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ゲーム売り場に置いてあるというだけでゲームが魅力的に見える現象

「さてと。腹ごしらえも済んだところだし、課題進めていきますかー。」


皿を片付けて澄也が言う。


「はい! じゃあ次の問題はえっと、二次関数?って言うのみたいです。」


「うん、まあそんなに難しいものでもないし、最悪やり方のパターンを覚えてしまえば基本的な問題は解けるようになるから気負わずにやっていこう。」


澄也がエディに講義を始める。


「じゃあ、俺たちもやっていこう。……つっても、俺も教えられるほど英語ができるわけでは無いんだけど。」


直矢に言う。


「ああ。それでも構わん。まずこれは―――入れ替えの問題か。」


直矢の課題を見る。


書いてあるのはよくある単語を入れ替えて文章を書かれている日本語の意味の通りになるよう成り立たせましょうといった問題。意地悪なことに一部の単語は書き換えなさい、といった形式のものだ。


「えーと、これはまず主語が先に来る……んだよな?」


「えっとー、多分そう、かな? 疑問文じゃないし。」


「そうなるとその後は動詞……か? 動詞っていうと、この単語か。」


「うん。あ、でも三単現だからs付けないと。」


「三単現っていうと……聞き覚えはあるがどんなものだか忘れてしまった。」


「三単現っていうのは、三人称単数現在形の略、だったかな? ともかく、主語が三人称でかつ単数。なおかつ時制が現在だとsがつくんだ。」


「あー、あったなそんなの。するとこいつにsをつけて、後はこいつらはこっちで……こうか。」


「うん、多分正解。」


「よし、思い出してきたぞ。えーと、まず主語が来て、その後に動詞。こいつは三人称単数だからsを付けて、と―――」


「今回は過去の文だから過去形。」


「すると……makedってとこか?」


「いや、makeはちょっと特別な単語で過去形だとmadeになる。」


「ああ、そうか。」


元々苦手だったがブランクがあるとこうも分からなくなるものか、と直矢が呟く。


「まあ、課題ももう少しで終わるみたいだし、のんびりやっていこうよ。」


昨日頑張ったらしく、残りページ数は少なく見える。


「そうだな。えーと、これは過去形の文で、動詞はwriteだから、えー、こいつも形が変わるんだったな。待ってくれ、もう少しで思い出せそうなんだが、えー……」


腕を組んでうんうん唸る直矢。


「あー、分かったぞ。wroteだ。」


顔をパッとあげて言う直矢。


「おお、正解。」


「良かった。えーと、次の問題は―――」


 ◇◆◇◆◇◆◇◆


「なんとか終わったな。」


しばらく課題と格闘した後伸びをしながら言う直矢。


「俺そんなにいらなかったね。」


ちょっと間違えた時に口出したりはしたが、大抵は一人で済ませてしまった。


「そうでもない。ありがたかったぞ。ありがとう。」


「そう? まあ、それなら良かったけど。どういたしまして。」


「さて澄也、答え合わせを頼む。多少間違えている程度なら訂正はいらんだろうがあまりにも間違いが多いと生徒会選挙に響く。」


「おっけー。こっちはもう少しかかりそうなんだからさ、もし良かったら買い出しとかやってきてくんない? まだ家具も家電もほとんどないし。」


「ああ、構わん。楓、来てくれるか? 機械は苦手でな。どれを選ぶべきか分からん。」


「いいよ、ついてく。」


ここいてもやることなさそうだし。


「じゃあ、行くか。近くに電気屋はあるか? 冷蔵庫と炊飯器が早急に欲しい。」


「それなら大きいのが学校の方向にあるよ。」


オオヨドカメラがある。


「よし、なら善は急げだ。早速行こう。」


 ◇◆◇◆◇◆◇◆


「でかいな……」


直矢がオオヨドカメラの建物を見上げて言う。


オオヨドカメラ。ゆりかごから墓場まで、をモットーに様々な商品を取り扱う大手企業だ。家電はもちろん、おもちゃ、お菓子と子供向け商品もあれば、服やアクセサリー、酒やタバコ等の嗜好品まで売っている。


「はぐれないようにしないとね。」


「そうだな。この広い建物ではぐれたら合流するのは骨が折れそうだ。」


「一応携帯で連絡取ればなんとかなりそうだけど。」


「俺には使い方が分からん。」


「あっそう……」


まあ、はぐれなきゃ問題なしか。


「さてと、家電コーナーは……3階か。」


館内案内図を見て、エスカレーターに乗る。


「こういう大きいお店来るとついゲーム売り場とか買うつもりもないのに見にいきたくなっちゃうよね。」


そして財布に余裕があるとついつい買ってしまったり。


「……一般的にはそうなのか?」


そういえばこいつゲームとかしないんだった。


「まあ、皆が皆ってわけでは無いと思うけど、それなりの割合いそうだと思うよ。」


「ふむ。そういうもんか。」


「っと、ここだね。炊飯器は……あっちか。」


店内のガイドを見て向かう方向を決める。


「ふーむ、どれがいいんだ……?」


並んだ炊飯器を見て腕を組む直矢。


「ぶっちゃけ私も炊飯器の違いとか分からないし、こういうのは店員さんに聞くのがいいんじゃない?」


「それもそうだな。すいません、ちょっと聞きたいことが。」


直矢がその辺にいた女性店員を呼び止める。


「はい、どうされました?」


「最近引っ越して、炊飯器と冷蔵庫を買いたいのですがどれがいいのか分からなくて。」


「そうですねー、何人でお住まいですか?」


「二人です。」


「あらー、そうですかー。とってもお幸せそうですねー。」


ニコニコと俺の方を見る店員さん。


この人、何か勘違いしている気が……


「そうですね、お二人でご使用されるとなりますと、こちらのエリアのものからお選びになるのが良いかと思います。ご予算の方はどのくらいですか?」


「なるべく安いものが……」


「それでしたら、こちらのモデルかこちらのモデルがよろしいかと。」


二つの炊飯器を指し示す店員さん。


「これとこれ、何が違うんですか?」


「そうですね、機能の多さですかねー。後はそもそもの構造ですね。」


「機能は米が炊ければそれでいいんで、気にしません。構造の違いというと?」


「こちらの製品は内蓋の丸洗いが可能になっていまして、清潔に維持することが簡単です。値段も殆ど変わらないので機能の数を考慮しないのであればこちらがよろしいかと。」


「じゃあこれで。後は冷蔵庫ですが……」


「冷蔵庫はこちらのコーナーですね。自炊はよくされます?」


「ええ。ほとんど自炊です。」


「それなら少し大きめの冷蔵庫がいいですよね。」


「そうですね。」


「そうしますと、こちらのモデルはどうでしょうか? このサイズでは一番お安く提供できますが。」


「ふむ、このサイズなら結構入るか……これより安いものだとどうなります?」


「これより安いものですと、サイズが結構小さくなってしまいますね。この製品とかのサイズですね。」


店員さんが一回り小さい冷蔵庫を指さす。


「うーむ、この大きさはちょっとなぁ……じゃあ、さっきのやつで。」


「はい、ありがとうございます。ところで……不躾ですが、お二人はカップルでしょうか?」


「い、いや、そう言うのでは―――」


「ち、違い―――」


二人で否定しようとしたところ、


「現在当店ではカップル割というキャンペーンを行っておりまして、なんとカップルで家電をご購入された場合、二割引で商品を提供しているのですが……」


「に、二割引……」


直矢の顔が変わり、何やらブツブツと数字を呟いている。恐らく浮く金の計算をしているのだろう。


「か、楓……」


申し訳なさそうな顔でこっちを見る直矢。


「え、えっと、私たち、カップルです!」


直矢の意図を察し、発言しながら直矢の腕に抱きつく。


「ッ! あ、ああ。俺たち実はカップルで……」


直矢も腹を決めたのかカップルであると言う。


「そうですか、良かったです! ただ、割引するには条件がありまして……お客様を疑うわけではないのですが、カップルである証明としてとあることをしていただきたくてですね……」


「「とあること?」」


キスしろとか言わないよな? 流石にキツいぞ。


「はい。このTシャツを着て帰っていただきたくてですね。」


渡されたのはピンク地に白文字でOYODOと書かれ、その隣にハートマークが書かれたTシャツ。


「これはいわゆる……ペアルック?」


これ着なきゃならんのか……? あまりにも恥ずかしい……


「はい。ペアルックの洋服はかなり目立つので、その服で宣伝をして頂こうというキャンペーンでございます。」


「え、えーと……」


一度カップルのフリをした立場上、やっぱり違います、とも言いづらい。単にペアルックはちょっと、と言うのでもいいが、やはり高い買い物の二割は大きい。できれば割引してもらいたいが……


と、考えながら直矢の方を見ると、


「う、む……」


同じように悩んでいた。


でもこれから世話になるし……よし!


「えっと、直矢が良ければ、だけど……私は、着てもいい、よ……?」


「……そうだな、少々恥ずかしいが家までだからな。悪いが楓、我慢してくれ。」


覚悟を決めた目で直矢が言う。


道中知り合いに会いませんように……

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