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兄貴は割とモテる

「待たせたな。えーと、このホームルームで伝えるべきことはーっと……ああ、そうだ。鍵とデカい鞄な。鍵はなるべくダイヤル式。後、学力テストもあるから筆記用具も忘れずに持って来るように。そんじゃかいさーん。今日はもう帰っていいぞー。」


史田が戻ってきて言う。


史田の言葉を受けて、教室を出る者、隣の席の人間と話す者、皆各々何かをし始める。


「僕らは握手会の準備だ! お兄さんから返信は来た?」


澄也が聞いてくる。


「うん。勧誘に行く予定だった部員を何人か回してくれるって。」


「おお、ありがたい。」


「まあね。あ、そうそう。さやかちゃん、マネージャーやってくれるって。」


ね、さやかちゃん、と言うと、


「うん! 私やるわ! そして勇牙様に好きになってもらう!」


様て……


「おお、いい意気込みだね。お礼のアテもできたね。僕ら、マネージャーの斡旋と引き換えに協力を頼んだからさ、僕らの勧めで入ってくれるのはとても助かる。」


「あ、そうだったんだ。お役に立てて良かったです!」


とさやかちゃん。


「じゃあ、視聴覚室前行こうか。」


 ◇◆◇◆◇◆◇◆


視聴覚室前で机を並べたり握手会の設営をする。


「と言うかさ、コレ、許可取ってんの? 勝手にこんなことするのはまずいんじゃ……」


澄也に聞く。


机とかも勝手に持ち出してることになるわけだし。


「モチロン! 昨日のうちに校長さんにメールしておいて、ちゃんと返信ももらってるよ。」


と澄也。


「なら良かった。」


こっちも安心してできるってもんだ。


と、設営をしていると、


「おう楓! 手伝いに来たぜ!」


兄貴がやってきた。


後ろには屈強な男たちが何人か。中には熊さんもいる。


「ありがとうお兄ちゃん。今日はよろしくね。」


目一杯の笑顔で兄貴に言う。これで気合を入れて働いてくれるだろう。


「お、おう!」


見るからにテンションの上がる兄貴。


「おい新条、お前、ハーフとかだったのか……?」


「マネージャーなってくれねえかな……?」


「俺、これからお前のことをお義兄さんって呼ぶわ……なんだあの天使は……」


後ろの部員がざわつく。


お義兄さんは違うだろ。


しかし、改めてこの容姿の威力を感じる。自分でも可愛いって思うくらいだし、ハタから見たら滅茶苦茶可愛いんだろうな。


「よし、まず何をすればいいんだ!?」


兄貴が聞いて来る。


「倉庫の方からこの机を後二つ持ってきてください。後は、握手会が始まったらそれぞれ机に付いてもらって、20秒経ったらお客さんを離してください。」


と澄也。


「それだけでいいのか?」


「ええ。まあ、強いて言うならお客さんが変なことをしないように睨みを効かせてもらえれば。あ、でもそれもあまりやりすぎないでくださいね。普通のお客さんまで萎縮させちゃこれをやる意味がないので。」


澄也が説明する。


折角来てもらった人をビビらせちゃいけないからね。


「おう、分かったぜ! とりあえず机取ってくるぜ! 強、手伝ってくれ!」


「おう。こういうのはよく分からんが、多人数の人間を短時間で相手するのは多分大変だ。頑張れよ。」


熊さんが通りすぎ際に言ってくれる。


「はい、ありがとうございます。」


やはり熊さんの半分は優しさでできているのだろう。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆


「はい、是非投票よろしくお願いします!」


「次の方どうぞー。」


俺と生徒の握手が終わったのを見て直矢が次の生徒を案内する。


俺の予想以上に握手会は人が来て結構疲れてきた。


皆暇なのか……?


と、次の人を見ると、


「御機嫌よう、楓。」


姉貴が立っていた。


「あね……お姉ちゃん!? なんでここに!?」


「そりゃあ、楓と握手するためよ。本当ならこんな催し、即刻中止にしたいけれど学校長の許した活動である以上、選挙妨害になってしまうし、仕方ないから握手だけしに来たってわけ。」


「自分の選挙活動は?」


こんなことしてる暇あるのか?


「今からやるわ。さっき現会長としての執務が終わったの。これが終わったら校門で演説をするわ。」


「なるほど……」


選挙活動と生徒会活動を同時に行うのは中々大変そうだ。


「じゃ、握手してちょうだい? 時間がかかってるからか、直矢君がこっちを睨んでるし。」


「あ、うん。じゃあはい。演説、頑張ってね。」


ホントは頑張って欲しくないけど。


そんなことを思いながら姉貴と握手をする。握手くらい別にいつでもできるだろうに。


「ええ、ありがとう。柔らかくてすべすべの手ねー。頬擦りしたくなるわー。」


念入りに俺の手を撫で回す姉貴。


「ちょ、やめ、くすぐったい!」


離れそうにないので直矢に目配せすると、


「次の人来るのでこちらからお帰りくださーい。」


直矢が姉貴を剥がす。


「あっ、ちょっ、もうちょっと!」


「ダメだ。」


流石の姉貴も直矢が相手では分が悪く、引きずられて机の前を後にする。


にっこりと笑顔を浮かべながら姉貴に手を振る。


澄也に聞いたテクニックだ。姉貴は別だが、こうすることで投票してもらえる確率が上がるのだとか。


確かに笑顔で見送られると、投票するかはともかく印象はいいんだろう。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆


「はあ、疲れた……」


たった1時間だったが、常に愛想良く応援を頼むのは中々に疲れた。


「そうですか? 僕は元気ですよ!」


ふんす、と両腕を上げてポーズをとるエディ。


「僕も元気さ! 沢山の女の子と握手できるなんて、ご褒美みたいなものだからね!」


と澄也。


「疲れちゃいないが少しばかり退屈だったな。」


帰る前に少し運動でもするか、と直矢。


「お疲れ楓!」


と兄貴が近づいてきた。


「そういえば、マネージャー志望の子が一人いるって聞いたけど、どこにいるんだ?」


キョロキョロと周りを見る兄貴。


「えっと、この辺りにいるって言っていたけど……あっ、いた! さやかちゃん、こっちこっち!」


隅の方のベンチに座っているさやかちゃんを見つけて呼びかける。


「はーい! って、勇牙様!?」


あわあわと髪の毛やらなんやらを直すさやかちゃん。


別に直すほど乱れてもいないと思うんだけどな。


「勇牙……様?」


兄貴が首を捻る。


誰だっていきなり様付けで呼ばれたら不思議に思うだろう。


「あ、いや、えっと、そのー勇牙……さん? いや、先輩! 先輩ですね! 古田島さやかって言います!」


「ん? あれ、どっかで会ったような気がするな。最近、俺とどっかで会ったっけ?」


「昨日お会いしました!」


「昨日? んー……ああ、あの時の!」


「はい! それで、お願いがあるんですけど……」


「お願い? まあ、俺にできることならやるけど……」


「先輩、私と付き合ってください! 一目惚れなんです!」


深く頭を下げて言うさやかちゃん。


周りには他の柔道部員とか俺たちとかもいるのに度胸あるんだな、さやかちゃん。


「付き合ってって……俺と?」


ポカン、とした顔の兄貴。


「はい! お願いします!」


「えーと、付き合うのはいいんだけどよ、俺、君のこと知らねーし、それに、俺が一番好きなのは妹たちだ。それは多分変わらねえ。好きになっても3番目だが、それでもよければ構わないぜ。」


と兄貴。


兄貴も見た目はそんなに悪くないし、勉強はからきしだけど運動はかなりできるしで意外とモテるらしく、たまに告白されることもあるらしい。その時は毎回こう言うらしいのだが、最初はこれでもいいって付き合うらしいんだけど、冗談抜きにこれが本当だって皆気づいて結局別れるらしい。


身内と友達が付き合って別れたなんてことになったら気まずいし、できればそんなことにはなって欲しくないんだけど……


「それでも構いません! いつか私が一番って言わせて見せます!」


周りからはヒューヒューと冷やかす声が聞こえてくる。


「……そうか。じゃ、付き合うか! よろしくな、さやか!」


「い、いきなり呼び捨て……」


真っ赤な顔をするさやかちゃん。そして、


「きゅう……」


倒れるさやかちゃん。

僕のツイッターを見ている人は知っているかもしれないのですが、僕少しだけ絵が描けるんですよね。そこで主人公陣営の絵を描いたのですが、見たかったりしますかね? クオリティはツイッターを見てもらえれば。もしいれば50話記念とかで小出しに出していきます。

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