14.自覚
眠気を誘う温もりに包まれて、もう一度瞼を閉じようとする。
「おはようございます」
「もうそろそろ着くぞ」
「ふぇ!? べ、べ、べ、ベン様!?」
馬車で寝ていたことに気付くと、驚きで変な声が出てしまう。
「よく寝れたようだな」
「はい……」
恥ずかしくて、ベン様と目を合わせられない。
「俺たちは夫婦だから恥ずかしがる必要はないぞ」
そう言われても、照れるものは照れてしまう。
公爵邸に着いても、心臓の鼓動は乱れている。
「俺は少し仕事をしてから夕食へ向かう」
ふと、ベン様の顔を見ると平然としていた。
そんな様子を見ると、さらに心臓がバクバクと音を鳴らして変になってしまう。
「かなり疲れているだろう。ゆっくりと休め」
私はナターシャさんに案内されて自室に向かって歩く。
頭の中はずっとベン様のことばかりが浮かんでいる。
公爵家に来た日ティーカップを落とした時に優しく大丈夫だと入ってくれた。
何をしても謝ってばかりの息苦しさから解放してくれた。
そして、髪を手入れしてドレスを着たら綺麗だと入ってくれた。
ベン様と結婚して公爵家にいる毎日はとても幸せだと思う。
今まで出来なかったことが実現されて、夢のような時間を過ごせている。
「それでは、ゆっくりとお休みください」
「はい」
ナターシャさんがゆっくりと扉を閉めると、ベッドに思い切り体重を預けた。
ふかふかのベッドに吸い込まれていく感覚がとても気持ちいい。
「これもベン様のお陰だなぁ」
そんなことを口にすると、途端に顔が熱くなる。
すごく心地いい気分だけど、どうしてもドキドキしてしまう。
「あっ……」
そんな気持ちに戸惑いを覚えていると、一つの言葉が頭に思い浮かぶ。
「私、ベン様に恋してるんだ……」
一度口にしてしまうと、恋心が全身を一気に駆け巡る。
もう誤魔化すことはできない。
私はベン様に恋をしているとハッキリとわかる。
「好きだなぁ」
一度自覚すると体はさらに熱くなって、恋心は燃え上がった。
優しく手を握られたことを思い出して、足をドタバタさせる。
「アイラ様。夕食の時間ですが、お召し上がりになさいますか?」
「はい! 今行きます!」
これ以上ベン様のことを考えていたら、顔から火が出てしまう気がした。
何度も深呼吸をしても落ち着かないまま、ナターシャさんの方へ向かう。
「お、おまたせしました!」
「いえいえ、全然待っていませんよ」
ナターシャさんは何かを感じ取ったように微笑む。
食堂に向かうと、ベン様が座っていた。
「しっかりと休めたか?」
「はい!」
私の体調を気遣ってくれるベン様はやっぱり優しく見える。
そんなベン様と結婚できてよかったと心の底から思う。
「ありがとうございます」
「楽しめたのなら良かったよ」
「はい!」




