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ブラウスは透ける。

「「ただいまー。」」「ただいまですー。」


家に帰ってきた。


リビングに入ると部屋にいたのは母さんだけ。


「お帰りなさい。その鞄はどうしたの?」


制服の入った鞄を指して言う母さん。


「ああこれ? なんか、直矢に鞄と制服もらったんだ。」


「あらいいじゃない! 着て見せてくれない?」


「……まあ、試着はするように言われてるし明日から嫌でも見せることになるからいいけどさぁ。」


人を着せ替え人形にして楽しむ文化はやめてほしい。


「なんだ、それ制服なのか。俺も見たい!」


と兄貴。


「早速着ましょう楓さん!」


とエディ。


「じゃ、着てくるわ。」


母さんと兄貴にひらひら手を振って自室へと向かう。


「着てきます!」


と言い、付いて来るエディ。


「じゃあな母ちゃん。」


と言い、付いて来る兄貴―――って、


「兄貴は付いて来るな!」


全力のビンタを叩き込む。


しれっと付いて来ようとするな。


「おお、意外といいビンタするなぁ。ま、でも何かあったら俺を呼べよ。」


親指を立てて笑う兄貴。


いいビンタと言いながら全く効いた様子がない辺り兄貴の言う通り何かあったら自分の力ではなんとかならなりはしないのだろう。


「……まあ、兄貴は戦闘力だけは信用できるからな。何かあったらその時はよろしく。」


頭脳面はアテにならないからなー。


「おう! ……だけは?」


「さ、エディ、行こう。」


兄貴が言葉の裏に気付く前に。


階段を登って部屋へ入る。


「さて、と。えーっと、中は……」


ブラウスにスカート、ブレザー、リボンといった普通の制服だ。


「まずは上から―――っと、このままじゃマズいか。」


Tシャツを生で着てたことを思い出す。姉貴から渡された服の入った段ボールを漁ってブラを探し出す。


「これでいいかな。さてブラウスを―――」


ボタンの開いたブラウスを羽織ろうとすると、


「あー、ダメですよ楓さん!」


とエディ。


「え、なんで?」


特にダメな要素は見当たらないけど。


「ブラウスの生地は薄いんです。ちゃんと下に何か着ないと透けちゃいますよ!」


「あぁー、なるほど。」


盲点だった。


確かにそれは嫌だな。


「じゃあ何着たらいいの?」


「そうですねー。キャミソールとか、ブラタンクトップとかですかねー。」


「キャミソールって今朝俺が着てたヤツでしょ? アレとタンクトップの違いってよく分からないんだけど……」


何が違うんだろう。


「そうですね、人によって区別の仕方は違うと思うんですけど、肩紐が細いのがキャミ、太いのがタンクトップ、ってイメージですかねー。楓さんの言うように、結構違いは曖昧ですねー。透け防止ならタンクトップがいいと思います。色は肌と近い色のベージュとかだと肌に馴染むのでオススメです! あ、でも楓さんは肌白いですし、もう少し明るい色でもいいと思いますけど。」


「なるほど。ベージュかそれより明るい色のタンクトップね。肩紐太いヤツ。」


「はい!」


「あるかなぁ……」


再び段ボールの中を漁る。


「あ、これはどう?」


白いタンクトップを見つけたのでエディに見せる。


「いいですね! これで行きましょう! 僕の分は適当に―――えいっ!」


エディが空に手を伸ばすと、そこには俺のと似たタンクトップが。


「前から思ってたんだけどさ、エディ、服はよく力で出すけどあまり力は使っちゃいけないんじゃなかったの?」


「僕限定で、加えて衣類を出すこと限定ですけど、ほとんど力の蓄えを使わずに使えるんですよ! ホントは楓さんのお洋服を出すためなんですけど、意外とお洋服充実していたので、あまりその使い方はせずに済んだんですけどね。」


「ふーん。まあいいや、そしたらこれを着て、と。このリボンはえっと……後ろで留めるのか。」


チョーカーのような方式のリボンを首につける。


「スカートは他のと着方変わらないよね?」


「そうですね―――はい、それで問題ないと思います。」


スカートをチェックして答えるエディ。


それなら、とスカートを着る。


「意外と短いな……」


膝上数センチといったところ。さっきまで着ていたものに比べれば長いが、中学の頃女子が着ていたものを思い浮かべると若干短い印象。


「そうでもないですよ。こっちの世界に来る前に制服を調べましたけど、大体このくらいでしたよ。」


「ふーん。」


まあそういうものなのだろう。


「最後にブレザーを羽織って、これでいいのかな?」


ブレザーのボタンを留めてエディに聞く。


「はい、多分大丈夫です! そしたらお二人に見せに行きましょう!」


早く早く、と同じく制服を着終えたエディが急かす。


「あー……うん、そうだね。」


やはりあまり気は進まないが、明日からは嫌でも見せることになるワケだし、仕方ないと割り切って部屋を出る。


「……どうかな?」


母さんと兄貴の前に立ち、聞いてみる。


「あらー、可愛いじゃない! すごい似合ってるわよ!」


と母さん。


「おおー、滅茶苦茶イイじゃねーか! 母ちゃん、カメラ! 一緒に撮ってくれ!」


と兄貴。


「撮るのはいいけど、私も一緒に入りたいわー。タイマーにして皆で撮りましょう!」


「僕が撮りますよ!」


とエディが言うと、


「エディちゃんも入るのよ。一緒に住むんだから、思い出に残さないと。」


と返す母さん。そのままカメラを取りに行く。


「……楓、タイマーの設定の仕方分かる?」


戻ってきてしばらくデジカメと格闘していた母さんだが、諦めて俺に聞いてくる。


「えー? えーっと、多分ここをこうして……こうじゃない?」


渡されたカメラを適当にいじってそれっぽい項目を選んで母さんに返す。


「ありがとう楓。そしたら、カメラを置くのは―――テーブルの上でいいかしらね。写真は今勇牙がいる場所で撮りましょう。皆集まって。」


言われた通り兄貴のいた場所に集まる。


「そしたらタイマーセットして―――はい、皆撮るわよ!」


母さんが素早く皆が集まった場所に移動する。


「イエーイ!」


兄貴が両手でピースをしてポーズをとる。


「ピースです!」


エディもそれに続き、ピースをする。


「ほら、楓も。」


「えー。い、いえーい?」


母さんに促されて俺もピースする。


カシャッ。


シャッター音を聞いて、母さんが写真を確認する。


「うん、いいわね。楓の表情が少し固いけど、明日も撮るしこれで良しとしましょう。」


「え、明日も撮るの……?」


写真撮られるの結構恥ずかしいんだけどな……


「もちろんよ! 子供の入学式だもの、写真撮らない方が珍しいわよ!」


「あっそう……」


母さんの表情を見るに確定事項らしく、俺が何を言っても覆らないだろう事を察したのでこれ以上は言わないことにする。


まあ、確かに入学式こそ写真の撮り時ってのは納得できるし、仕方ないか……


「そうそう。」


と母さん。


「何?」


「これ、エディちゃんの分の課題。明後日までにやっといてね、って冬士が届けてきたわ。」


「あー、課題……」


すっかり忘れていたが確かにそんなものが出ていた。入学するならやっておけと言うことなのだろう。


「エディ、勉強得意?」


「んー……学校の勉強ってどういうことを勉強するんです?」


「そこからか……」


道のりは長そうだ……


 ◇◆◇◆◇◆◇◆


「―――と、後は数学と英語だね。他にも色々あるけどとりあえず課題出てるのはこの教科。」


「なるほどー。歴史と社会制度は知ってるし、英語も話せます! 数学?はあんまりよく分からないですけど……国語も漢字は苦手ですけど話すのはできるので多分大丈夫! いけますよ楓さん!」


「それならよかった。分からなかったら言ってくれれば分かる範囲で教えるよ。」


「はい、よろしくお願いします!」


「さて、俺はゲームでもするかな。」


携帯ゲーム機の電源を点け、ゲームを起動する。


しばらくやってなかったけど先のストーリーが気になっているので休みのうちに進めたい。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆


「ふんふーん。ここはこうで……えーっと、楓さん、辞書あります? 綴りが分からなくて……」


鼻歌を歌いながら英語の課題を解くエディ。英語が話せると言うのは本当らしく、スイスイ進めている。


「和英でいい?」


「和英って言うと、日本語から英語を引く辞書ですよね。はい、それでお願いします!」


「それなら部屋にあるから取ってくるよ。」


自室に行って和英辞典を取ってくる。


「はい。英語、得意なんだね。」


「ええ! 大抵の言語は話せますよ! そういう係だったので! ただ、文章を書く経験はあまりなくて、会話はできるんですけど、読み書きは少し苦手ですねー。」


「すごいな。それってカミサマとしての仕事での係?」


「はい。現地の世界の住人とコミュニケーションをとるのが僕の仕事でした! 報告書とか書面の文字は見た人間の第一言語に翻訳されるシステムがあったので読むのはそれですし、僕の第一言語は天界語だったので読み書きを他言語でしたことはあまりなくて……」


「話す言葉を自動翻訳するのはできなかったの?」


カミサマの能力で。万能なはずだけど。


「常に起動するタイプの能力は燃費が悪くて、あまり使うなって言われてるんですよね。なので、直矢さんや澄也さんと現地のコミュニケーションは僕が間に入ってました!」


「なるほどー。」


思っているより万能でもないらしい。


「えーと、これはこうだから……できました! これでいいんですかね?」


終わったらしい英語の課題を見せてくる。


「んー……俺英語は得意じゃないから分からないけど、合ってるんじゃない? 後で姉貴に聞けばいいと思うよ。というか早かったね。」


俺の半分の時間で終わってるような。


「英語は得意なので!」


「そうなんだ。次は何やるの?」


「国語にします! 言語だからバッチリですよ!」

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