表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/4

第1章 プロローグ「ヤードの朝」

はじめまして。

この作品を開いてくださり、本当にありがとうございます。


本作は、

「もし“静かに侵略される日本”があったら?」

という仮定から始まったフィクションです。

私自身も近隣の何か不穏なヤードの存在や

不自然な改造車両の横行を目の当たりにし

更にはニュースやSNSで流れてくる断片的な不安、

どこかで感じる“違和感”や“影”のようなもの。

それらを物語として統合昇華し、

エンタメとして読める形にしたい――

そんな思いで書き始めました。

あ、あの、あくまでもフィクションなので、

固有名詞等は架空にしてあります。


舞台はとある祭玉県河口市(架空です)の片隅にある“ヤード”。

鉄と油の匂いが漂う場所で、

主人公・朝倉誠は、

「何かがおかしい」と気づき始めます。


重いテーマではありますが、

読者の皆さまが“物語として楽しめる”ように、

テンポと描写のバランスを大切にしています。


どうか、肩の力を抜いて陰謀論と思わずに楽しく読んでいただければ嬉しいです。

河口市の外れ。

高速道路の高架下に広がる一帯は、地図にも名前が載らない。

地元の人間はただ「ヤード」と呼ぶだけだ。


朝倉誠は、薄曇りの空を見上げながら、

その鉄と油の匂いが染みついた場所へ足を踏み入れた。


午前五時。

街はまだ眠っているはずなのに、ヤードだけは別世界のようにざわついていた。

フォークリフトのエンジン音、切断機の火花、外国語の怒号。

そして――どこかで誰かが泣いているような、くぐもった声。


「……今日も、変わらないな」


誠は、積み上げられた車の山を見上げた。

その中には、昨日見たはずの“事故車”のパーツが混ざっている。

だが、車体はもう別物になっていた。


事故車と盗難車を組み合わせ、

一晩で“合法中古車”に仕立て上げる。

このヤードでは、それが日常だった。


異常なスピード。

異常な精度。

異常な静けさ。


誠は、胸の奥に小さな違和感を抱えたまま歩き続けた。



ヤードの奥では、ナヴァル人たちが黙々と作業をしていた。

彼らは国を持たない民族。

中京連合に“保護”され、日本に連れてこられた――建前上は。


実際は、ただの隠れ蓑。

中京の工作員を潜り込ませるための“煙幕”にすぎない。


誠は、彼らの表情を見た。

疲れ切った目。

諦めの色。

そして、どこか“監視されている者”特有の緊張。


その中に、見知った顔があった。


「おはよう、マコト」


アズ――

ナヴァル人のまとめ役であり、誠が唯一心を許せる相手。


「また徹夜か?」

誠が問うと、アズは苦笑した。


「俺たちに夜はない。

 中京の監視カメラは、眠らないからな」


アズの声は冗談めいていたが、

その瞳には冗談の色はなかった。


誠は、ヤードの奥にある巨大なコンテナを見た。

その隙間から、金属の腕のようなものが伸び、

車体を持ち上げ、別の車のパーツを吸い込むように取り込み、

瞬時に組み替えていく。


まるで――

巨大な生き物が“車を食べている” ようだった。


誠は息を呑んだ。


「アズ……これはどういう仕組みなんだ?」


アズは周囲を見回し、声を潜めた。


「仕組みなんてない。

 “命令”があるだけだ」


「命令?」


「中京からのな」


誠は言葉を失った。



その瞬間、誠の脳内に微かな電子音が響いた。


――ピッ。


《誠。視覚情報を解析完了》


脳内AI《ASUKA》の声が、静かに告げる。


《このヤードは、中京連合の“侵略プロトコル”の一部だ》


誠は眉をひそめた。


「侵略……?」


《まだ断定はできない。

 だが、通常の経済活動では説明できない異常が多すぎる》


ASUKAは淡々と続ける。


《事故車と盗難車の“ニコイチ”は、

 単なる資金源ではない。

 “別の目的”のための準備工程だ》


誠は、胸の奥に冷たいものが広がるのを感じた。


「別の目的……?」


《誠。

 このヤードには“車以外のもの”も運び込まれている》


誠は息を呑んだ。


アズが、誠の視線の先を追った。


「……見たのか?」


誠は頷いた。


昨日、コンテナの影で見た日本人女性。

虚ろな目。

乾いた唇。

助けを求めるような、弱々しい声。


アズは苦い顔をした。


「マコト。

 あれは……“戸籍を売った日本人”だ」


誠は拳を握りしめた。


「売った……?」


「売らされた、が正しいかもしれんがな」


アズは、誠の肩に手を置いた。


「マコト。

 お前はまだ知らない。

 ここは“車の墓場”じゃない。

 “日本の墓場”なんだ」


誠は息を呑んだ。


ASUKAが静かに告げる。


《誠。

 このヤードは“侵略プロトコルの第一段階”だ》


誠は、アズの瞳を見つめた。


アズの瞳には、

深い絶望と、

それでも消えない希望が宿っていた。


「マコト……

 俺たちは、ただの隠れ蓑じゃない。

 “お前を待っていた”んだ」


誠は言葉を失った。


アズは続ける。


「中京は、もう動き始めている。

 だが、俺たちナヴァル人には逆らえない。

 家族が人質だ。

 だから……

 “お前の力”が必要なんだ」


誠は深く息を吸い込んだ。


ヤードの空気は重く、

どこか腐ったような匂いがした。


だが――

その奥に、確かに“何か”が蠢いている。


車のニコイチ。

日本人の幽閉。

中京の影。

ナヴァル人の沈黙。

ASUKAの警告。


すべてが、

ひとつの巨大な“侵略の構造” に繋がっている。


誠は、ゆっくりと頷いた。


「……わかった。

 俺が確かめる。

 このヤードの“本当の目的”を」


アズは、ほんの少しだけ微笑んだ。


「ありがとう、マコト」


その瞬間――

ヤードの奥から、金属音が響いた。


誠とアズは同時に振り返った。


そこには――

“人間ではない影” が立っていた。


こうして、

国家の“部品化”の物語が静かに幕を開ける。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。


プロローグでは、

“ヤード”という閉ざされた空間を通して、

この物語の空気感を感じていただけたら幸いです。


本作はフィクションであり、

実在の国家・個人・団体とは一切関係ありません。

しかし、ただの陰謀論じゃねえのと思わずに

「もしこんな世界があったら?」

という想像の余白を楽しんでいただければと思います。


これから物語は、

ヤードの闇、

ナヴァル人(架空)の影、

中京連合(架空)の思想、

そして“居抜き侵略”の全貌へと進んでいきます。


もし少しでも続きが気になったら、

ブックマークや評価をいただけると励みになります。


次話「ナヴァル人の影」も、どうぞよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ