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68.膝枕

 ジュルアとの話は、相変わらず惚気ばかりだった。

 お互いに幸せのお裾分けをしていると、ジュルアの口から膝枕という言葉が溢れる。


「すごく良いのよ!」

「そうなの!?」


 ジュルアが言うにはとても安心出来るらしい。

 体を前に乗り出して絶賛するジュルアを見て、膝枕をやってみたいと思う。

 だけど、ベン様はあまりそういう事に興味はなさそうだった。


「ベンさん最近忙しそうよね……」

「はい……公爵としての仕事が多くて、毎日コーヒーばっかり飲んでます」

「なら、休む時間を作るって意味でも提案してみたら?」


 ジュルアは自信ありげな表情を浮かべる。

 単純にやってみたい気持ちもあるけど、ベン様がかなり根を詰めて仕事をしている様子はかなり心配に思っていた。


「うん! やってみる!」

「えぇ。ベン様も安心して眠れると思うわ」


 ジュルアは親指を立てると、私も同じように親指を立てる。

 楽しみが待っていると思うと、やる気が満ち溢れてきた。

 元気の良くて晴れやかな音色のピアノが響く。


「よしっ! 終わり!」


 一通り練習を終えて、大きく腕を伸ばす。

 溜まっていた疲れが一気にほぐれていく感覚が気持ちいい。

 

「早く帰らなきゃ」


 急いで帰りの支度を済ませると、素早い動きで馬車に乗り込む。

 帰り道の道中ではずっとベン様に膝枕をすることだけを考えていた。


「よしっ」


 執務室を除くと、今日もベン様は仕事を頑張っている。

 険しい表情を浮かべて書類と向き合っているベン様はとても凛々しい。

 だけど隠し通そうとしても、疲れが見えてしまう。


「失礼します」

「アイラか」


 手の動きを見てキリの良いタイミングを見極めて、声をかける。

 コーヒーカップに口を頻繁につける様子から、かなり根を詰めてやっていると分かった。


「最近すごく頑張っていますね」

「あぁ。沢山仕事があるからな」

「疲れていませんか?」

「アイラと居ると、とても活力が湧くんだよ」


 そう言ってベン様はまたコーヒーを一口飲む。


「膝枕というものを知っていますか?」

「知らないな……」

「とても疲れに効くってジュルアが言っていました」


 私は執務室にあるソファに腰をかけた。


「来てください」


 ソファに手を置いて、隣に座ってほしいとジェスチャーで伝える。

 ベン様が隣に座ると、一気に緊張感が増す。

 心臓がうるさい程に激しく鼓動をしている。

 ゆっくりと息を吐いて気持ちを落ち着けると、そのままベン様の頭を膝に置く。


「っ!?」

「いつもベン様は仕事を頑張っています」


 驚いた表情を浮かべるベン様の頭を優しく撫でる。

 丁寧にゆっくりと金色のサラサラとした髪を指先で軽く触れた。

 顔から火が出そうな位に頬は熱を帯びている。


「いきなりどうした?」

「今は何も考えずに、落ち着いた時間を過ごしてください……」


 しばらくの間続けていると、段々とベン様の表情が緩む。

 緊張は解けて、とても安心したように笑っていた。


「もう大丈夫さ」


 ベン様は起き上がると、そのまま私を強く抱きしめる。


「かなり元気が出たよ」

「良かったです……」

「ありがとう」


 おでこに暖かくて柔らかい感触が伝わってきた。


「仕事に戻るとするよ」


 ベン様は再度椅子に座って仕事を再開する。

 動揺で無理をしないで欲しいと伝えられないまま、ベン様は書類に意識を集中してしまう。

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