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派遣聖女4〜シングルウエディングプランナー〜

作者: 神楽

今日も今日とてボルテノバ大陸では華やかな社交から賑やかな井戸端会議まで各地で広げられている。

昔に比べたら聖女様のお陰でいくらか地位も上がっているが、やはり男性に管理されがちなのが今の女性達だ。


だが、降臨された聖女様方の様子が本になり(ママのは脚色されている)、それを読んだ淑女から母ちゃんまで、少なからず影響を受け、今の待遇に不満が燻り始めた。


特に、前回の聖女様は、女性でありながらも宰相様より完璧に王の必要とされるものを提出し、女官長の様にテキパキとした働きを見せ、その上、想い人を長い間支え、女性としての幸せまで手に入れた方だ。



働く出来る女性。

やだ憧れちゃう。



召喚された聖女様方、揃いも揃って責任をもって働いているのだ。

なら、自分達も働いて自由に出来るお金が欲しい。

誇りを持って、何かやってみたい。

そんな思いが湧き上がるが、いざとなると何をやっていいかわからない。ある程度採算がとれる案を出さないと男性陣に話を持っていけない。

そこで白羽の矢が立ったのが貴族と庶民の橋渡し。結婚相談所の令嬢達だ。

因みに、前回の結婚詐欺事件。やはり調べてみると数件、もっか努力中で、融資目的としての縁組を考えた者達がいた。中には頭沸いてる?と思うお花畑案件もあったが、殆どが見込み有りと判断され、紹介された先の融資を受け、利益を生む商品が次々と開発された。


余談までに、一見結婚詐欺にも見えたので、相談所に話をした時点で婚約話は流れている。

だが、よくよく聞いたら凄い儲けがでそうだと、対応にあたったある子息が、妹を婚約者にする代わりに融資を申し出た。

結果、ガッツリ儲けを得る事が出来た。

下位貴族のしかも三女で、嫁ぎ先に期待が出来なかったが、今回の件で、裕福になった将来有望な青年に嫁がせてやる事が出来た。

それを皮切りに、相談所で働く子息令嬢達が金の卵を産みそうな、まだ芽の出ていない商会や、開発者達を獲得する場にもなり、噂を聞いてやって来た開発者達の融資先を紹介してくれる場にもなり、どんどん規模が大きくなっていたのだ。


詐欺事件の調査に当たってくれた者達は、得た利益でそのまま雇用され、合わせて、融資目的で来る者達の調査も担当させる事になった。




下位貴族の令嬢では、と言うか、母でさえ招かれた事がないであろう王妃様を筆頭とした高位の女性陣から秘密のお茶会に招かれた。

始めは緊張していたが、今ではとてもやりがいのある仕事に誇りを持ち、ただの令嬢時代とは考えが変わってきた事もあり、王妃様方ともいつしか楽しく話が出来ていた。


だが、いざ相談された内容は、力及ばずだった。


そこで一人の令嬢が、

〝私達も聖女様にご相談出来ればいいのに。〟

と呟いた事により、一斉に、


「それですわ!」


と、なった。それから終了の時間まで、どうやって男性陣に内密にして賢者の一族に話を持っていけるかを話し合ったのだ。



そして、王妃様が陛下に郷の女性をお茶会に招きたいとおねだりし、面白がった郷の女性陣を巻き込み、女性だけで第4回、聖女召喚の儀が行われた。


魔力量の問題点は、賛同する高位貴族の令嬢達にも協力してもらった為、予想していたより多くの人数が集まっていた。


皆が固唾をのんで見守る中、光と共に現れたのは、前回の聖女様にどこか面影が似ている女性だった。

やはり少し未熟だったからか、光る大きな鏡がのった

作業机も共に召喚されていた。




「あら、やだ、これもしかして妹が言っていた異世界召喚かしら?

まあまあ、きれいなご婦人方、ご令嬢方。

お初にお目にかかります。

私、詐欺の件でこちらに喚ばれた者の姉にあたりますこういう者ですわ。」




よろしくお願いしますね。と言いながらまた小さな紙を頂いた。

これはどうやら自己紹介用の紙みたいだ。

前回の聖女様から渡された紙は、召喚の褒美に賢者の一族の手に渡っている。

宝物庫にと思っていたが、頂いた冊子があるのに狡いと、それはそれはいい年超えた親父どもが鼻水流しながら駄々をこねた結果、勝ち取ったのだ。


似ていると思ったら詐欺事件で降臨された聖女様のお姉様だった。

これぞ仕事が出来る女性!というオーラが輝かしい。(ただの女優ミラー効果だが)


今回の召喚におけるあらましを王妃様から聞かされた聖女様は、




「まあ、とてもいい流れがすでに出来ているではありませんか。

その紹介所を基盤に、今度は人材派遣を兼ねた職業紹介事業を始められては?

せっかくいい場所があるのですから、そこで女性にでも職につける様な教育を施し、必要としているところに派遣するのです。

一通りのマナーを身につければ、夜会に、パーティーに、接客に、貸し出すのです。

勿論、身元保証人がしっかりとついた方限定にしなければなりません。信用が一番です。


お針子さんなども、急な依頼や期限切迫の時にも需要がありそうですね。

女性だけで定期的に集まって、自分達が欲しいと思うようなアイデアを出し合うと、その場で新商品などが生まれる事もありますよ。


でも、そういった事を始める為にも、まずは元手が必要ですね。


私は結婚式に携わる仕事をしております。

そこでは貸衣装もしているんですよ?

皆様、もう元手があるではありませんか。

お手持ちのもう使用しないお衣装をリメイクして貸し出し用にするのです。

結婚紹介所でまずは利用してもらい、お針子見習いに余った布で小物を作り、それも貸し出すか販売する。

新商品を紹介するパーティーなども開き、マナーを身に付けた者達に対応させ、お針子達が生み出した物もその場で売り込めます。

お立場上、表立っては出来ないでしょうが、偶にお茶会に招待して進歩状況を聞いたりは出来ますよ。」



家業がある人には内職という手もありますよ。

などと、次から次へと出される案はどれもとても現実的で、目からポロポロ鱗が落ちる思いだった。

それに、光る鏡が付いた作業机には多種多様なヘアケア用品があり、大まかに効果を説明された。

これは何が何でも開発してもらいたい!


キラキラと美しい髪飾りなどもあり、宝石のような輝きを持つのに宝石ではないと聞いてとても驚いた。 これはガラスで応用できるわ!


それに聖女様は指先まで美しかった。

爪に上品な色が塗ってあり、こちらにも輝く飾りが付いていた。

髪を熱で巻いたり、真っ直ぐにする魔道具もあった。

何て事なの!

憧れているサラサラヘアになれるなんて!


加えて、レースがハンカチの縁にも及んでいるのを見て驚いていると、こんなのにも、これにもと応用先を紹介してくれたが、その中でも、付け襟や付け袖が一つあるだけでとても印象が変わるし、庶民にも手が出し易い値段で出せば、絶対売れると勧められた。

貴族の女性もだけど、やはり同じ女性。

お洒落はしたいでしょう。それに平民もお洒落する余裕があると国力をアピールする事も出来る。


レース作りなら貴族の女性でも、家にいながら堂々と出来る!

カチューシャというのも見せてくれ、レースを付けるだけで凄く華やかになった。

白が当たり前だったが、色付きも素敵!


レースヤバい。

あなた凄い出来る子だったのね。



「いかがでした?何かヒントはありましたでしょうか?

私も実は皆様と同じく、結婚後は家に入り、仕事はしておりませんでした。

凄くヤキモチやきの旦那様で、私には家にいて欲しかったみたいです。

ですが、夫を亡くし、子供を一人で育てる為に手に職をつけ、今の仕事に就いております。

子育てをしながらだったので、小さな子達を預かってくれる保育所はとても助かりました。

これから皆様が始められる事業、できたら立場の弱い女性から先に雇って頂きたいです。


私も始めた頃は辛い事も、悔しかった事も沢山ありました。でも、お客様の笑顔で向けられる〝ありがとう〟の一言は、頑張って良かった。次も頑張ろうと思えるのです。


今では誇りを持ち、責任を持って仕事をしています。

子供達には父親の背中を見せる事が出来ないので、私の背中を見せる様にしているんです。

子供達に恥じないよう、これからも頑張ってまいります。

そして、天国に行ったら、とっとと私を置いて逝って、一番輝いてる時の私を見れなくてざまあって言ってやるんです。

旦那様、私の事大好き過ぎですからね。


それでは、そろそろお開きのお時間です。此方の全ての女性の幸福を心より願っております。

皆様も、頑張って下さい!」



報酬の宝石を渡し、サインをしたらとても素敵な笑顔で元の世界へと戻っていった。


すぐに実行出来そうなアイデアをたくさん貰ったが、最後のお子様や亡き旦那様への想いを聞き、それでも魅せたあの笑顔。

切なさが溢れた。

母娘で参加していた者達は自然と近づき、今、この場に生きて、ちゃんと居ることの有難さを噛み締めた。

そして、邸に戻ったら旦那様に感謝を述べ、甘えよう。




様々な思いを抱えて戻ると、案の定、召喚の儀を行った事がすっかりバレていた。

追求されたが、何故か女性達の目からは愛情が溢れており、取り敢えず其々が揃って邸に戻っていった。


この件以降、夫婦仲、婚約者同士が仲を深め、事業の事も相談し易くなり、男性の協力を得た事によりとんとん拍子に事が進んだ。


そして、女性が社会に堂々と出れる時代がやってきた。


不当な扱いを受けていたり、騎士や冒険者のご主人が亡くなり、生活が困窮している女性から雇用し始めた。



従業員宿舎と合わせて、女性と子供達だけの宿舎を建て、そこには保育所も勿論あり、生きるのが精一杯だった者達の笑顔と笑い声が今日も溢れている。












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