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60.王都の外れ

「うーむ」


 珍しくベン様が浮かない表情を浮かべている。


「どうかなさいました?」

「そろそろ指揮棒の替え時だが、どれにしようか迷って……」


 そう言ってベン様は私にチラシを見せた。

 チラシには新しい素材でのオーダーメイド始めましたと書いてある。


「ずっと同じ注文をしていたが、これを機に別のものにしようか迷っている」


 ベン様は顎に手を当てて、神妙な顔で悩む。


「それなら折角ですし、お店に買いに行きませんか?」

「考えていても仕方ないか」


 ベン様の言葉に私は笑顔を浮かべて喜ぶ。


「こういう物は後回しにするとやらなくなる」


 そう言って立ち上がるベン様を見て、私は心を踊らせて出かける用意をする。

 外行きのドレスに着替えると、ナターシャさんに髪を結ってもらう。


「アイラは行きたい場所はあるか?」

「今日はベン様のお買い物が優先です」

「そうか。行き先はアイラにとっても面白いものだと思う」


 ベン様と一緒に馬車に乗り込む。

 そのまま一時間程揺られると、王都の外れに到着した。


「ちょっと暗い雰囲気ですね」


 辺りにはゴミが落ちていて、空気も重苦しい。


「ねぇ。お姉さん俺達と一緒に来ないかい?」


 慣れない雰囲気に緊張していると、肩にポンと手を置かれる。


「去れ」


 いきなり何かと思って戸惑ってしまうと、ベン様が今まで聞いた事のないような低い威圧感のある声を響かせた。


「すみませんでした!」


 鋭い目付きで声をかけて来た人を睨みつける。

 慌てて逃げていく様子を見て、ベン様は優しい笑顔を浮かべた。


「アイラを傷つけようとする輩は俺が許さない」


 頼もしいセリフを言うベン様はいつにも増してかっこよく見える。


「だが、あまり治安は良くないから気をつけてくれ」


 そう言われると、少し不安になってしまう。


「ただ、行く店は信頼できる場所だ」

「そうなんですね」


 そんな事を話していると、子猫が道を横切る。


「あっ! 可愛い」


 私に指を刺されて驚いてしまったようで、子猫は逃げてしまう。

 

「あぁ……」

「残念だな」

「はい……」


 気分は落ち込んだ気分のまま、ベン様に手を引かれながら歩く。

 そんな中で可愛らしい音符が特徴的な看板を目にする。


「ここですか?」

「あぁ。少し埃っぽいから注意すると良い」

「はい……」


 そう言ってベン様は重い扉を開く。


「ベンか」

「指揮棒の買い替えをしにきた」

「いらっしゃい」


 ベン様は暖簾をかき分けて中へ入る。

 

「お邪魔します……」

 

 私は緊張したまま暖簾を押すと、髭の生やした店の人が驚いた表情を浮かべた。


「ベン、お前結婚したのか!?」


 あり得ないと呟いて、絶望感を漂わせている。


「ここの店主のバードンだ」

「気安く名前を呼ぶんじゃねえ! 裏切り者!」


 そう言ってベン様に罵声を浴びせる様子を見て、不安になってしまう。

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