ステータス
まさか考えた途端にこんな変化が現れるとは。
この玉が内側から小さい光が漏れたかと思うと何処からともなく目の前に薄く文字が現れた。
名前:アーシム
驚くことに空間に文字が描かれ私の名を綴った。
触れようと試みたが、それは叶わず指が通り抜けてしまった。
それから次々と文字や数字が綴られていく。
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名前:アーシム Lv.1 種族:ー
HP:181/181
MP:3/36
SP:0P
DP:0P
力:59
防御:63
俊敏:32
魔力:24
魔防:41
スキル
剣術 Lv.7
固有スキル
『眷属化』 『ダンジョン創造』 『界転』
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これには驚きが収まらない、いや、驚きの連続ではあるが何が起こっている。
今の自分の事が知りたいと考えたからか?
私の名前が描かれたかと思えば、私の能力らしき数値が現れた。
この値がどれほどの物なのかは分からないが、今まで発揮した力を考えると弱いということはないだろう。
しかし、何故私の姓が表示されていないのだろうか。
特段思う所もない、寂しさを感じない訳でもないが。
これは、感情が希薄になった影響だろうか。
ただいまいち感情が希薄というのも確信が持てない。
強く感じる感情もあるのだ。
それに種族とあるが人間ではないのか?
そこには何も書かれていない。
この私のステータスの様な物には見慣れない言葉もある。
魔力や魔防と言ったものだ。
占い師が使っていたかもしれないが、あの様なオカルトな言葉がまさか現れるとは。
そもそもこんなステータスや数値に何の意味があるのか。
スキルというのも気になる。
剣術とは剣の扱いの上手さを表しているのか?
自画自賛する訳ではないが、人間だった時の腕を考えると悪くない数値なのだろう。
固有スキルというのもある。
眷属化か、サイードが眷属となった今だから分かるが恐らくこの能力によるものだ。
占い師が呪術には魔力を使うと言っていたか。
それとこれが同じならこれらを使うのに魔力を使うのだろうか。
不思議な知識も得られるものとそうでない物があるという事だろう、魔力やステータスといった物についての知識が流れて来る事はなかった。
SP、DPの事を考え、口に出してみるが不思議な知識が流れてくることはない。
ダンジョン創造というのも気になる。
口に出しても、何も起こらなかったがこれはどういった能力なのか。
眷属化と同じ枠に入れられていることを考えれば、こちらも人知を超えた呪術なのだろうか。
界転というのもあるが、聞いたことのない言葉だな。
初めて見る言葉でどんな事が起こるのか全くわからないな。
「界…転」
言葉に出した瞬間、洞穴に風が吹き荒れる。
すぐに風は収まったが、変化はそれだけではなかった。
洞穴の最奥に黒く渦巻くものがそこにはあった。
恐らくは界転と口に出した事による影響だろうが、また何かしてしまったようだ。
「王、無事ですか!」
そう言いながらサイードが駆けて来た。
心配を掛けてしまったか。
だが偶然にだが術を放ってから何となくどういった物かは知識として流れてきた。
「心配するな、害はない。」
いや、害がないかは実際の所はまだ分からない。
この先のことは分からないのだから。
だが、この渦が私達に無害だという事は分かる。
そして、私達の未来を切り開く鍵だという事も。
「案ずるな、いくぞ。付いて来い。」
歩を踏み出し、その渦へ真っ直ぐ向かった。
渦の中へ足を踏み入れ、通り抜け真っ暗な空間へ出たかと思うと、ぐるりと世界が回るような感覚が襲い元の洞窟の風景へと戻った。
時を置かずサイードが渦から出てきた。
「これは一体……」
「私達を知る為の世界だ。」
「それは……、いえ、私の使命は命ある限り王に付き従い、仕える事です。王が炎の中に飛び込めば私も後を追うまでです。」
「それは頼もしいな。」
この世界への扉を開いた時に流れ込んできた知識はこうだ。
『もう一つの世界。光があれば影がある様に水面にも表裏がある。道に迷う者が訪れ、存在を誇示し、高める為の場所。』
恐らくはこの身体に起こった変化のヒントがあるはず。
人ならざる姿でこの先どうするか決め倦ねていた時に、この世界に訪れられた事は幸いだ。
だが、この世界の事が全て分かった訳ではない。
所詮分かった事はこの世界の概要だ。
存在を誇示し、高めるための場所、というのもどういう意味なのか分からない。
そこを踏まえて行動をしなければいけない。
そして、ここまでの出来事が私に都合が良すぎるとも感じる。
窮地に陥った時にあの不思議な玉が転がっていて、死にかけていた時に不思議な力で人外の力を得て九死に一生を得た。
そして不思議な文字が現れ、その中の言葉を溢すと別の世界の扉が開いた。
あまりにも都合が良い、人智を超えた何かに誘導されているとさえ感じてしまう。
だが、今の所死に瀕するどころか、それを脱している事を考えると早急に原因を突き止めるべき事では無いだろう。
今はこの世界が何なのか、私に何が起こったのかを突き止める事が先だ。
たとえ突き止めた先に、この変化に理由がなくとも、この裏に誰も居なくとも進むしかない。
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