間は来ないから。
私は空気中の魔力を集めるしかなくて。
でも空気中の魔力は本当に少なくて、眠っている間、2ヶ月間もかけて集めた魔力でも起きていられるのはほんのちょっとだけ。
今日みたいに昔の事を思い出したり。
この前みたいに誰かが私をここから出してくれた後の旅を想像したり。
それだけですぐに眠らないといけなくなってしまう。
私専用の鞘があればもっと効率よく魔力を集められるんだけど。
私は鞘をまだ作ってもらってない。
私たちみたいな知的な剣は持ち主が決まってから鞘を作ってもらうから。
剣の持ち主が「よろしく」の気持ちを込めて、これから一緒に旅をする剣に鞘をプレゼントするの。
ここが私の作られた『大工房』なら作りかけの鞘が残っていたかもしれないのになぁ。
まあ、ここが大工房なら魔力生成装置とか剣用の魔力電池とかがいっぱいあるはずだからそもそも魔力が足りなくなったりしないと思うけど。
はぁあ、自分で大工房まで歩いて行けたらいいのに。
「本当に誰か私の事を拾ってくれないかなぁ」
私はさっきと同じ事をつぶやいて、すぐに後悔した。
声を出した瞬間、眠気が一気に強まったから。
私は魔剣だから声を出すのにも魔力がいる。
誰にも届かない声を出すために魔力を使わなかったらもうちょっとだけ長く起きていられたのに。
今度からは独り言で声を出さないようにしよう。
そう反省している間にも眠気がさらに強まって。
視界がどんどん暗くなっていく。暗く、暗く。
また2ヶ月も眠っちゃう。
(次に起きたら誰かに拾われてこの建物の外に出ていると良いな)
今度はちゃんと心の中でつぶやく事ができた。
けど、眠るまでの時間はほとんど変わらなさそう。
何も考えれなくなってきて、視界はもっと暗くなる。
暗く、明るく、暗く。
今、明るくなった!?
私は魔剣だから周りを見るのにも魔力がいる。
魔力がほとんどなくなって、完全に何も見えなくなるほんの少し前に。
真っ暗だったこの部屋が明るくなったのが見えた。
もう周りは見えない。
けど、私は魔剣だから一瞬でも見たものは覚えちゃう。
部屋を明るくしたのは魔力で光る魔術ランタンで。
それを持っていたのは16歳ぐらいの人間。
そう、人間!しかも魔力を使える!
私をこんな場所から出してくれる人。私に魔力をくれる人。
考えるための魔力はなかったけど。考える必要もなかった。
私の中に残った最後の魔力で声を出す。
「魔力をください!」
魔力切れで気絶した数分後に。
私は体中に魔力が満たされる気持ち良さで目を覚ました。
初投稿、私の好きな言葉です。
11日に投稿するつもりだったけど、もう12日の2時。泣きそう(৹˃̵﹏˂̵৹)
毎日投稿できるように頑張るけど、できなかったらごめんね。
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