表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

26/83

25.卒業試験に向けて

「アイラが元気になって良かったよ」

「心配かけてごめんなさい……」

「過ぎたことを気にしても仕方ないさ」


 セリナ先生はいつも通りの飄々とした様子でピアノの椅子に座る。


「もうすぐ卒業試験だね」

「はい! ベン様から褒めてもらえるように頑張ります!」


 私がそうやって意気込むと、セリナ先生はふふっと笑い声をこぼす。


「アイラはベンが大好きなんだな」

「あぅ……」

「ベンは良い子をお嫁にしたもんだね」


 赤面して手で顔を覆い隠していると、セリナ先生はニヤニヤとした笑みを浮かべていた。


「まあ、教え子を可愛いがるのはこれまでにしよう」

 

 その一言で一気にセリナ先生は真剣な顔つきに変わる。

 明るい雰囲気だったホールの空気が研ぎ澄まされていく。


「じゃあ、やろうか」

  

 綺麗に整えられてかつ情緒に溢れる音楽がホールに響く。


「良い感じだよ」

 

 私の演奏にセリナ先生は満足そうな表情で笑う。

 どんどん上達していく感覚が楽しくて、時間を忘れてピアノを弾いていた。


「今日はそろそろ終わりにしようか」

「もうこんな時間ですか?」

「そのようだね」


 夢中になっていると、いつの間にか空はオレンジ色に染まっている。

 セリナ先生と卒業試験の日付について相談すると、そのまま解散の流れになった。


「今日もありがとうございました」

「こちらこそありがとう。良い時間を過ごせたよ」


 私は手を振ってセリナ先生の乗っている馬車を見送る。

 セリナ先生は公爵邸と同じで王都に住んでいるらしい。

 また遊びにおいでと言われているから、いつかは行ってみたいと思う。


「おかえりなさいませ。今日はどうでしたか?」

「すごく楽しかったです!」

「それは良かったですね」


 そんなことを考えながら歩いていると、公爵邸に到着する。

 穏やかな笑顔で迎えるナターシャさんに挨拶をして、自室へ向かう。

 少しだけ休憩をすると、お腹がちょうど良い具合に空いていた。


「お待たせしました」

「俺もちょうど今きたところだ」


 ベン様はそう言って笑顔を見せる。

 二人で夕食を食べることは、何回やっても幸せに感じた。

 色褪せることのない幸福感に浸りながら、美味しい料理を口に運ぶ。


「セリナから聞いたが、卒業試験の日を楽しみにしている」

「頑張ります!」

「一緒に演奏できたら良いな」


 音楽団で演奏する様子を想像すると、頬が緩んでしまう。

 お互いに音楽が好きだから、食事中はずっと音楽の話をしていた。


 そんな日々を過ごしていると、あっという間に卒業試験の日を迎える。

 今日は目が冴えていて、朝日が心地よく体を起こす。

 緊張をしているが、指はいつも以上に感覚が鋭くなっていた。


「頑張るぞ」


 私は小さく呟いて、身支度を始める。

 自然とテキパキと行動ができて、良い状態で演奏が出来そうだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ