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逆に爆発する機械って何……?

「たっだいまー。ありゃ、お客さん?」


兄貴が帰ってきた。


折角なので簡単に兄貴の説明をすると、強い、大食い、バカ、そして重度のブラコンシスコン(妹に限る)である。


要するに俺と幸を愛してやまない脳筋の男である。


当然好意を持たれて嬉しくないわけではないが、度が過ぎる上常に直感で生きているのでぶっちゃけ迷惑なタイミングもあり……まあ悪意を持たれるよりよっぽどマシではあるのだけど。


ともかく身体能力と戦闘技術はスーパーマン、頭は小学生並みという男なのだ。


「うわ、沢山いる! えーっと? ひいふうみいよ……4人もお客さんが! 誰の客だか知らないけどいらっしゃい! ……ところで母ちゃん、俺の分のメシはあるよな?」


「安心して、たっぷりあるわよ。」


「おお、なら安心! 楓は2階?」


「ああ、それなんだけど……」


母さんが言葉に詰まると、


「ああいえ、ここは俺が。」


直矢が遮る。


「そうだな、簡潔に言うと……お前が客だと思っているこいつが、楓だ。」


「はぁ!? マジで言ってんのかよ!? 見るからに女だし髪も銀髪だしどう考えても違うだろ! そりゃ何となく雰囲気は似てるけどそんな嘘じゃ騙されやすい俺でも騙されないぞ!」


「いや、それが本当なのよ勇牙(ゆうが)。この人はカミサマで、運悪くルーレットに当たった楓が女にされたの。」


と姉貴が言うと。


「なるほどなー。まあ元が楓ならこんだけ美人なのも納得だな!」


信じてしまった。


「え、信じるの!? もっとこう、俺と兄貴しか知らない情報の確認とかしたりしないの!?」


昔の秘密基地の場所とかさ! いや、外野がこんだけいる状況で聞かれても恥ずかしいけど!


「姉ちゃんが言うならそうなんだろ。」


それはそうとしか言えない答えが返ってきたなぁ……確かに姉貴が騙される相手なら兄貴が騙されないわけないしつまり本当にしろ嘘にしろ兄貴に判別の方法はないんだよな。まあ、兄貴がそこまで考えてるとは思えないけど。


「……ところで」


直矢が言う。そのまま


「お前、相当なやり手だな?」


と兄貴へ言う。


「やっぱり分かるのか、流石神様だなぁ。俺もアンタの強さをビシビシ感じてるぜ。女でこんなにやれそうなのはアンタが初めてだよ。」


何を感じ取ったのかお互いバチバチと音がなりそうな様子でにらみ合う。


「一つ手合わせ、頼めるか?」


と直矢。


「やりたいのは山々だけど、女子供に手をあげたら破門、って師匠に言われてっからなあ……」


「安心しろ、今の姿は一時的なもので俺は本来男だ。問題ない。」


「なる……ほど? 問題ないのか? まあともかくその前に飯食わせてくれ。このままじゃ腹減って負けちまう。母ちゃん、今日の飯は!?」


「今日はこの直矢君が作ってくれたオムレツよ。さ、私たちも食べましょう。ちょうど机も空いたしね。」


兄貴に言った後直矢にも言う母さん。


「ごちそうさま。とても美味しかったわ。今度また料理について教えてちょうだい。」


姉貴が食器を片付けながら直矢に言う。


「ああ。さて、いただきます、と。」


手を合わせて食事を始める直矢。やはりカミサマを名乗っているのにも関わらず手は合わせる様子。


「いただきます!」


兄貴も続いて席について手を合わせる。


「私もいただくとするわね。はい、いただきます。」


母さんも席に着き手を合わせる。


俺たちきょうだいにしっかり食事前には手を合わせるよう教えた張本人なので当然手を合わせる。


「「むぐむぐ」」


食べながらも視線をバチバチいわせる二人。


「直矢ってこんなんだったけ……?」


楽しくて仕方ないといった風に口角が上がっている。


短い付き合いだがさっきまでと明らかに様子が違う。


「あー、これね。」


澄也が話す。


「直矢はいわゆる……戦闘狂でさ。武器の所持非所持、世界が違えば魔法の有無、それら全て関係なしに『強い』相手ととにかく戦いたがるんだよ。普段は真面目一辺倒だけどここだけは押さえられないみたいで。まあ言ってしまえば唯一の悪癖、といったところかな。」


「むぐ……んっ。そうだな、悪癖だという自覚はあるが、強い相手を見ると昂って仕方ないんだ。」


と直矢が答える。


意外だ。直矢にこんな一面があったとは。寡黙で真面目で不愛想が全てなのかと思っていた。


「ねえ私ご飯食べ終わったよ? 魔法はー?」


と、幸が寄ってくる。


「あぁすまない、君のお兄さんがあまりに魅力的だったものだからつい夢中になってしまった。」


まるで肉食獣のような瞳で兄貴を見て、ペロリと、唇を舐める直矢。


このシーンだけ切り取るとあまりに教育に良くない。


「お兄さんと戦う前に先に空を飛ぼう。希望の乗り物はあるか?」


「箒! 箒がいい! 魔女みたいにビューンて飛ぶの!」


「箒、箒か……楓、部屋借りるぞ。」


「え? まあいいけど、何するの?」


「着替えだ。流石にここで着替えるのはまずいだろ。」


「まあ、そうだね……でもなんで着替え?」


「体が変わって体格が変わったからな。捲ったりして誤魔化していたが、人を連れて空を飛ぶともなると少し危険だからな。いざというときに俊敏に動けないようでは人様の子供を預かるわけにはいかん。」


「なるほど。」


服装ごときで空の事故を防げるのかは謎だが意識は素晴らしい。幸に怪我させられるわけにいかないからな。


「ただ、女物の服は分からん。エディ、手伝ってくれないか?」


「はい、いいですよ! 今の直矢さんだと何が似合うかなー?」


「……あまり可愛らしいのは勘弁してくれ。」


「りょーかいしました!」


「ちょっと待って、服はどうするの? 私ので良ければ貸すけど……」


と姉貴。そんなこと言って着せ替えしたいだけだろ。


「それには及ばん。カミサマの能力で生み出すからな。」


「そう……」


とても残念そうにする姉貴。敵視してたんじゃなかったのか。


「それじゃあ、少し借りるぞ。物には触らないから安心してくれ。特にあの……なんだ、QSナンチャラ。アレは触ると爆発しそうだから特に注意することにする。」


「大体の機械は別に触っても爆発しねーよ……」


と澄也がボソッと言う。


その通り。まあ爆発しないにしろ変に触られて壊れるのは勘弁してほしいから触らないのは助かるけども。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆


「お待たせ。さあ、空を飛ぶとしよう。」


と、階段を下りてきた直矢。服装は、


下はタイツにホットパンツ、上半身はスポーツの時に着るようなぴったりとしたへそ出しのタイツ地の服で、その上に白と水色のチェックのシャツを着ている。


なんというか体のラインが強調されて露出はあまり無いにも拘らず、非常に扇情的な格好となっている。


「上下タイツ……?」


思わず言葉がこぼれる。


他の皆も同じ感想のようで眉をひそめている―――いや、二人ほどものすごい眼力で直矢の体の一点、いや二点を凝視しているが。


「直矢君、あなた、ブラは……?」


と姉貴。乳首くらい自分にもついてるんだからわざわざ直矢のを見なくてもよかろうに。


……いやまあ、この大きさでタイツ一枚というのは男としてはかなりそそるモノではあるが……


「ん? そんなもの、つけてないが。支える機能ならコレで十分だそうだ。なんでも天界の最新戦闘服で、その中でも肉弾戦専用らしく、とにかく体の動きを邪魔しないモノらしい。ヘソが出る理由は最高神のせいらしい。ただ、戦闘服だけじゃダメだとエディが言ってきかないから、仕方なくこの滅茶苦茶短いズボンとチェックのシャツを羽織ったまでだ。いや、天界の戦闘用グッズはチェックしていたが、女物は調べていなかった。チェック不足を反省しなければ。」


やれやれ、と前髪をかき上げる直矢。


「僕のせいなんですー!」


と泣くエディ。


「僕が直矢さんなら気に入るかもって見せるだけのつもりで出したら直矢さんがとても気に入っちゃって……一応最低限外に出られる服装にしたんですけど、僕にはこれが限界でした……」


すいませーんと続けるエディ。


確かに戦闘用服なんて見せちゃダメだったのかもしれない。


「お姉ちゃん、魔女の帽子は?」


「ああ、そうだった、今の俺は魔女か。……これでいいか?」


直矢が頭に手を触れると頭を光が包み、いわゆるマンガに出てきそうな黒い魔女帽が出てきた。


「すごーい! カッコいいよお姉ちゃん!」


「そうか、ありがとう。」


幸まであんな格好するようにならなきゃいいけど……


「では、行くか。」


スッ、と直矢が手を前に差し出すと次の瞬間にはその手に箒が握られていた。


「落ちないように気をつけろよ。」


「はーい!」


玄関の前で馬に二人で乗るように箒に二人で乗る直矢。


「では、出発だ。勇牙―――だったか。30分程待ってくれ。腹ごなしにはちょうどいい時間だろう。」


「おう! 楽しみにしてるぜ!」


兄貴の返事を聞いて直矢は幸を乗せて飛び立っていた。

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