現代風:赤ずきんちゃん
「赤津 欣也」は、
名前が「アカヅキンや」とも読めるので、
バイト仲間から「あかずきん」と呼ばれている。
今は、お菓子の「小谷」という店でバイト中だ。
……と言っても、主な仕事は、配達だ。
なんといっても、今日は、クリスマスイブ。ケーキの配達が多いのだ。
でも、いつも配達に使っているバイクは、全部ではらっていた。
――ついてない……。
こういう時は、電車、バスを使っての配達という事になっている。
一応、交通費は、バイト先から、支給される事になっているので…。
今日の配達先は、大場さん。高齢の女性だ。
彼女は、今、感染症を患っているそうだ。
なんでも、コロナより感染力が高いヤバいヤツらしい。
完全防備で行くように言われる。
カバンに、赤いサンタの衣装と、
感染防止の体をスッポリ覆う「簡易防護服」をカバンに押し込む。
配達に時間がかかりそうなので、
ケーキには、保冷剤をいっぱい入れておいた。
――ついてない……。
最寄りの地下鉄の駅まで向かったのだが、
今日は、地下鉄が止まっていた。
ケーブル損傷とか……言っていた。復旧まで、時間がかかりそうだ。
――ついてない……。
仕方なく、別な手段で向かうべく、
ネットで移動方法を検索、操作ミスでリンクをポチってしまい、変な画面に……。
慌てて、わちゃわちゃと操作してたら、なんとか、元の画面に戻った。
【よく見て操作しようね】
【慌てて操作したらいかんって……】
……そんな声が聞こえた気がした。
そこで書かれていた通り、
バスで近くまで向かうが、大場さんの家とは逆方向だった。
大場さんの家の方向に行くバスは、駅からしか出ていなかった。
なんか見ている景色が、大場さんの家とは、違う方向な気がする。
改めて、地図アプリを見ると、逆方向だった事を知る。
マジか…。もう1度、駅まで戻って…。
――ついてない……。
え~と…、
……と、スマホ操作に戸惑っていると、
「お困りですか?」
優しく対応してくれる人がいた。
大神さんという方だ。
「ちょっとお借りしますね」
【知らん人にスマホ渡したらいかんて……】
……そんな声が聞こえた気がした。
地図アプリを操作し、大場さんの家までのルートを調べてくれた。
「ありがとうございます。」
さっきと逆方向の「駅に向かうバス」に乗る。
降りようとした時、スマホPayの残高がいつの間にか無くなっていた。
あれ?、いつの間に…!?
――ついてない……。
変なリンクをタップした時か?
大神さんにスマホを渡した時か?
(実際は、どっちも…だったのだが、気づいていない。)
運転手さんは、次来た時に、
今回の分も、払ってくれたらいい…と優しく対応してくれた。
しかし、そこから、向かう為のお金もなかったりする。
スマホがあれば大丈夫と、今日は、お金を持って来ていない。
銀行口座アプリも使っていないし、
キャッシュカードは、今日もって来なかった財布の中だ。
ダメ元で、駅前交番に行く。
交番には私服警官の「狩生さん」という人が一人でいた。
【交番に私服警官って、おかしいやろ……】
……そんな声が聞こえた気がした。
俺は「狩生さん」に、
お金を貸してくれないか……と頼んでみた。
こんな時は、このアプリをダンロードして……、
銀行口座と、パスワードを登録するといいと教えてくれた。
やってみた。
なんとか、口座から、
Payアプリに1万円ほどを振り込む事が出来た。
【交番に私服警官って、おかしいやろ……】
……そんな声が聞こえた気がした。
交番では、時々、うめき声のようなものが聞こえた。
「駅チカの映画館で、最近公開になった
『ゾンビ映画』のCMが、よく流れてて、
ここまで聞こえてくるんですよ……」
「なるほど、そうなんですね」
【そんな訳あるかい……】
……そんな声が聞こえた気がした。
こうして、なんとか、
大場さんの家の方向に行くバスに乗り、そこから徒歩で歩き、
大場さんの家で、サンタの衣装を上に羽織り、
感染防止の体をスッポリ覆う「簡易防護服」を着て、
インターホンを鳴らした。
大場さんの家の前には、
保冷ボックスが置かれてて、そこに入れてくれたらいいという。
対面しなくていいのは、助かる。
そこに、ケーキを納めた、配達し終えた。
保冷剤が効いているうちに、届けられてよかった。
こうして、バイト先に戻ると……
「大丈夫だった?」と聞かれた。
駅前交番で、警官が銃を奪われ、
射殺されるという事件が起こっていたらしい。
ニュースで流れていた「狩生容疑者」は、
例の「私服警官」と言ってた人だった。
まさか……と思って、銀行口座の残高を確認した。
自分で、Payアプリに1万円振り込んだ後、
残りの残高が、ゴッソリ引き落とされている。
マジか……
――ついてない……。
しかも、やたらと大きな金額が流れていた。
1000万円の入金があり、
そして、それが引き落とされていた。
あれ?、この前、
この口座で買った「宝くじ」が当たったのかな?。
予定してなかった金額が流れるくらいは、仕方ないか……。
――後日――
警察の人がやってきた。
なんでも、俺の口座が、
オレオレ詐欺の振込先に使われたらしい。
マジか……
あの1000万円、それか…‥!?
――ついてない……。
警察官と話をしていると、オレオレ詐欺の前に、
引き出されたお金は、戻ってくる事になったという。
こうして、俺は、今、ATMの前にいる。
【ATMで返金手続きなんて、ある訳ないやん……】
……そんな声が聞こえた気がした。
「あかずきんクン」は、
こうしてドツボにハマっていきました。
皆さんも「知らない人」には、少しは警戒しましょうね。
この物語は、知らない人をうかつに信用しちゃダメ
……という教訓を伝えています。
……たぶん。




