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23.一人じゃない

「うぅ……」


 暗闇の中にいると、実家の地下室で泣いていた頃を思い出す。

 毎日サートン家の人たちから酷い扱いを受けていた。

 そして夜、光のない地下室で泣き喚く。


 そんな過去に戻ったような不安感が私を襲う。

 公爵家に来てからはずっと幸せな想いをしていた。

 だけど、私には不相応な待遇だと神様が言っている気がして仕方ない。


「幸せになったらダメなのかな?」


 どんどん気分は落ちていき、否定的な言葉ばかりが頭の中に浮かぶ。


「アイラ!」


 ふと、優しい声が不安に包まれている私の心の奥まで届く。

 目が覚めると辺りは暗闇に包まれていた。

 それでも、声の方向には一筋の光がしっかりと見えている。


「すごい冷や汗だ」


 ベン様はそう言ってコートを私に羽織らせた。


「大丈夫だ。俺が助けに来た」

「ありがとう……ございます」


 ベン様に優しさを向けられると、私の心の中はポカポカと温かいものに包まれる。

 

「今まで辛い思いをしてきたんだな」


 ベン様はふと、そんなことを口に出した。


「君の実家について調べさせてもらった」

「えっ……」


 混乱で頭の中が真っ白に染まる。

 辛い記憶がいくつも浮かび上がって、体の震えが止まらない。

 

「最悪の環境で生きてきたんだな」


 奥歯がカチカチと恐怖している音を鳴らす。


「大丈夫だ」


 そう言ってベン様は私の手をギュッと握った。


「今はもう怖がる必要はない」


 気付いたら私は嗚咽を漏らしていた。

 私が弱音を吐く度にベン様は優しく背中を撫でる。


「アイラは今まで本当に頑張ったよ」


 そう言ってベン様は私の手を握る力を強めた。

 

「今まで沢山辛いことを経験してきた」


 ベン様がいると分かっていても、嗚咽は止まらない。

 

「ずっと一人だけ幸せになったらダメだと言われ続けてきた」


 私の目尻に涙が浮かぶ。


「だけど、報われて良いんだ」


 その言葉と同時に涙が溢れて頬を伝う。


「君は幸せになっていい」


 頬を伝った涙は床に落ちる。


「また不安になったら俺に話してくれ。笑顔になるまで側にいるから」


 ベン様に抱き寄せられると、強くて優しい力が伝わってきた。 


「気が済むまで泣けばいい」


 松明に照らされるベン様の瞳から強い意志が見える。


「その後は思う存分笑顔を見せてくれ」


 ベン様の吐息が部屋に響く。


「もう君は一人じゃない」


 たった一言で今までの辛い人生が報われた。

 ずっと私の心の中にかかっていたモヤは晴れて、肺が軽くなる。

 今まで感じていた息苦しさが解消されて、幸せが体中を駆け巡った。


「また明日以降も一緒だ。だから、安心して休んでいい」


 そんなセリフを言われると、今まで張っていた気が緩んでしまう。

 明日も幸せでいられる。

 そう思うと、私は安心感に包まれながら意識を手放す。

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