ある! 無い!
どうも、イガイガ栗(爆死神)です。あらすじにある通りこの作品は前に書いていた作品のリメイク作品となります。前の作品の更新を楽しみにしていただいていた方には申し訳ありませんが、話の整合性を保てなくなってきていたので、リメイクとさせていただきました。細かいことは活動報告に記していますが、ともかく一生懸命書きますので、楽しんでいただけると幸いです! とりあえず書き溜めておいた11話分+α(毎日投稿の間に書き上げたもの)を尽きるまで朝7時に毎日投稿していく予定です。皆さんの感想がとてもモチベーションに繋がるので、よければ感想の投稿をお願いします。投稿ペースが早くなります(マジ)。先程も書きましたが、一生懸命書きますので、よろしくお願いします! 長くなりましたが、どうぞ物語をお楽しみください。
「ふあぁ……ん?」
時刻は午後1時。春休みとしては普段通りの朝寝坊の起床。そう、時間だけは。
「なんだ……これ。」
体にまとわりつく見慣れない銀の毛束。
手繰り寄せると―――
「あ痛っ」
頭が引っ張られる。そして独特の痛み。
この情報を合わせて考えるにこれは―――俺の髪の毛?
でもおかしい。俺は一般的な15歳の日本人男性であって俺の髪は黒いし長さだってとても背中まで届くなんてことはない。
それによく見るとなんだか手も違うような……指が細くてしわは少なく透き通るような肌の色―――端的に言えば女性的な手。
「なんだこれ!? え!?」
体をまさぐると胸元に柔らかい感触。これは俗にいう……おっぱいというやつでは?
ならばと股間を触ると―――
「無い。」
無いのだ。相棒が。息子が。
「嘘だろオイ!?」
携帯を探してカメラを起動。インカメに切り替えるとそこには―――
美少女がいた。
絹のようなキラキラした銀髪、雪のように白い綺麗な肌、宝石のように澄んでいて大きい碧眼、整った顔、華奢な体。そして胸にはわずかな膨らみがあり、この体が女であることを主張していた。
正直、相当な美少女だ。すごく可愛い。
「なんだこれは。」
夢の続きでも見ているのだろうか? これが夢なら結構楽しい状況ではある。なんと言ってもこんな可愛い体を誰も見ていない場所で好きにできるのだ。こんな楽しいことはない。
ただ問題は―――
これが夢じゃなかったら相当困るということだ。夢にしては意識がはっきりしているし痛みも感じた。髪の痛みだけじゃ確証が持てないと思い、手の甲をつねってみたがそっちでも普通に痛かった。
「まあいっか。」
二度寝モードへ移行。こんなことはありえないし、とりあえずまだ少し眠いので二度寝して後のことは後の俺に―――
クウゥー
と思ったが腹が減った。体が美少女なだけあって腹の虫も可愛い声をしている。
夢の中の食事を楽しむのも悪くない。家族のいるリビングへ向かおう。
「夢とはいえなんて言おうかな……」
まあ何も言わなくてもいいか。夢だし。
階段を下りてリビングへ。扉を開くと母さんと姉貴が食卓に。
「おはよう、母さん、姉貴。」
なるべく普通を装って挨拶。夢の中とはいえ平気で知らんぷりをするのも結構恥ずかしいというかなんというか。しかし改めて聞くと声も可愛いなこの体。
「あらー、思ってた倍可愛いわねー。流石、お姉ちゃんの弟……いえ、妹ね。」
「本当ねお母さん! これは着せ替えのしがいがあるわぁ!」
ワッと詰め寄ってくる両人。
「ねえ、新しい体になった気分はどう? いつもと違う? ちょっとドキドキしちゃったりした?」
「私より少し小柄ね……年齢かしら。お母さん、私の昔の服ってどこに仕舞っていたっけ?」
「え、ちょ、何二人とも。ドキドキなんかしないよ、というか俺の姿に驚かないのかよ? あと姉貴はどさくさに紛れて変なところを触るな。」
ちなみに姉さんはなんとなくソッチの気があるんじゃないかと思っていた。普段から可愛い女の子を見る目がおかしい。確信に変わりました。いやしかし人に尻触られるのってこんな気分なのか。
「だって、説明されたし、ねぇ?」
姉貴に同意を求める母さん。
「ええ。楓こそ自分の姿に驚かなかったの?」
姉さんに尋ねられる。
「いや驚いたけどさ……こんな有り得ないこと起きるわけないでしょ。夢だよ夢。」
自分の夢の中でこんなことを言っているというのも少し滑稽な気もするけど。
「残念ながら―――私にとっては幸運なことに、これは現実よ、楓。まあ、少なくとも私の中では。自分の存在が楓の夢の中の存在じゃないってことはちょっと証明しづらいけど、私の意識ははっきりしてるし記憶もしっかりあるもの。私の中では確実に現実よ。私は夢の中の登場人物がこんなこと言うとは思わないけど。それでも信じないなら手でもつねってあげようか? ああでもダメ、つねる程度とはいえ、こんな可愛い子に私が危害を加えるなんて。」
一人で葛藤する姉貴。
……薄々感じていたがこれはもしや……現実?
「……母さん、ちょっとつねってみてくれる?」
「いいわよ。―――はい。」
「痛たたっ! 強すぎるって!」
えらい強めにつねられた。白い肌が赤くなってしまった。
「そうかしら、普通にしたんだけど……でもこれで分かったでしょ? 楓にとっては少し残念だけどこれは現実なのよねー。まあ安心しなさいよ。高校3年間だけらしいし。」
と母さん。
「……それってさっき言ってた説明とやらが絡んでくる話?」
「ええ。というか楓は説明受けてないの?」
意外という顔をして言う姉貴。
説明なんてされてないが。
「俺は起きたらこうなってて夢だと思って飯食いに来たんだけど……」
「夢だと思ったのにご飯食べに来たの!? 可愛い過ぎ!」
ありがたやありがたやと俺に対して拝む姉さん。自分の弟相手に拝むな。
「あらそうなの。そしたらご飯食べながら説明しましょうか?」
「あーそれでお願い。目玉焼きがいいな。」
「かしこまりましたお嬢様ー。」
「母さん、お嬢様とか呼ぶのやめてくれる!?」
中身は男だぞ。
「うふふ。」
「まったく……というか二人はなんで俺が俺だってすぐ分かったの?」
面影0だぞ。
「まあ、説明されたのと、後は親だから、かしらねぇ?」
「私はお母さんが確信しているならそうだなって。」
「へぇー……」
そんなもんなんですねぇ……流石親というかなんというか。
呟きながらいつも通り自分でご飯をよそう。
「その量で大丈夫? いつもと違う体よ? あ! いやそのままでいいわ! あわよくば美少女の食べかけご飯が……」
「……」
フヒヒと若干、いやかなり気持ちの悪い笑い声をたてる姉貴を尻目に米の量を半分に減らす。ちなみにここだけ見ると姉さんはただの気持ち悪い人間だが、実際は身内びいき的なものを差し引いても美人で運動勉強なんでもできる才色兼備のスーパーウーマンである。まあ気持ち悪いか気持ち悪くないかでいったら100対0で気持ち悪いのだが。尻触られたし。
「で、説明って? どんな説明を? 誰に受けたの?」
「なんか、突然声が聞こえてね? 自分たちは神と天使で、訳あって楓の体を女性化しなくちゃならないから、説明のためにそっちに行くって言ってね。」
と母さん。
姉さんが続いて
「そしたらあの人たち部屋の中に瞬間移動してきたのよね。私も目を疑ったんだけど。男二人と美少女一人が突然目の前に現れて。そしたら―――」
◇◆◇◆◇◆◇◆
二人の説明を要約するとこうだ。
・三人組の内訳は神が一人に天使が二人。人相の悪い男が神で優男風の男と金髪の女の子が天使。
・上司(神に上司?)の命令で高校入学前の男の中の誰かを女体化しなくちゃならなくなって、選考の末選ばれたのがこの俺。
・女体化は高校三年間のみ。その後は男女どちらの体で生きるか選択する。(それ以降は死ぬまでそのまま)
・卒業後男の体に戻ることを選んだ場合周りの人の三年間の記憶はうまい具合に男としての俺の記憶と差し替える。
・体の違いに困ったりするだろうし詫びも兼ねて神天使三人組も一緒に入学。件の上司の命令に反さない範囲でなんでも言うことを聞く。
・戸籍等々問題になりそうなものは先に対処しておく。
それはそれとして本当に少食になっていた。いつもの半分でも割と苦しかったが姉さんに渡したくなかったので意地で食べた。満腹。
「話は分かった。とりあえず胡散臭いし110番しよう。」
瞬間移動とかされたり実際に俺の体が変化しちゃってたりすると信じちゃいそうになるがそれはそれとして。
「それが110番すると電話が羊羹になるようにされちゃってねー。」
「はぁ!?」
なんだそれは。
「結構美味しかったわー。」
「食ったの!?」
母さん、衝撃の発言。元電話だぞ。無機物。
「後で元に戻してくれるっていうし、丁度甘いものが食べたかったから……」
「私も食べたわ。」
「姉貴も!?」
美少女関連以外では基本超優秀なあの姉貴が!?
「あの子の太鼓判だったから!」
美少女関連だったかー。
「んじゃあ、直接交番に行こうよ。」
お巡りさんヘルプ!
「こんなこと言って信じてもらえるとでも?」
と姉貴。
その通り過ぎる。
「交番に行ったらお巡りさんが羊羹になっちゃうのかしら? それとも交番ごと? 流石に食べきれないわねー。」
「母さんは黙ってて。」
相変わらず母さんは言動が少しズレてる。
「でもよく了承したね?」
息子や弟の性が変えられるって相当だぞ?
「色々もらっちゃったしねー。」
「色々?」
モノに負ける俺の性って……
「代わりに欲しいものをくれるって言うから家電全部新しくしてもらったのよー。コードレス掃除機なんか元々持ってなかったのに貰っちゃったし。ホラ見て!」
真新しい掃除機を見せてくる母さん。
「そんなもので……」
「まあ、そもそも私たちが拒否したところで決定は変わらないから、お詫びの一環として、ってことらしいけどね。流石にモノで釣られて楓の体をいじくらせたりはしてないわ。」
「あ、そうなんだ。」
流石に、って感じか。良かった。
「姉貴は何貰ったの?」
「私? 私はこれ。」
見せられたのはデジカメ。
「デジカメ?」
頑張れば自分で買えそうなもんだけど。というか姉貴写真なんて撮るんだ。
「そうよ。それも最新式。動画も撮れるしタイマーモードとかセンサーでシャッターを切る機能とかその他色々ついてるの。普通のものなら自分で買えなくはないけどこれくらいになると流石に自分では買えなかったのよねー。これで美少女ピクチャーの収集が捗るわ……」
またもやフヒヒ笑いをし始める姉貴。
「なるほど……」
姉貴が盗撮とかに手を染めないことを願おう。手遅れかもしれないが。
「あとはこれね。」
ドン、と机に置かれたのは札束。それもパッと見じゃ数えられない数。
「えーと……これいくら?」
「一つ百万円で十五個で千五百万だって。フォローしきれない問題が起きたら対応できるものはこれで対応してくれって。カミサマって景気いいわねー。」
「本当だね。」
こんな大金初めて見た。
「本物か心配なんだけど、見る限りでは本物だしとりあえず分けて家に隠しておくわ。」
「銀行に入れないの?」
千五百万を家に置いておくのは諸々のリスクが大きすぎる。
「楓、こんな文字通り降って湧いたお金、しかもこの金額。こんなの銀行に預けたら税務署が飛んでくるわよ。」
「あー、そうなんだ……」
税務署か、考えもしなかった。
「ところで楓、ご飯食べ終わったわね?」
「見ての通り歯も磨き終わってるよ。」
「じゃあ……着替えましょう!」