戦闘力を感じ取る戦闘民族
ごめんなさい昨日の分投稿し忘れてました!
「っと、こんな話は置いておいて、柔道部の方々に礼を言おう。」
いつの間にやら柔道場についていたらしく、直矢が指す先には柔道場の看板が。
周りには勧誘なのか道着の人たちが何人も立っている。
「おう、楓く―――ちゃんだな。楓ちゃん達、どうした?」
と、俺たちを見つけた熊さんがこちらへやってくる。道着着て靴履いてると違和感が半端ないな。
「あ、どうも。今日のお礼と兄からの伝言を伝えに来たんですけど……」
「ほう。でもなー、手伝いに参加した部員は勧誘で散り散りになってるしなぁ。まあいい、とりあえず伝言ってのを聞こう。アイツ、なんて言ってた?」
「遅れるから伝えておいてくれって。保健室の先生の話じゃ15分くらいじゃないかって話です。」
「まあ、彼女さんのこと考えると仕方ないが、勧誘で忙しいこの時期に遅れるっつーのはなぁ。」
腕を組んで首を捻る熊さん。
「そんなに重要な時期なんですか?」
あまりその辺の感覚がないから分からない。
「ああ。部員の数ってのは部の強さに直結するからな。部員の数が多いと少ないとじゃやれる練習やその質が大きく変わってくる。部費の額にも影響するし、とにかく勧誘の時期は全力で新入生を勧誘するのが重要なんだ。」
「じゃあなんで握手会の手伝い受けてくださったんですか?」
そんな重要な時期にあの人数の部員を割くのは良くないのでは?
「ついでで手が空いている部員が勧誘してたからな。人が集まるところに勧誘しに行くのは勧誘の鉄則なんだ。どっちにしろ行く予定だったし、どうせ行くんだから、頼まれごとされてお礼で別口から勧誘してもらう方がいいだろうってことだな。」
「なるほど……」
ちゃっかりしている。
「あー、あとお礼だけど。とりあえず部長と顧問がいるからあの人たちに言えばいいんじゃないか? あっちにいる人たちだ。紹介しよう。」
靴は脱いでくれよ、と熊さん。
「分かりました、ありがとうございます。」
先導する熊さんに続いて靴を脱いで道場に入る。
「猿谷先輩、稗苗野先生、生徒会選挙をしていた生徒達です。お礼を言いたいんだとか。」
熊さんが話しかけたのは小柄なのも相まって全体的に猿っぽい男の生徒と髪が長く、着物とかが似合いそうな全体的にふんわりとした雰囲気の目が細い男の先生。
「はい、今回はありがとうございました。」
「いやいや。君たちが異例の一年生で出馬すると言うグループか! お礼なら是非うちの部に入ってもらうのが一番助かるんやけどなぁ。ま、生徒会するんじゃ無理か。こっちも勧誘させてもらったし、マネージャーも一人決まったらしいし、winwinや! なあ、先生?」
と猿谷先輩が言う。
「ええ、そうですね。マネージャーが入ってくださったのはとてもありがたいことです。僕としては是非、そちらの方にはうちの部に入って欲しいですけどね。」
と、直矢を見て言う稗苗野先生。
「……俺ですか?」
と直矢。
「ええ。君、柔道を含んだ武術の心得がありますね? それもかなり。是非ともうちの部に欲しいですねえ。」
と稗苗野先生。
「分かりますか。」
意外だ、といった顔で言う直矢。
「ええ。僕は柔道専門ですが、それなりに武術の心得がありまして、強い人は雰囲気で分かるんですよ。君からは年齢に不相応な雰囲気を感じます。」
年齢に不相応……確かに直矢は実際は歳がもっと上らしいが、そんなことまでわかるものなのか?
「はあ。雰囲気で分かるのは俺もですけど、失礼ながら先生からはあまりそういった雰囲気は感じないのですが……」
そちらの先輩からは感じますけど、と直矢。
「そうかもしれないですね。そういう風に感じるように振る舞っているので。どうでしょう。君が良ければ私と一試合してもらいたいのですが。そして私が勝った暁には……そうですねえ。当選した場合部に入ってもらうのは難しいかもしれないですが、定期的に部員の練習相手になってもらうとかですかね? 残念ながら落選した場合は入部してもらうと言うことで。もし私が負けたら―――部員全員に君たちに投票するよう指示するとかどうでしょうか。もちろん嫌なら試合しなくとも構いません。私としては試合してもらえると嬉しいですけどね。」
「勝つだけでそこそこの数の投票が得られる、と。」
直矢の目が心なしかギラギラして来たように感じる。
「ええ。まあ、いくら私が教師で顧問とはいえ、強制することはできないので、絶対部員数分の数が入ると約束はできませんが、恐らく部員は投票してくれるのではないでしょうか。」
「わしは先生が投票しろって言うなら投票するで! 先生のことは尊敬してるし信頼してるからな!」
まあ、先生が負けるなんてあり得へんけどな、と猿谷先輩。
「ふむ、そこまで言われると、受けないわけにはいかないですね。俺も戦うことに関しては自信があるので。」
明らかにギラギラとした目で言う直矢。
「じゃあ決まりですね。道着は貸してあげます。あちらが更衣室になっているので着替えてきてください。」
猿谷君、案内してあげなさい、と稗苗野先生。
「はい分かりました先生!」
ウチの先生は強いでー、と直矢に言って道場の奥へ直矢を連れて行く猿谷先輩。
「オッス、すいません遅れました!」
と、兄貴がさやかちゃんと一緒に道場に入ってくる。
「新条君、遅刻は感心しませんね。まあ、半分君のお陰でマネージャーが見つかったようですし、今回は多めに見ましょう。」
と稗苗野先生。
「すいませんっした! ……さやか、ここが道場だ。マネージャーの仕事はー、そうだなー、誰に習うのがいいかなぁ。とりあえず俺が教えるか。お、楓、まだいたのか。あれ? 直矢は?」
「なんか先生と試合するとかで着替えに行ったよ。」
「マジで!? そりゃあ多分直矢……負けるぞ。」
「ええ!? だって、お兄ちゃんとあれだけいい勝負したんだよ!?」
男女の身体能力差というハンデ有りで。
でもまあ、その兄貴を指導してるってことはその上を行く可能性も……でも兄貴の強さも異常だしなぁ。
「そうですよ! うちの直矢はこと戦うことに関しちゃ誰にも負けないレベルですよ!」
と澄也。
「澄也さんの言う通りです! 直矢さんが負けるなんてあり得ないです!」
とエディ。
二人とも相当直矢を信頼しているらしい。
「そりゃあまあ、アイツは強いけどよー、先生は別格だよ。打撃とかもアリのルールでたまに勝てるかなって感じだな。柔道で勝負するんじゃまず勝てねえ。」
と兄貴。
先生そんなに強いのか。
「それにしては直矢のセンサーに反応してなかったみたいですけど。」
と澄也。
そういえばそのセンサーで兄貴と戦うことになったんだっけか。
「そりゃ先生、いつもは強さ隠してるからな。先生くらいになるとその辺も自由自在なんだってよ。」
なあ先生?と稗苗野先生に聞く兄貴。
「そうですね。まあ、ただのちょっとした特技ですよ。」
「へ、へぇー。」
強さセンサーってのも眉唾な話だけど、更にそれを隠せるってのはどうにも怪しいというか信じ難いというか。
「ま、見てりゃ分かるさ。直矢がバシバシ投げられても落ち込むなよ?」
「そうですね、どっちが勝つにせよ、待てば分かる話ですね。」
と澄也。
「直矢さん頑張って欲しいですね……」
とエディ。
と話していると、道着を着た直矢が猿谷先輩と一緒に首を回しながら歩いてきた。
「さて、僕も準備しますかね。」
先生の細い目が開く。すると、素人の俺でも分かるようなこの人は強い、と言った雰囲気を感じた。
これを直矢達は感じ取っているのか。
「……これは。」
直矢が驚いた顔で言う。
「さあお前ら、先生が試合するでー! 説明とかもいいけど今だけは試合場に注目や!」




