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怪力熊さん

2021-07-06改稿

「さて、問題はここからだな。」


二階へと続く階段を見据えて言う直矢。


「これは一人じゃ無理なんじゃ……?」


重さと言うより大きさの面から考えて。いや、重さも大分だけど。


「ふむ……なんだか悔しいが澄也に手伝ってもらうか。」


顎に手を当てて言う直矢。


「澄也、大丈夫なの?」


こんな重いの持ったら死ぬんじゃないかな、あいつ。


「まああいつも男の端くれだ。上側からバランスをとるくらいの仕事はできるだろ。」


そのままおーい澄也ー、と階段を上りながら澄也を呼ぶ直矢。


心配だ……


なんて考えていると、澄也が部屋から出てくる。


「えーこれ!? いやいやいや無理無理無理! 自慢じゃ無いけど僕はパソコンより重いもの持ったことないんだから!」


ほらこれ、と細い腕を見せる澄也。


本当に自慢になっていない……


「うーむ、まあ落とされて壊れたら困るしなぁ……」


困った、と呟く直矢。


「というか、二人ともその格好はどうしたの? 滅茶苦茶気になるんだけど。」


と澄也。


かくかくしかじかと説明していると、


「お、楓君じゃないか。引っ越しの手伝いか? そんなことができるほど力持ちには見えなかったが……」


自転車に乗った熊さんが現れた。


「あ、熊沢さん、こんにちは!」


「楓、知り合いか?」


直矢が聞いてくる。


「うん。兄貴の部活の友達だって。」


「というか君ら……付き合ってるのか?」


と、Tシャツを指して言う熊さん。


「あー、これは事情がありまして……」


もう一度かくかくしかじかと説明をする。


「2割引なら仕方ないな! 俺だって同じことをする。で、これがその割引してもらった冷蔵庫か。見たところ運ぶのに困ってる様子だが……手伝いは必要か?」


「手伝ってくれるんですか!?」


熊さんが手伝ってくれるなら百人力だ。


「おう。親友の弟の頼みだからな! 任してくれ!」


言うや否や、自転車を降りて冷蔵庫に近づく熊さん。


「えーと、じゃあ俺が下持つので上を―――」


直矢が一緒に持つための役割分担について話すが、


「よっこいしょ、と。ん? なんか用か?」


一人で軽々冷蔵庫を持ち上げる熊さん。


「いや、そしたらもう片方は俺が持つので―――」


直矢が近づくが、


「大丈夫、力仕事には自信があるんだ。この通り、図体もでかいしな。」


そのままのしのしと階段を上がっていく熊さん。


「あ、ありがとうございます。……なんだか悔しいな。」


ボソッと呟く直矢。


「あの人相手に力じゃ敵わないって……」


直矢もガタイはいい方だけど、熊さんの方が規格外というかなんというか……縦にもデカけりゃ横にもそこそこ大きい。文字通り熊みたいな人だからな。


「中での位置調整くらいならできるか? すまんが俺、出前の帰りだからそんなに長居できなくてな。」


熊さんが部屋から出てきて言う。


「ええ、大丈夫です。助かりました、ありがとうございます。」


「ありがとうございます。」


直矢と一緒にお礼を言う。


「じゃあなー。」


熊さんが自転車に乗って去る。


「さて澄也、配線を頼めるか?」


部屋に入って直矢が言う。


「はいはい任せてー。それにしても、さっきのデカい人は誰?」


と澄也。


「ああ、それか。なんでも楓の兄の友人だそうだ。」


「へぇー。親切な人だねぇ。そしたら僕は作業するから悪いけどエディちゃんの勉強を見てやってくれる?」


そういうと、冷蔵庫の説明書を開いて読みはじめる澄也。


「ああ。それにしても楓、お前、弟って呼ばれてなかったか?」


と直矢。痛いところを突くなこいつは。


「あー、それなんだけど……」


バレたから半分嘘をついて誤魔化したことを説明する。


「なるほどな、あの校長のせいにしたのはいい判断だ。洗いざらい話されていたら、記憶を消さなきゃいけないところだった。」


そんなこともできるのか……


「じゃ、俺は着替えて手押し車を返却してくる。エディの勉強は任せた。俺より楓の方ができそうだしな。」


そう言うと直矢は脱衣所に入る。


俺もそこまで勉強が得意ってわけじゃないんだけどなぁ……


「そしたらエディ、分からないところがあったら聞いてくれる?」


「はい、分かりました! 次は……ニジホーテーシキってやつみたいです! えっと……この右上にある数字は確か……ニジョーでしたっけ?」


「そう。で、これを解くにはこれをこうするか、もしくは―――」


エディに解き方を説明する。


「ふんふん、なるほどー。そしたらこの問題はこう……ですか?」


エディが問題を解く。


「うん、完璧。エディ、優秀なんだね。」


一昨日まで九九も知らなかったとは到底思えない。


「僕が優秀なんじゃなくて、教えてくれた人が優秀なんですよー。」


エディに数学を教えたのは姉貴と澄也……確かに優秀ではある。


「いやいや、エディちゃんは間違いなく優秀だよ。吸収力が素晴らしいね。」


手放しでエディを褒める澄也。


澄也のことだから、まあ僕は天才だからね、なんて言いそうかなと思ったけど。


「そ、そうですか? えへへー、ありがとうございますー。」


にへらっ、と笑うエディ。


「そのまま頑張って。」


と澄也が応援する。


「はい!」


 ◇◆◇◆◇◆◇◆


「二次方程式、終わりましたー!」


脱衣所で着替えているとエディの声が聞こえてくる。どうやら終わったらしい。それはともかく澄也が覗いてきたりしなくてよかった。


「確か、二次方程式は課題の最後だったよね。順番に解いていったなら課題は終わりのはずだけど、終わったかい?」


と澄也。


「はい、終わりました!」


「じゃあこれが終わったらチェックしようか。別に満点である必要は無いけどあまり正答率が低いと教師の心証が悪いしね。さて冷蔵庫はこいつがこっちで……はい終わり!」


どれどれ、とエディの課題を眺める澄也。


「ふむふむ。まあ、間違っているところもあるけど許容範囲でしょ。完璧すぎてもテストの時に点数とれなきゃ怪しまれちゃうしね。」


ま、僕は完璧に回答してしまったんだけど、と澄也。


微妙に人をイラッとさせるよなこいつは。


なんて考えていると、


「帰ったぞ。」


直矢が帰ってきた。


「おうお帰りー。こっちは課題全部終わったよ。さてそうなると……いい時間だし、今日は解散かな?」


と澄也。窓の外を見ると、確かに日が暮れてきている。


「そうだな。よし、送って行こう。」


「いや、悪いよ。」


まだ暗いわけじゃないし。


「そうですよ、二人なら大丈夫です!」


エディも続く。


「いや、送る。嫌がられようが、送る。治安の問題というより最高神の存在があるからな、何が起こるか分からん。トラブルの芽は摘んでおくべきだ。」


「まあ、そこまで言うなら……」


まさに問答無用といった感じだ。本当に嫌がっても送るのだろう。


「それなら行くか。忘れ物をしないようにな。」


「はーい。」


「分かりましたー!」


二人でそれぞれ荷物をまとめる。


「なんか俺一人で居残りってのもなー。直矢、俺もついてくわ。」


と澄也。


「まあいいが……お前ら、準備できたか?」


と直矢。


「できたよ。」


「できました!」


「じゃあ行くか。澄也、戸締り忘れるなよ。」


「嫌だなぁ、この僕がそんな大事なことを忘れるわけないじゃないか。」


自信たっぷりに言う澄也。


「まあ、鍵閉めてくれればなんでもいいが……ともかく出発するか。」


 ◇◆◇◆◇◆◇◆


「ただいまー。」


「ただいまですー。」


特に何も起こらず家へと着き、玄関のドアを開ける。


「お帰り、ってあら、また直矢君と一緒? 本当にナイトじゃない、いいわねー。」


と母さん。


「だからそう言うのじゃ無いってば……」


「え、何、てことは昨日も? 帰るの遅かったのはそう言うことだったのかー。隅に置けねえなー、直矢ー。」


うりうりー、と直矢を肘で小突く澄也。


「……」


「あだっ!?」


無言で澄也をデコピンする直矢。


デコピンだけど、澄也の反応を見るにかなり痛そうだ……


「澄也君もこんばんは。」


「はい、こんばんは! 茜さん、今日もお綺麗で。」


母さんに挨拶をする澄也。


「あら、ありがとう。でも私、あなたに名乗ったかしら……?」


「僕は何でも知っているんですよ。」


ふっふっふ、と笑ってから言う澄也。


なんだこいつ……


「さて、明日も七時に迎えにくる。それじゃあな。」


直矢が家から出ながら言う。


「うん、じゃあね。」


「おやすみなさいー!」


「おやすみ、エディちゃん。」


澄也がエディに軽く手を振って直矢に続いた。

さて、今月はこれで終了となります。短くて申し訳ありません。来月はもう少し長くしたいなぁ...


それはそうと、タイトルを少し変えました。リメイクってあんまり印象良くないかなと思いまして。


感想等頂けると励みになり、話数も増えると思うので、よければお願いします。それではまた来月。

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