表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/51

体に良い悪いとか法律がどうの以前に高くない?

なんやかんや話しているうちに学校へと着いた。


「そういえば、私たちは実際には固まって動くわけだけど、元はどういう関係ってことにするの? 前から何かしらで知り合いだったことにするの? それとも初対面で気があったとか?」


と聞くと、ああそれか、と直矢が答える。


「親同士が知り合いでたまに遊んでいたということにするらしい。まあ、前から知り合いだと言うことにすることだけ分かっていればいいだろう。内容はさして重要じゃない。後、エディは帰国子女ということにするそうだ。まあ、言語に関しては澄也以上だし、妥当だな。」


「了解ー。」


確かにそれぞれの返答を並べて矛盾しなければ内容は大して問題じゃないのかもしれない。


なんて話しながら校門をくぐると、


「はい、新入生はこっちだぞー。」


と誘導をするハゲゴリ先生が。


「お前らは一昨日の……知っているかもしれないが、あっちが体育館だ。お前たちには体育館脇の通路で並んでもらう。体育館脇まで行ったら担当のものの指示に従うように。」


「はい、分かりました。おはようございます。えっとー……」


名前が分からない。兄貴はともかく姉貴はなんて呼んでいたっけか。ハゲゴリのインパクトが強すぎて忘れてしまった。


若槻わかつき 鉄男てつおだ。若槻性の教師は俺を含め二人いるので鉄男先生と呼ぶように。」


「分かりました鉄男先生。」


兄貴と違って俺は真面目なのであんな呼び方はしない。


「ところで、俺は生活指導担当だ。真面目な生徒ならいいが、校則を破るようなら容赦はしないので覚えておくように。」


「分かりましたー。」


そう答えて、順路に沿って進む。


「生徒の間で定着してるのかな? あのあだ名。」


と澄也。


「知らん。ともかく目をつけられるようなことはするなよ。校則を破って湯葉生活になるのはゴメンだ。」


と直矢。


その通りだ。


「しっかし生活指導ねー。懐かしい響きだ。あ、となるとコレはまずいか。」


と、澄也が取り出したのは見慣れない言語が書かれたタバコの箱。


「お前……高校生の自覚あるのか? とりあえず誰かに見られる前に仕舞え。」


はぁ、と額に手を当てる直矢。


幸い時間が早めで周りに人はいなかったので見られたということはないはずだ。


「澄也ってそのー……吸うんだ?」


誰に聞かれるとも分からないのでタバコという言葉は出さずに聞く。


タバコはおっさんのものというイメージがあるから、意外だ。


「まあねー。普通のやつの味は苦手なんだけどコレの味は気に入ってね。まあ明日からは持ってこないことにするよ。」


「ソレそのものをやめろ。健康にも悪いし臭いでバレたら洒落にならん。」


と直矢。


「そんなー。俺、歴結構あるし、そう簡単には―――」


と澄也が話しているところに、


「僕もやめた方がいいと思います! 正直それをするところだけは澄也さん嫌いです!」


エディが割り込む。


「うーん……エディちゃんにそこまで言われちゃ、やめざるを得ないかー……頑張ってやめるよ。」


参ったな、と髪をかきあげる澄也。


「さてと、椅子に座るんだったな。」


どの辺だ、と皆で辺りを見回していると、


「新入生の方は―――って楓じゃない! 昨日も見たけど制服似合ってるわねー! これプリントね。式が始まる前に読み込んでおいて。新入生はクラス表に従ってあっちら辺の担任の先生のところに集まって。プラカード持った先生が待ってるから。」


姉貴がいた。


「了解、ありがと。」


と資料を受け取りながら答えると、


「ありがとうございます!」


とエディ、


「どうも。」


と直矢、


「案内どうもー。」


と澄也、が続いた。


「そういえば、澄也って姉貴に対してはあまり美人だとか言わないよね。」


言われた方向に進み、姉貴が十分離れた後に澄也に聞く。


母さんには言う癖に。


タイプではないのか?


「あー、そうだね。確かに美人だと思うんだけど、何故かそそられないんだよねー。なんでだろう。」


うーん、と腕を組む澄也。


もしかしたら姉貴の変態性をどこかで感じ取っているのかもしれない。


と考えていると、


「クラスは1-Aだそうだ。こっちで調整してあるから当然全員同じクラスだぞ。」


書類を呼んでいた直矢が言った。


「担任は史田しだ 光一こういち先生だって。男か、残念。」


と澄也。


お前はどこまで女の尻を追いかけるつもりなんだ。


「担任っていうと、勉強以外の大体を受け持つ先生のことですよね!」


「そうそう。よく調べてるね、エディちゃん。」


とエディを褒める澄也。


「で、A組、A組……Aのプラカードなんて持っているやついるか?」


直矢が辺りを見回して言う。


「んー……いないね。」


BもCもDもその先もいるが、Aはいない。


「すいません、Aの先生ってどこにいますか?」


エディがCのプラカードを持った目つきの悪い女の先生に聞く。


「ん? ああ、お前ら新入生か。Aって言うと史田だけど―――ホントだ、いない。アイツまたサボって……待ってな、今連れてくるから。」


ったく、と呟きながらどこかへ行くCの先生。


「“また“って言ったな。」


と直矢。


「言ったね。」


サボり常習犯……? 教師が……?


「ま、担任はユルい方が僕はやりやすくていいけどねー。」


と澄也。


「お仕事は真面目にやらなきゃダメだと思います!」


「いやー、適度にサボるのも必要だと思うけどねー。」


とエディの発言に答える澄也。


「お前はサボり過ぎだけどな。」


「堅いこと言うなよー。仕事はしっかりこなしてるんだからさー。」


と澄也。


「……まあ、これ以上言い合っても益はなさそうだし、それでいいことにしてやろう……仕事をしているのは本当だからな。」


なんて話していると、


「おーうお待たせ。コイツがお前らの担任だ。」


Cの先生が男を連れて戻ってきた。目が死んでいて、シャツはヨレヨレのいかにもやる気がありませんと言った風の男だ。


というか、


「タバコくさっ!」


一本程度じゃこんなに臭くならないでしょ! 周りに喫煙者はいないから分からないけど。


「仕事をサボってタバコ吸ってたのか……」


教師として最悪だな、と直矢。


「あー……悪い悪い、まだ生徒は来ないかと思っててな……あ、このことは他の生徒には秘密―――いやまあいいか。そのうちバレるし。」


隠してても仕方ないからなー、と呟く史田先生。


ダメなのは100歩譲っていいとしてもそれを隠す努力くらいはしたらどうなんだ……?


「ま、その辺で適当に待ってくれ。ああ、そうだ。他の生徒が来たら名前順に並べといてくれるか? 男女別で。あ、名簿のチェックも忘れずに。こんな時間に来るなんて真面目なんだろうし、いいだろ? そのくらい。俺は時間になったら戻るから。」


そいじゃー、とどこかへ去ろうとする史田。しかしCの先生がめざとく見つけ、ドロップキック。そのまま何やら腕に関節技を極めるCの先生。


なんだこの教師陣……


「……並べる?」


一応言われたし、恐らく本来の係である史田は関節技極められてるし。


「……まあ、顔を覚えてもらうには丁度いいだろうし、やってやるか。」


と直矢。


「あ、僕パスね。面倒臭そうだし。」


と澄也が言うと、


「お前もああなりたいか?」


と顎で史田を指す直矢。


目が怖い……


「やらせていただきます。」


即座に返す澄也。


「僕は何したらいいですか?」


とエディ。


どこかの眼鏡と違って真面目で偉い。


「そうだな……プラカードを持つ人間がいないから、プラカードを持ってA組の人間を集めてくれ。俺が男子の整列を担当する。楓は女子の整列、澄也は名簿のチェックを頼む。」


という直矢の言葉に、


「りょーかいです!」


とエディ。


「はいはーい。」


と澄也。


「分かった。」


と俺も答える。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆


先ほどから20分ほど経って、かなり人が多くなってきた。


「えーと、茂垣もがきさんね。えーと、後ろの方なんだけど……この人とこの人の間ね。澄也、茂垣さんだって。」


「はーい。うん、女子はこれで全員揃ったね。」


と仕事をこなしていると、


「ねえ。」


前の方の女子に声をかけられる。この人は確か……古田島こたじまさん。ボブの可愛い女の子だ。


「えっと、何かあった?」


順番でも間違えたか?


「なんで、えーと……」


「楓。新条楓って言います。新条が苗字の生徒はとりあえずこのクラスに二人いるから呼ぶなら下の名前で。」


エディが新条エディなので。


「えっとじゃあ、楓ちゃん。なんで楓ちゃんとかが整列させてるの?」


と古田島さん。当然の質問だ。


「えーっと、先生に頼まれたから、かなー。」


「じゃあ先生は?」


「アレ。」


口の空いた跳び箱に頭から刺さっているAを指さす。


どうしてああなった。


「え、えぇー……」


若干引いた様子の古田島さん。


当然の反応だ。


と、史田の様子を見ていると、


「おい起きろ、そろそろ式の時間だぞ。」


直矢が史田に向けてヤクザキックを放つ。


「あ、あの人先生のこと蹴ってるけど……」


「あー……まあ、やられても仕方ないかなって思うなー……」


生徒に自分の仕事丸投げして跳び箱に刺さりっぱなしだからな。


「えー……いや、えー……どうなのかなー……?」


やっぱり先生を蹴るのは……と戸惑う古田島さん。


まあそのうち史田のダメ人間っぷりが露呈して納得するようになるだろう。


「いてて……俺ももう若くないから、蹴るのは勘弁してくれ……おっ、やってくれたのか。どうもありがとう。いやー、助かった助かった。えー、お前ら、俺がお前らの担任の史田光一です。まあ詳しい自己紹介は後でするのでとりあえず名前だけ把握しといてくれ。名簿チェックした? 全員いるのな? じゃ、体育館へ入るので並び順崩さずに俺についてくるようにー。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ