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白夜  作者: 月兎
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第一章・黎明

「なぁ、誠。お前、合気道部に入らないか?」

「おいおい、俺は文芸部だって言ってるだろ!」

「いやいや、一人で行けるわけねーだろ」

「翔、じゃあ文芸部に一緒に入ってくれるか?」

翔は頷いた。俺は溜息をつきつつ、武道館へ向かった。翔が入ろうと言った合気道部とやらは、武道館で活動を行なっているらしい。翔が入部を決めた理由は部活動紹介での先輩の演武であり、その跡の言葉である。

「お前等、渋川剛毅知らんの? バキ知らんの?」

熊もかくや、そんな大男が木刀――後に木剣と言う事を知る――を肩に当て、仁王立ちしている姿は印象的であった。

「こんにちは」

「おぅ、新入生か?」

応えたのは大男である平山先輩ではなく、部長である細身の塩屋先輩であった。

「はい、入部したくて来ました!」

「へぇ、名前は?」

「久木翔です」

「徳田誠です」

俺と翔は名前を告げた。塩屋先輩は頷き、部員の方々に声を掛け、集めた。

「新入部員、こっちが久木、こっちが徳田な。皆よろしく頼むわ。今日から動ける?」

「はい、大丈夫です!」

体操服にわざわざ着替えた俺と誠はまず、受身の練習から始める。だが、その練習には先客が居た。一人は同じクラスの阿部、もう一人は情報科の一ノ瀬、最後が編入生の小島先輩だ。勿論、後で知る事となる。

「まずは、前回り受身な。中学の時に柔道はしなかった?」

「いえ、しませんでした」

と誠。

「しました」

と俺。

「なら、確認させてくれ」

塩屋先輩が俺を見据えた。緊張しつつもどうにか受身をとり、立ち上がる。

「おお、上出来だな。なら、後回り受身を平山のところで練習してこい」

「はい」

俺は正直嫌だった。平山先輩は怖いのである。

「よろしくお願いします」

「お前どこ中や?」

「え?」

「え、やない。はよ答えろ」

「英山中です」

「おまっ、遠いなぁ」

平山先輩は吹き出し、俺の肩を叩いた。痛い。

「まぁ、コイツの方が遠いが。なぁ? 阿部」

「俺ハノイですから」

ボサボサ頭をガリガリかきつつ阿部が応えた。

「後回り受身ってどういう奴なんですか?」

「熱心なんだな。見込みあるなぁ」

平山先輩は感慨深げに呟き、俺に指導してくれた。その日はその後回り受身を習い、終わった。

「今週末、師範の先生の練習だから、お前等本気で覚えろよ?」

塩屋先輩から新入生にそう突きつけられた。

「明日、16:00に集合な。俺が見てやる」

平山先輩が威圧的に言い放つ。本来の練習は17:00からだ。

「分かりました!」

阿部達が元気よく応えた。まぁ、好きにやってくれ。

「いやぁ、小林先輩可愛かったな」

練習後の誠の第一声。

「誰?」

「確かに可愛かったな」

「阿部、分かってんな。お前」

「まぁ、な」

「俺はー、三栄先輩かなー」

一ノ瀬の間延びした発言を二人はスルーした。

「徳田は? 誰派?」

「いや、女子とか見てねーし」

「お前、ホモか」

「寄んな、キメェ」

「うるさいな! 俺はお前等みたいに女子ばっか見てないって意味な。てか、三栄先輩って確か、塩屋先輩と付き合ってんじゃないの? 平山先輩から聞いたけど」

「マジで?! それ、マジで?!」

「一ノ瀬! 近いよ! 困る!」

俺達はまぁ、類にもれず馬鹿な男子高校生だ。

「小島さんは?」

「さぁー、分かんね」

はにかみつつ小島さんは言った。

「早く明日の練習になれー」

誠の叫び、下心が満載だ。

 翌日、16:00になり武道館に俺達は集合した。

「よし、阿部と徳田は塩屋に技を教えてもらえ。小島、一ノ瀬、久木は俺と受身の練習だ。良いな?」

「はい!」

俺と阿部は塩屋先輩に体の変更という技を最初に習った。力のぶつかり合いを感じる訓練でもあるこの技は、初心者にはやはりなかなか難しい。

だが、これを習得しなければそれ以上の技は無理である。幾度も繰り返し、失敗を繰り返しつつ練習をする。

「お疲れ様ですー」

「おう、ちー。お疲れー」

ちー、小林先輩である。小林千穂先輩を、塩屋先輩や三栄先輩が呼ぶ時に使う愛称である。

「お疲れ様です。小林先輩」

「お疲れ様です」

阿部の挨拶、どうも意識しているらしい。俺はこの反復練習の息抜きに挨拶した。

「ぁ……お、お疲れ、さま」

びくつく様な様子で返され、俺の小休止は終わった。まぁ、良い。さて、続きをしようかな。

「おい、やるぞ? 阿部」

「えぇ? もうちょっとだけ……眺めさせてくれ。頼む」

「いい加減にしろ。ほら」

「おいこら、お前には血も涙も無いのか?」

「あるが、俺の血も涙もお前に使うより、小林先輩に使うわ」

「お前もそういうとこ有るんだな」

「物の例えだ。ほら、続きだ」

先輩を見て、こいつらの言っている事も確かに頷けた。

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