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57.何かが足りない

「うーん……」

 

 音楽団の練習場へ向かう馬車の中で私は悩んでいる。


「何かが足りない……」


 今はとても幸せだと思う。

 毎日美味しいご飯と綺麗な服はある。

 優しいベン様や周りの人たちと一緒に過ごすことはとても充実だろう。


「それでも、何かが足りない……」


 何か欲しいものがあって、それが何か分からない。

 モヤモヤとした気分のまま練習の時間を迎えてしまう。


「今日もよろしくね」


 大好きなピアノを前にすると、そんな悩みはどうでも良くなっていた。

 集中をして練習をしていたら、いつの間にか昼休憩の時間を迎えている。


「どうなんだろう?」


 一度集中が切れてピアノから離れると、再度悩んでいたことが蒸し返す。

 お昼を食べている最中もモヤモヤとした気分が気になって仕方ない。


「どうしたのかしら? ずっと浮かない顔をしているわ」

「あっ……ジュルア」


 そんなことをしていると、ジュルアが私に気をかけて声をかけてくれる。


「一人で悩んでも仕方ないわ。私に話してみたら?」

「うん……そうする」


 私は今の心の内を話すと、ジュルアは頷きながら耳を傾けた。

 

「アイラの気持ちはアイラにしか分からないから、なんとも言えないわ」

「そっか……」

「ごめんなさい。力になれなくて」

「ううん、大丈夫。ありがとね」


 話をしていると、いつの間にか昼休憩の時間は終わる。

 もう一度ピアノに向き合えば、気にならなくなると思った。


「全然モヤモヤしたままだ……」


 王都の空は夕焼けに染まる。

 結局練習が終わった瞬間に悩みは再度頭の中に広がった。

 全然解決しないと、自然と気分は曇ってしまう。


「お悩みごとですか?」


 公爵邸に戻っても気分は晴れない。

 ナターシャさんに言われて、明らかに浮かない顔をしていると自覚する。

 慌てて笑顔を浮かべると、ナターシャさんは怪訝な表情を浮かべた。


「あまり悩み事を溜めても体に毒ですよ」

「ごめんなさい……」

「もし私で宜しければ、お話を伺いますよ」

「ありがとうございます」


 私は幸せなはずなのに、何かが足りないと話す。


「欲張りですかね?」

「いいえ。そんなことはないですよ」


 ナターシャさんの温厚な雰囲気が真剣になる。


「なんとなく分かった気がします」

「そうですか?」


 私はワクワクとした気持ちでナターシャさんの目を見つめた。


「お互いに愛情表現をされないことでモヤモヤされてるのでは?」

「そう……ですね」


 思い返せば、ベン様はあまり好きとは言ってくれない。

 そして、私も恥ずかしがってあまり好きだと伝える機会が無かった。


「アイラ様から愛情表現をしてみては?」


 そんな言葉に私はベン様に好きと言う様子を想像する。

 きっと不安や照れで上手く言えないだろう。


「大丈夫です。ベン様はアイラ様と一緒で幸せだと言っています」

「うん。頑張ってみる」

「私にできることがあれば、お手伝いいたします」


 ナターシャさんはぎゅっと私の手を握る。

 とても心強い味方がいることに安心感を覚えた。

 こうして、ベン様に愛情表現をしよう計画が始まる。

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