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人になって
私は冷蔵庫にあった生春巻にチリソースをつけ、豚キムチを温めて、食卓に出しました。
箸置きと箸も用意しました。
彼が椅子に座り、無言でもくもくと食べ始めます。なんだか疲れているように見えましたがそれでも時々、うまい、と言って少し微笑むのです。
それは私の好きな笑顔でした。私も微笑み返します。あとから知ったのですが、人は表情筋というものが豊かで、猫よりも複雑な表現ができるそうです。同じ顔をすることができる、それが私はとても嬉しかったのです。
彼はいつも着ていないスーツを着ていました。彼が普段は外で何をしているのか、私は全然知りませんでした。今までは服装なんて気にしたことはありませんでしたが、そのスーツはなんだか彼をよりいっそう男らしく見せてくれている気がしました。
彼がお風呂に入り、そのあと一緒に少しお酒を飲んで、同じ布団で眠りました。懐かしい、とても懐かしい私の生活が返ってきたのでした。