第1章 1話:ニコイチの闇 — Part 3
フリーウェイです。
執筆を進めている中でふと気づいたのですが、
とある大手中古車販売会社が破綻したニュースを見たとき、
「そういえば、かねてから噂されていた“ニコイチ”の受け皿って、
どうなっちゃうんだろう……」
なんて考えてしまいました。
創業者の方は、岩国出身の元走り屋だったとか。
若者たちを束ねて、一代で巨大企業を築き上げた手腕は
純粋にすごいなと思います。
……あ、もちろんこの物語とは まったく関係ありません。
ただの作者の雑談です。
どうぞ気楽に、物語の続きへ進んでみてください。
アズに案内され、誠はヤードのさらに奥へと進んだ。
そこは、一般の作業員が立ち入らない“禁域”のような場所だった。
コンテナが迷路のように積み上げられ、
その間を縫うように細い通路が続いている。
通路の上には、監視カメラが等間隔に設置され、
まるで“逃げ道を塞ぐため”に配置されているようだった。
誠は、アズの背中を追いながら小声で尋ねた。
「アズ……お前たちは、どうしてここまで従っている?」
アズは歩みを止めずに答えた。
「従っているんじゃない。
“従わされている”んだ」
「家族が人質だからか?」
「それだけじゃない」
アズは立ち止まり、誠の方を向いた。
「マコト……
俺たちナヴァル人は、世界中で“居場所”がない。
国も、土地も、守ってくれる政府もない。
だから中京は言ったんだ」
アズは、皮肉な笑みを浮かべた。
「“お前たちに仕事を与える。
安全な場所を与える。
日本で暮らせるようにしてやる”ってな」
誠は眉をひそめた。
「それで……ここに?」
「ああ。
だが実際は――」
アズは周囲を指差した。
「“監視と強制労働”だ。
俺たちは、ただの“隠れ蓑”なんだよ」
誠は息を呑んだ。
アズは続ける。
「日本の警察や役所は、
このヤードを“外国人労働者の問題”だと思っている。
ナヴァル人が大量にいることで、
中京の工作員が紛れ込んでいても気づかれない」
誠は、背筋に冷たいものが走るのを感じた。
「つまり……
お前たちは“煙幕”にされているのか」
「そうだ。
俺たちがここにいることで、
中京の連中は自由に動ける」
アズは、コンテナの影に隠れるようにして歩く男たちを指差した。
「見ろ。
あいつらはナヴァル人じゃない。
中京の“フェイ・シェル候補生”だ」
誠は目を凝らした。
確かに、彼らはナヴァル人とは違う。
肌の色も、骨格も、歩き方も違う。
だが――
どこか“日本人に似せようとしている”不自然さ があった。
「……あれが?」
「ああ。
日本人の仕草、歩き方、姿勢……
全部“学習”している最中だ」
誠は息を呑んだ。
アズは続ける。
「俺たちナヴァル人がここにいることで、
中京の連中は“外国人労働者の集団”に紛れて訓練できる。
誰も疑わない。
警察も、役所も、近所の住民もな」
誠は、ヤード全体を見渡した。
ナヴァル人の生活区画。
監視カメラ。
コンテナの迷路。
そして、フェイ・シェル候補生たち。
すべてが――
“侵略のための舞台装置” に見えた。
「アズ……
お前たちは、いつからこんな状況に?」
アズは遠くを見るような目をした。
「三年前だ。
中京が俺たちの村に来て、
“仕事を与える”と言った。
俺たちは信じた。
それしか選択肢がなかった」
アズの声は震えていた。
「だが実際は……
俺たちは“日本侵略の道具”にされた」
誠は拳を握りしめた。
その瞬間、脳内に電子音が響いた。
――ピッ。
《誠。解析結果を更新する》
ASUKAの声が響く。
《ナヴァル人は“侵略プロトコルの第一層”だ。
彼らの存在が、日本の行政と警察の目を鈍らせている》
誠は息を呑んだ。
《さらに――
ナヴァル人の“生活区画”は、
フェイ・シェル候補生の“訓練場”として利用されている》
誠はアズを見た。
アズは静かに頷いた。
「マコト……
俺たちは、ただの犠牲者じゃない。
“この侵略の最前線に立たされている”んだ」
誠は、胸の奥に熱いものが込み上げるのを感じた。
怒りか。
悲しみか。
それとも――
決意 か。
アズは誠の肩に手を置いた。
「だから……
お前が必要なんだ」
誠はアズの瞳を見つめた。
その瞳には、
深い絶望と、
それでも消えない希望が宿っていた。
誠はゆっくりと頷いた。
「……わかった。
俺も、このヤードの真実を暴く」
アズは、ほんの少しだけ微笑んだ。
「ありがとう、マコト」
その瞬間、ヤードの奥から金属音が響いた。
誠とアズは同時に振り返った。
そこには――
“人間ではない何か” が動いていた。




