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20.頭を撫でて

 ピアノの練習を終えて、疲れ切った指に息を吹きかける。

 手の先が温まる感覚がとても気持ちいい。


「ピアノの調子はどうだ?」

「セリナ先生に知らない技をいっぱい教えて頂いて、とても楽しいです!」

「そうか」


 今日は時間の都合も合って、ベン様が食堂に座っていた。

 2人で話しながら過ごす夕食の時間はとても幸せに感じる。


「また、アイラの演奏を聞かせてほしい」

「それは緊張します……」

「普段通りに弾けば良いさ」

 

 私は褒められる様子を想像して頬を緩ませてしまう。


「体調は大丈夫か?」

「い、いえ! なんでもないですよ?」

「顔が赤いが……」

 

 ベン様に指摘をされると、慌てて誤魔化す。

 だけど、額に手を当てられると、恥ずかしさで余計に顔が熱くなる。


「熱っぽいぞ」

「全然平気です」

「そうは見えないが……体は大事にしてくれ」


 私は空気の抜けた風船のように気の抜けた声で返事をしてしまう。

 変なところを見られたせいで恥ずかしくて仕方がない。


「今日はゆっくり休め」

「はい……」


 もっとベン様と話をしていたいと思ったが、これ以上心配をかけてはダメだと自分に言い聞かせる。


「ふわぁ」

「ほら。体に疲れが出ているぞ」


 そうやって私のことを気遣うベン様はとても優しい表情をしていた。

 

「ちゃんと休みます」

「ああ。それが良い」


 そう言って食堂を出ると、寝る準備を済ませる。

 ベッドに入ろうとすると、部屋がノックされた。


「入っていいか?」


 珍しくベン様が私の部屋に訪れることに驚きを抱く。


「どうかなさいました?」

「ああ。貰い物のアロマがあったことを思い出して持ってきた」

「アロマですか?」


 ベン様は疲れに効くらしいと付け加えると、不思議な香りが部屋に充満する。


「あっ、すごい落ち着きます」

「それは良かった」


 暗くて表情はよく見えないが、ベン様の穏やかな声が優しく耳を撫でた。


「あっ……」

「こうすると女性は安心すると言っていたが……」


 ベン様の大きい手がゆっくり私の頭を撫でている。

 手の暖かさを肌で感じることができて、とても心地良い。


「暖かくて気持ちがいいです」


 私はベン様の手を握ると、少しゴツゴツとした感触だった。


「こんなに優しくされたのは初めてで、とても幸せです」

「そうか……」

「だから、ずっとこの時間が続いてほしいです」


 ベン様はそうだなと相槌を打つ。


「もう少しこのままで居たいです」

「ああ。遠慮する必要はない」


 私は両手でベン様の手を握ってると、心の中がぽかぽかと温かくなる。


「アイラの手からピアノを頑張っていると伝わってくるよ」

「嬉しいです」

「いつも真剣に練習しているんだな」


 ベン様に褒められると、嬉しくてぎゅっと握る力が強まった。

 

「アイラの演奏を聞ける日を楽しみにしている」

「はい」


 ベン様と過ごす幸せを噛み締めていると、安心で眠くなってしまう。


「おやすみなさい」


 そう言われると眠気に歯止めが効かなくて、意識は闇の中へ沈んでいく。

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