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ヴィクティム・ゲーム(仮)  作者: みささぎうつほ
6/8

序 弐ノ三


 痛みはない。

 未だ五感の悉くを喪失している少女は、この特異な状況を知る手段すらない。

 声の主は、その手を……否、実体があるのかすら判別できない中で、少女の露出した血塗れの下腹部に、突き立てた指を思わせる窪みが4つ顕れ、間もなくその皮膚を、肉を穿った。

 出血は僅かだった。

 それが、少女の失血が常軌を逸しているせいか、将又、常軌を逸した奇跡を目の当たりにしているのか。

 言葉遊びに興じようと、応じる者などこの場にはいない。


 「さてと。

 置き場所にも個性が出るっぽいんだけど、君はどこかなあと……」


 突き刺さった五指は、少女の腹部を右に左に、浅く深く跳ね回る。

 何かを探しているような口ぶりとは裏腹に、それらは余りに淀みなく、そして子供の悪戯の様に無軌道だった。

 やがて飽きたと言わんばかりに、唐突に動きが止まると、5つの蠢きは程なく一点に向かい収束し始めた。


 「ああ、やっぱりここか。

 お邪魔するけど、仕方なくだよ?

 私だって嫌なんだからマジでさあ。」


 その一点、即ち少女の子宮に異物が侵入する。

 正規の門を破ることなく、侵し難きものを冒す指は、先ほどとは打って変わり、慎重に、儚きものを愛でるかの様に優しく肉壁を押し進むと、やがて硬質の物体を握りしめた。


 「うわっ、マジでありやんの。

 しかもこれ、中に全部揃ってんよねえ。

 24だぜえおい。

 24個も無理くりぶち込むとか、これだから下位世界の王ってのは……」


 声の主は深い溜め息を、その音だけを発すると、手にした硬質を力一杯に少女の身体から引き抜いた。


 瞬間、少女は弓反りになりその場に倒れ込んだ。


 「ぐっ……おおおおお……ああああああああ!!」


 全く意図せず、予兆もなく返却された痛覚は、容赦なく少女を蹂躙し、彼女は本来の声色とは似ても似つかぬ獣然とした慟哭を上げ、地面を転げ回る。


 「やっぱりこれが悪さしてた感じ?

 痛いっしょ?

 もうちょい辛抱ねっ。」


 血と涙でぼやけた少女の視界には、鮮やかな赤に染まった手を掲げる、軽薄そうな男の声で心配する女が立っていた。


 そして、天に向かい伸びた手の先で、拳大の直方体の金塊が鈍い光を放った。

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