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薄情者

作者: 八玲瓏

 なんか、つらい。

 何がつらいって言えるわけでは無いんだけど。

 なんかつらい。


 人間関係だろうか?

 別に、友達がいないわけじゃ無い。

 どちらかというと割とたくさんいる方なのかもしれない。

 最近だといつも一緒にいる友達とかもいるから、友達がいなくて悩んでるとかじゃない。


 じゃあ誰か嫌な奴がいるのかと言うと、確かにいる。

 でもなぜか不思議と嫌と言いつつもたぶん他の人より「嫌いさ」で言うなら薄いのだと思う。

 

 僕は基本的に人は嫌わずに来た。

 それは違う。

 僕は人を嫌いになる方法を忘れてしまったのかもしれない。

 なぜかどんなに嫌なことがあっても嫌いになれない。

 それは君が優しい性格だからとかってよく言われるけど。

 そんなんじゃ無いと思う。


 なんだか、薄いんだ。

 感情が、薄い。

 感動も薄い。

 たぶん友情とかも薄い。

 

 友達って言うのはたぶんあってる。

 いや、あってないと困る。

 ただ、たぶん僕は友達の肩を持てない。

 肩を持ったように見えてもたぶん上っ面だけ。

 

 自分の分の怒りとか、悲しみとか、そう言うのもたぶん薄い。

 そんなんだから、他人の痛みとか、分かっているはずが無い。

 きっと面倒とすら思っている。


 決心、だとか、決意とかも、たぶん薄い。


 学校で何か行事ごとの後に感想文を書かさせられる時に。

 何も書けないんだ、昔から。

 何も心に残ってないんだ。

 どんなに頑張っても、クラスが優勝したとかそういうのでも。

 なぜか何も書けない。


 みんな上っ面の言葉でも何かしら書けるのに、僕は何を書けばいいのか、わからない。


 なんだか、好きなことをやってても、嫌いなことをやってても、何も揺れないんだ。

 感情が、心が着いてこない。

 そんなことを話したら「大人だね」とかって言われたけど。

 違うと思う。


 感情が薄くなることが大人になるってことなら、それは、それはきっと悲しいことだ。

 だんだん感情の起伏が無くなって、好きか嫌いかの境目すら分からなくなって。

 だんだん世界の色が抜けていくことが成長なら。


 それはきっと夢が無い。

 楽しくない。


 じゃあ劇的な何かが欲しいかと言われると。

 なんか違う感じがする。

 人並みの感動が欲しいだけなんだ。

 皆が楽しいと言っていることを一緒に楽しいと純粋に言いたいんだ。

 そのための何かが足りない気がする。

 どこかで、決定的な物を失ってしまった気がする。


 どこで無くしたのかが分からない。

 もしかしたら、始めっからそんな物は存在しないのかもしれない。

 でもなんか足りないことだけは確かに分かる。


 たぶんこれを言葉にするなら、「まだ子供でいたかった」が正しいのだろうか。


 子供みたいに、何も考えずに、楽しんで、泣いて、怒って、騒いで、それが一番楽しいのかもしれない。


 そう思って一時期狂ってみたことがある。

 いや、それも僕の思う狂いかたで、ほんとには狂ってなかった。

 狂うことができなかった。

 結局僕は何をしても中途半端で、何も変わらなくて。


 狂おうとしただけ、ただただつらかった。


 何も変わらないのだ。

 考え方や、行動を、まるで演じてるようで。

 何をやろうにも、第三者視点の僕が根本にある気がして。

 

 結果、何にもできなくなった。


 きっと、昔からだ。


 それがいつからなのかは、分からないのだけれど。


 何で、何でこんなにもつらいんだろう。


 他の感情と同じで、つらいという感情すらも薄くなっているのかもしれない。

 もしくは長年蓄え続けて、捻れて絡み合って、何が何だか分からなくなっているのかもしれない。


 分からないのだ。

 原因が分からない。


 他人の考えている事なんて分からない。

 自分の考えなんてもっと分からない。

 何か伝えたい事はあるのかもしれないが、自分でも分かっていないのだから伝えることなんてできない。

 何で生きてるのか、生きてるとはなんなのか。


 やっぱり、分からない。

 分からないことがつらいのだろうか。

 だとしたら何が原因で分からなくなってしまったのか。


 分からない。

 分からなくなってしまったのか、分かるはずも無いのか。

 つらい。

 たぶんつらい。

 そう思う心も堪らなく薄情で。



 ほんとに、心も無くため息がでる。

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