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姉貴は手段を選ばない

「で、アレだったな、生徒会選挙の話。」


いつの間にかナース服に着替えていたエディに頭の包帯を巻いてもらいながら直矢が言う。


ちなみに兄貴の包帯は俺が巻いた。


「そうだったそうだった。姉貴、生徒会選挙の仕組みについて教えてもらってもいい?」


「ああ、そんな話してたわね。えーとまずは仕組みなんだけれど、まず選挙で決めるのは会長のみ! 残りの役職は会長の指名で決まるわ。だから、生徒会に入りたい人は、入りたい人同士で固まって、より受かりそうな人を立候補者として、それ以外の人は推薦者って形で協力したりするのよ。立候補者は推薦者に選挙活動を手伝ってもらって、推薦者はその見返りとして立候補者が受かった後、指名してもらって他の役職として生徒会に入ると。だからうちの生徒会選挙、グループ戦みたいな形になるのよね。」


「へぇー。」


グループ戦か。堂々と直矢達と手を組めるのはありがたいな。


「で、さっきも聞いたけど生徒会選挙、出るのよね?」


「うん。ちょっと事情があって……」


「まあ事情については聞かないけど、一年生がなるのは中々ハードよ? 私だって会長職は二年からだし。」


「それも重々承知だよ。ただ事情が事情なもんで。」


三カ月湯葉生活は地獄以外の何物でもないからな。


「そうなのね。生徒会のメンバーは最大で会長、副会長、会計、書記、庶務の5人で構成されるわ。メンバーはいるの?」


「直矢達カミサマ三人衆に頼もうかと。」


一人足りないけどまあなんとかなるだろ。


「そう、分かったわ。―――ん? 誰かの声……頭の中で声が……」


突然頭を抱える姉さん。


「大丈夫か姉貴!」


兄貴が駆け寄る。


すると、


「天啓を得たわ。」


いやにスッキリとした顔で姉貴が立ち上がった。


「は?」


戸惑う俺をよそに


あちゃー、といった顔で頭に手を当てる直矢と澄也。


エディはポカンとしているが。


「私、新条 光花は、生徒会選挙に、出馬します!」


「えええ!?」


困る! めっちゃ困る! 姉貴は性格というか性癖というかがちょっとアレなだけで世間からすれば才色兼備、文武両道なスーパーウーマンだ。しかも前会長で、更に生徒会役員を指名せず一人で生徒会の運営をしていたとかなんとかと聞く。


……入学したばかりの一年生が対抗できる相手じゃない。


「天啓は最高神からだろ。何て言ってた?」


不機嫌そうに直矢が聞く。


「ええ、最高神と名乗っていたわ。内容は、生徒会選挙に無事当選した暁には、楓を一日好きにさせてくれるとのことよ。何故か嘘とかニセモノって感じがしなくて不思議だけど、ともかくこんな可愛い楓を一日中好きにできるなんてたまらないわ! ということで、私は生徒会選挙に出馬します。楓達には悪いけど勝たせて貰うわ。」


「参ったな……アイツの性格が悪いのは今に始まった事じゃ無いが、こんな妨害をしてくるとは……いや、アイツに限って妨害してこない方がおかしいか……」


頭を抱える直矢。


「仕方ない、本格的に当選のためのプランを立てなければいけなさそうだな。今日……はもう遅いから、明日話し合おう。俺達はこの後家を借りるから、そこで話し合おう。明日の朝迎えに行く。」


と立ち直った直矢が言う。


「朝……朝かぁ……」


朝弱いんだよなぁ。ぶっちゃけ昼からがいい。


「ああ、お前、朝弱いんだったな。だがまあ、事情が事情だ。時間は……無いのか?」


そういえば期間を聞いてなかった。


「姉貴、選挙の日程ってどうなってるの?」


「うーん……」


質問をしたが、唸るだけの姉貴。


「もしかして知らない?」


「え? いや、知ってるわよ? ただ……」


顎に手を当てて首をかしげる姉貴。


「ただ?」


何か問題が?


「姉貴、って可愛くないわよね……」


深刻そうに呟く姉貴。


「は?」


正直何を言ってるのかよく分からない。


「いや、ちょっと突っ張ってる女の子も可愛いのよ? ええ、そこは否定しないわ、それはそれで可愛い。ええ。ただね、今はちょっと違うのかなというか……私の好みと気分の問題ではあるのだけれど……」


「……つまり何が言いたいの?」


面倒なにおいがプンプンするけど。


「私は、楓にお姉ちゃんって呼ばれたい!」


「……はい?」


話の脈絡が繋がって無くないか?


「あ、俺も俺も! お兄ちゃんって呼ばれたい!」


はいはい!と兄貴が手を挙げる。


「勇牙は黙ってて。」


「あ、はい……」


姉貴の冷たい一言が突き刺さり、すごすごと退散する兄貴。……少し、いや、結構可哀そうだ。


「ともかく、私は楓にお姉ちゃんって呼ばれたいの。そして楓は選挙の情報が欲しい。……あとは分かるわね?」


「……」


そこまでして呼ばれたいのかこの人は……


お姉ちゃんなんて呼び方ここ5年はしていない。いや、別にしてもいいんだけど姉貴にして欲しいと言われると逆にしたくなくなるというか……


「つまり……どういうことなんだ?」


兄貴が直矢に聞く。直矢がマジかこいつという表情をしつつ説明をしている。


……やっぱ兄貴、アホなんだなぁ。


「さあ、楓、早く! もう待ちきれないわ!」


まるで何かを受け止めるかのように両手を広げる姉貴。


「……」


呼ぶこと自体は構わないけど姉貴の思い通りに行動することが腹立たしくて呼ぶのをためらわせる。


「えーと、選挙期間が4/5~4/9、選挙が4/12。ですよね? お姉さん。」


いつの間にやら取り出したノートパソコンでカタカタ何かをしながら姉貴に聞く澄也。


どうやって知ったのか分からないけどナイス澄也!


「さあ、どうかしら?」


澄也の言ったことなんか全く合っていないといった風の姉貴。まるで本当に澄也がデタラメを言っていたかのような気さえしてくる。


「はい真実の魔法ー。あなたはこれから本当のことしか口にできず、僕の質問には絶対答えなければなりませーん。僕の言った日程は合っていますか?」


人差し指を立ててくるくる回しながら言う澄也。


……神の力?


「ええ、合っているわ。嘘、なんで私……」


答えるのが当たり前かのようにサラッと答えてから口を押さえる姉貴。


どうやら神の力を使ったらしい。でも、選挙に関することでの能力の使用は制限されているんじゃ?


「はいどうもありがとうございまーす。女性に何かを強要するってのは僕のポリシーに反するけど、同じことをしてるんじゃしょうがないですよねー。」


やれやれ、と両手の平を上にあげる澄也。


「……それに関しては何も言うつもりはないけど、何故分かったのかしら? 年間予定表はネットに上がったりはしてないはずだけど……そのカミサマの力で分かるならそもそも私に聞く必要もないし。」


「仰る通り。僕たちのカミサマとしての能力はこの生徒会選挙においてほとんど使えません。カミサマとしての能力はね。」


「……どういうこと?」


「僕たちの人間としての能力はそのままということですよ。自分で言うのも何ですが、僕はパソコンをいじるのが得意でして。それに加えて今はちょうど学校にいて校内のネットワークにもアクセスできる。それなら、学校内のPCにアクセスすることだって可能だ。」


「まさか、学校のパソコンにハッキングを……?」


「まあ、有り体に言えばそうなりますね。ああ、安心してください、生徒の個人情報は必要に迫られない限りは閲覧しませんので。」


必要になれば使うんだ……


「……褒められた行為じゃないのはお互い様って感じかしらね。まあいいわ、仕方ない。今回は諦めるわ。でも完全に諦めたわけじゃないわ! そうだ、生徒会長になった時に呼んでもらえば……」


フヒヒと笑う姉貴。


ますます当選しなければならなくなってきたな。


「ところで、神の力は生徒会選挙に関しては使えないんじゃなかったの? 姉貴に謎の魔法かけてたけど……」


自分で使えないって言ってたよな?


「ああ、それかい? 僕は飽くまで制限されていると言っただけで使えないとは一言も言ってないよ。さっきみたいな最後の答え合わせ程度なら使わせてもらえるのさ。」


「ふーん……」


ズルさが低ければ使ってもいいのか。


なるほど、と思っていると、


「おー皆チャオチャオー。あ、試合もう終わっちゃった? 残念だな、折角カミサマの闘う姿が生で見れると思ったのに。まあ後で監視カメラで見るさ。っと、アレ? キミ直矢君? あらら可愛くなっちゃってー、どういう風の吹き回し? ああ、そうそう、スプーンだけどね、少なくとも錬金術に関してはキミたち本物みたいだね、本物の金だったよ! いやぁ、実に興味深い!」


冬士さんがやってきた。

ストックが減って来てヤバいなと思っている今日この頃。

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