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バナナホームルーム

教室に戻る途中、兄貴に握手会を手伝って欲しい旨のニャインを入れておく。


「おう、ビラは配れたか?」


教室に戻ると直矢が既に席に着いていた。


「うん、結構配ったよ。皆好印象だった。」


と言うと、直矢がずいっと近寄り小声で、


「クラスの男子がお前と握手できるって騒いでいる。握手会、結構大変なことになりそうだぞ。」


と。


「マジで? 面倒臭いなぁ……」


生徒会選勝たなきゃいけないから仕方ないんだけど、やりたくない……最高神マジ許さん。


そういえば、まだ男子に声をかけられたりはしてないな。元男としては男友達も欲しいところなのだが。いや、直矢と澄也はいるんだけど、それ以外にと言う話で。


と言う話を元男というところは伏せて直矢に話す。


「まあ、なんだ……楓はそのー……美人だからな。皆話しかけたくても萎縮してるんだろう。」


と直矢。


「そんなもんなのかな。」


まあ、中身は純日本人だということは伝えてあるが、銀髪碧眼なのも話しかけづらい要因なのだろう。


なんて考えていると、


「おはよう楓ちゃんに、えーと、明神君! 朝からラブラブなのかしら?」


とさやかちゃんが。


「だからそんなんじゃないって! 誰かに聞こえたらどうするのさもう。」


「そうだ、誤解だ。」

と直矢。


「そういえば、昨日のカッコいいお兄さんは?」


とさやかちゃん。


「ああ、アレはあに……お兄ちゃん。だからホントなんでもないからね。」


危うく兄貴というところだった。言ったからどうなると言った話でもないが、あまり女子らしくない言動をして目立ちたくはない。


「な、なんてこと……まさかの禁断の恋……!」


一人で勝手に興奮するさやかちゃん。


「だからそういうんじゃなくって……」


と、さやかちゃんに声をかける。


すると、


「あ!」


さやかちゃんが突然何かに気づいたように言う。


「あのお兄さんが楓ちゃんとんさんでもないってことは、もしかして今、フリーなのかな……? あ、でもあんなにカッコいい人に彼女がいないわけ……」


ブツブツと何かを呟くさやかちゃん。


「お兄ちゃん、今は彼女はいないはずだよ。」


告白されて何回か付き合ったことあるらしいけど、どうもうまく行かなかったらしく、それ以来そういう話は聞かない。


「え、ホント!? あ、あのさ……」


さやかちゃんが何か神妙そうに言う。


「あの人、楓ちゃんのお兄さんなんだよね? その、紹介、して、もらえないかなー、って……」


「紹介って言うとー……お見合い的な意味合いで?」


そうとしかとれないけど。


「う、うん。昨日あの人を見てからなんかずっと気になってて……私、今までは推しを部屋の壁として見守るのが至上の喜びだと思ってたんだけど、あの人を見てからは、仲良くなって、その後、そのー……なりたいな、って思っちゃったんだ。」


「なるほど……」


ここでピン、と閃いた。


さやかちゃんの好意を利用するようで申し訳ないが、ちょうどいい機会かもしれない。


「そしたらさ、お兄ちゃん、柔道部に所属してるんだけど、マネージャー募集してるんだって。やってみない?」


「え、それホント!? やるやる! 楓ちゃんも一緒に―――って、楓ちゃんは生徒会長になるんだったね。」


ちょっと残念、と肩を落とすさやかちゃん。


なんて話していると、


「楓ちゃん、ちょっといい?」


と澄也が声をかけてくる。


「何?」


「今日、この後立候補者の演説があるから原稿を渡しておこうと思って。」


演説!?


「聞いてないんだけど!」


隣の席の澄也に言うと、


「原稿はあるし、安心してよ。演説とはいっても所詮は高校生のやることだからね、内容さえよければ演説力みたいなものは求められないさ。まあ、頑張って。」


事前に読んでおいて、と紙を渡してくる澄也。


「あ、ありがとう……」


不安だ……


とりあえず原稿を読み込む。内容はマニフェストの内容を普通に話すだけというもの。


まあ、これくらいなら大丈夫か……


なんて思っていると、


「うぃーっす。ホームルーム始めるぞー。」


と史田が教室に入ってきた。何故かバナナを片手に持っている。


「えー、今日はまず校内の案内。そして体育館に集まって生徒会選に出馬する奴らの演説を聞く、と。今日はそれでおしまいだな。あー、あと、明日は教科書配るから、デカい鞄持って来いよ。あと鍵な。ロッカーに着ける奴。なるべくダイヤル式がいいな。毎年数人鍵無くしたって泣きついてくる奴がいるんだ。あ、それと宿題。纏めて前に回すように。」


説明し終わり、ふう、と椅子に座るとおもむろにバナナを食べ始める史田。ざわつく教室。


なんでこいついきなりバナナ食い始めてんだ……?


「何してんだお前。」


直矢が突っ込む。周りも頷いている。


ホントだよ。


「いやー、タバコ吸ってたら朝飯食う時間無くなっちゃってさ。ほら、朝は抜かない方がいいって言うだろ?」


お前らも朝抜いたりしちゃダメだからなー、と史田。


「だからってホームルーム中に食う馬鹿がどこにいるんだ。タバコ吸ってないで朝飯食え。」


このクソ教師が、と直矢。


「だってタバコは吸わねえと生きていけないし、かといって教室で吸うわけにもいかねえだろ?」


俺にだってそのくらいの良識はあるさ、と史田。


「じゃあ早起きしろ。」


「それができりゃあ苦労しねえんだけどなー。ま、いいや。宿題は集まったな。とりあえずホームルーム終了ー。俺がこれ食い終わるまでに名前順で廊下に並んどいてくれ。」


「皮は臭うから持ち帰れよ。」


と直矢。


「ええ!? 面倒くせーなー……」


どうすっかな、と呟きながらバナナを食べる史田。


ホントにダメ教師だな……


「さあお前ら、並ぶぞ。昨日と同じだから大丈夫だよな?」


直矢が指揮を執り、クラスメイトを並ばせる。


「明神君、すごいね。先生にあんなにズケズケ言っちゃうなんて。」


俺の前に並んださやかちゃんがひそひそ話で言う。


「そうだねー。まあ、でもアレは言われてもしょうがないでしょ。」


「まあ、そうだね……」


なんて話していると、


「さーてお前ら、ちゃんと並んだな? よし出発!」


史田が廊下に出てきて言う。


仕事した風にするな。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆


何か所か案内された後、職員室前に来る。


「ここが職員室。んでもって、こっから先は生徒は立ち入り禁止。校長先生のプライベートゾーンだからな。まあ鍵もかけられてるし、入ろうと思っても入れないとは思うけどな。」


廊下の端にある重そうな扉を指して言う史田。片手には先程の皮が。どうするんだろうアレ。


冬士さんは学校に住んでるって言ってたし、この先は住居になっているんだろう。


「中には何があるんスかー?」


クラスの誰かが史田に聞く。


「んー、俺も詳しくは知らんけど、住居兼研究室になってるらしいぞ。」


史田の言葉に、住居?研究室?といった疑問の声がそこかしこから聞こえてくる。


「うちの校長、なんかいつも変な研究してんだわ。んで、通勤時間が惜しいってココに住んでる。」


周囲がざわつく。


まあ、入学早々校長がそんな変人めいたことしてたるなんてこと知ったら戸惑うよな。


「ま、心配すんな。校長は優秀な人だから仕事に支障はきたさないさ。」


俺と違って、な。と史田。


カッコよさそうに言ってるけど1ミリもカッコよくないからな。


すると、


「おっ、史田がいるってことは……A組か。追いついちまったな。」


神田先生が生徒を連れてやって来た。

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