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最悪の共演

「やあやあ皆、呼んだかい!? 呼ばれてなくても参上しました、どうも最高神でーす!」


ポップなエフェクトと共に最高神が現れた。


最低の二人の共演だ……


「呼んでねーぞ帰れ。」


眉間のしわを更に深くした直矢が冷たく言い放つ。


……これ以上直矢のしわが深くなった直矢の頭は割れてしまうのでは?


「まあまあそう言わずに直矢クン! いやぁ、最高シンサマにお目にかかれるとは、ボクは幸運だなぁ! しかし、カミサマの中で一番位の高いであろう最高シンサマがこんな子供の姿だったとはね! まあ、カミサマなら見た目はどうとでもなる、ということなのだろうけど! それで、このタイミングで出てきたということは、立会人になってくれるということでよろしいのかな?」


冬士さんがまくしたてる。


「もちろんだとも! そのためにわざわざ来たんだから! さあ直矢君、誓約書にサインしたまえ!」


「嫌だが。」


「上司としての命令だ、サインしたまえ!」


パワハラにも程がある……


「……ったく仕方ねえ、お前ら腹くくれ。コイツが来た以上、俺たちにサインしない選択肢は無くなった。」


ため息をつきながら直矢が言う。


「あ、澄也君、こっそり誓約を抜けるコード組んでも無駄だよー。僕が本気になったら抜け道なんか一切無いって、知ってるでしょ?」


「バレちゃいましたか……」


たははー、と言ってパソコンを閉じる澄也。


「でも最高神様、なんでもってとっても怖いらしいですよ?」


とエディ。


「だからサインさせるんじゃないかー。」


ハッハッハと言う最高神。


最低だ……


「と、言うわけだ。皆サインしなさーい!」


最高神が俺たちの前の机に誓約書をビターン、と叩きつける。


「……本当に書いちゃうの?」


直矢に聞く。


「さっきも言ったがこのクソ野郎が現れた以上、俺たちに拒否権は無いぞ。これ以上ゴネても状況が悪くなるだけだ。」


そう言うとサラサラッ、と名前を書く直矢。


「ま、諦めが肝心な場面だってあるさ。」


と言って澄也も書く。


「とりあえずここに名前を書けばいいんですよね?」


澄也に確認して名前を書くエディ。


「あとは楓だけだよ? 皆サインしちゃったんだし、早くサインしちゃいなよ!」


と冬士さん。


完全に悪徳セールスのノリだ……


「そうそう! YOUやっチャイナ!」


いつの間にかサングラスをかけた最高神も参戦する。


……何なんだこの口調は。


「さあ!」「さあ!」「「さあ!」」


二人が迫ってくる。


「うう……」


「楓、ここは諦めろ。」


直矢に言われ、


「これで……」


サインしてしまった……俺も押しに弱いなぁ……


「じゃあボクもこっちの誓約書にサインして、これでどうだい?」


いつの間にか印刷していた誓約書にサインをして見せてくる冬士さん。


内容はというと、


誓約書 私はこれ以降校長としての給与の八割を新条高校へと寄付し、またその金銭は全て部費へと投じることを誓います。


とのこと。


「問題ない。」


と直矢。


「そしたらココに僕のハンコを押して、と。はい終了ー! また来るねー!」


バイビー、と謎の挨拶をして消える最高神。


「二度と来るな。」


と直矢。


「あちゃー、帰っちゃったかー。色々聞きたかったんだけどなぁ。」


「お前面倒臭いし絶対相手にされないからやめとけ。」


「そうなのかい? 残念だなぁ。面倒臭いと言われない会話法の練習でもしようかな。」


でも興味深いものを前に冷静でいるのは難しい……と顎に手を当てて悩む冬士さん。


面倒臭いのは否定しないんだ……


「さて、と。誓約の効力も確認したいし、キミたちにはある薬品を飲んでもらおう!」


ちょっと待っていてね、と冬士さんが後ろの部屋へ入る。


「……どう考えてもヤバそうだけど、逃げちゃう?」


まだ間に合うのでは?


「いや、部屋を出ようと思って席を立とうとすると、どう頑張っても立てなくなる。」


と直矢。


間に合わないらしい。


「僕は実験体というより実験をする側の方が似合うと思うんだけどなぁ。」


はぁ、とため息をつく澄也。


「お薬、苦くないといいんですけど……」


と相変わらず的外れなエディ。


「はいお待たせー。どの色を飲むかは選ばせてあげよう。ボクは器が大きいからね!」


冬士さんがお盆の上にカラフルな液体の入ったビーカーを乗せてやってきた。


ピンク、水色、黄緑、黄色。そしてその全てが微妙に発光している。


およそ、人間の飲むモノとは思えない色だ。


「お前、これを飲めって、本気か……?」


ドン引きした顔で言う直矢。


正しい反応だ。


こんな色の液体を人間に飲ませるのを強制するなんてまともな人間のやることじゃない。


「ああ、安心してくれたまえ。十中八九致死性はないさ。」


「一割二割の確率で俺たち死ぬの!?」


命に関わることはさせないってさっき言ってなかった!?


「ああ、安心したまえ。この天才がここにいるんだ、すぐさま解毒薬を用意して投与するから万が一にも死ぬことはないさ。」


「なら先に解毒薬を用意してだな……」


直矢が疲れた顔で言う。


「いや、だってどんなの用意したらいいか分からないし。実際の反応を見ないことにはねー。」


これだから素人は、なんて言う冬士さん。


「こいつ殴っていいか?」


急に真顔になって言う直矢。


「堪えて堪えて!」


冬士さんも誓約書を書いたから約束を反故にはできないけど、冬士さんと関係が悪くなるのはデメリットしかないからやめて!


「誓約書にサインしてしまった以上、飲むしかないわけだけど……まあここはレディファーストということで、エディちゃん、楓ちゃん、先に選んでもいいよ。」


「じゃあ僕、ピンクで!」


「黄色かな……」


まだ食べ物飲み物の域だ。……8割くらい外れてるけど。


「直矢は?」


「水色にするかな……」


「てことは僕は黄緑だ。」


皆で目配せしてよし飲むぞ、と意気込んだところ、


「あー待って待って、検体の採取を忘れていたよ! 綿棒で口の内側の細胞をこそぎ取ってくれたまえ。終わったらそれぞれのシャーレに。」


綿棒とシャーレを渡される。


「全く、言うのが遅いぞ。」


直矢がボヤきながら言われた作業をする。


「そういえば、昨日の僕の細胞はどうでした?」


と澄也。


「ああ、アレね。驚くべきことに、未確認の物質が発見されたよ! 今回の薬はその成分をてきと―――いや、適切に加工したものでねー。」


今適当とか言いかけなかったか?


「さて、細胞の採取も終わったね? なら早く薬を飲みたまえ!」


早く早く、と今度は急かす冬士さん。


自分勝手な人間だ……


「……一気に行くぞ。」


「うん。」

「おっけー。」

「はい!」


直矢の声に三人それぞれ返事をし、


ゴクッ


ビーカーの中を一気に飲んだ。


そして、ビーカーの中身を飲み干すと同時に体が熱くなってくる。


「なんか、熱い……?」


呟くと、


「俺は寒い。」


「僕も寒いです!」


「僕は熱いなー。」


とそれぞれ言う。


どうやら俺と澄也は熱く、直矢とエディは寒く、と言ったふうに反応が二分化されたみたいだ。


「ほうほう、なるほどなるほど……」


冬士さんは熱心にメモを取る。


と、いうところで激しい目眩に襲われた。


「うぅん……」


目眩から立ち直り、周りを見渡すと、色々変わっていた。


まず胸。大きくなったらしく、胸が重い。豊胸剤でも飲まされた?


そして俺以外の三人はというと、


服だけ残して直矢はいなくなり、澄也は昨日程ではないが大人に。エディのいた場所にはエディと同じ金髪赤眼の何故かエディの服を身に纏った小さな女の子(5歳くらい?)がいた。


「えーと……澄也、だよね?」


「そういう君は楓ちゃんで合ってる……のかな?」


お互いに声を掛け合う。


「うん。……俺の姿、変わってる?」


「大人になってるね。その、服と成長した体が相まってとてもセクシーだね。昨日の直矢も凄かったけど、それとは別ベクトルに色っぽいよ。素晴らしい!」


拍手をする澄也。


……ちょっと鏡を見てみたくなってきたな。


なんてしていると、


エディに似た女の子が澄也の足に抱きつき、こっちを威嚇するように頬を膨らませる。


可愛いな。


「えーっと君は……もしかしてエディちゃん?」


と澄也が聞くと、


「はい! 僕エディ!」


と少々舌足らずな話し方で答えるエディ。


小さくなったのか。


「……エディちゃん、歳は何歳?」


「5歳だよ!」


「……精神丸ごと幼児化、か。ところでエディちゃん、なんでこのお姉さんに怒ってるのかな?」


しゃがんでエディと目線を合わせて言う澄也。


「澄也さんのお嫁さんになるのは僕だから! ウワキはダメ!」


更にギュッ、と澄也の足に抱きつく澄也。


「ッ! ……これ、元の人格の本音だったりするかなぁ……?」


若干動揺した顔で眼鏡を直す澄也。

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