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公爵に捨てられた侍女の子供ですが、猫として生きていきます  作者: りな


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起きたら、朝でした

私は、とっても幸せな夢を見ていた気がする。

だって――とても、暖かかった。

ふわりと、意識が浮かび上がる。

……?目を開けた、その瞬間。――目の前に、少年。

「っ!?」

がばり、と起き上がって、 反射的に、窓を見る。外が、少し明るくなってきてる。

ヤバい。

ヤバい。

ヤバい。

完全に、アウトの時間帯だ。私は、考えるより先に動いていた。

ダッシュ。少年の部屋を飛び出し、 廊下を全力で走る。

(間に合って……!)

自分の部屋の前に着いた瞬間、 私は、心の底から安堵した。

――扉が、少しだけ開いている。セーフ……?スルリ、と猫の身体を滑り込ませる。

その瞬間。――視線が、合った。



ベッドの横に立つ、一人の女性。手には、 私が脱いだままの、夜着。表情は、 まるで、能面。

……あ。ヴァレンティナ様、だった。

「……もしかして」

静かに、言葉が落ちる。

「アリアかしら?」

声は、絶体零度。私は、反射的に、 全身の毛を――ぶわり、と逆立てた。

(逃げるしか――!)

私は、床を蹴った。ダッシュ。

――しかし。その瞬間、 ヴァレンティナ様の手が、動いた。

ひゅっ、と空を切る音。投げられたのは、 手にしていた、夜着。視界が、完全に遮られる。

「にゃっ!?」

一瞬の、隙。――捕まった。首元を、しっかりと掴まれる感触。

私は、悟った。

(あ、これ……。詰んだ)

こうして。 幸せな夢の続きは、 朝の現実に、無慈悲に引き裂かれたのだった。


「ねぇ、アリア」

ヴァレンティナ様は、私の首根っこを掴んだまま、静かに言った。

「これは、どういう事なのかしら?」

……やばい。

私は、猫のまま、 徹底的に、無言を貫いた。

下手に鳴いたら、 何かが決定的に終わる気がしたからだ。

「アリアは、悪くないの!」

突然、扉が勢いよく開いた。慌てて着替えた様子の少年が、 ぱたぱたと部屋に駆け込んでくる。

「夜、一緒に絵本を読んでたら、寝ちゃったの!」

……少年。それは。 それは一番、 言ってはいけない答え――!

「まあ」

ヴァレンティナ様の声が、 一段、低くなる。

「それはつまり」

視線が、私に落ちる。

「アリアが、猫だった、と?」

……声だけで、人が殺せそうです。

「そうなの!」

少年は、必死だった。

「アリア、猫だったの!」

……うん。 猫だったからって、ね?

私は、恐る恐る、 ヴァレンティナ様を見上げた。

彼女は、にこりと微笑んでいた。――目は、まったく笑っていなかったけれど。

「そう」

ヴァレンティナ様は、穏やかな声で言った。 「私は、アリアと二人で話がしたいの」

そして、 ゆっくりと、少年を見る。

「だから、あなたは先に食事に行きなさい」

その場の空気が、凍りついた。

「……は、はい」

少年は、その“圧”に抗えず、 それだけ答えた。

扉の前で一度だけ振り返り、 心配そうな顔を私に向けてから、 静かに、部屋を出ていく。

――逃げた。 いや、逃がされた。残されたのは、 私と、 ヴァレンティナ様だけ。

「アリア」

名前を呼ばれて、 びくり、と身体が跳ねた。

「私はね」

ヴァレンティナ様は、 少しだけ、微笑んだまま言う。

「あなたに、きちんと淑女教育をしてきたつもりなのだけど?」

……にこり。

でも。目が、怒っている。完全に、 本気で、怒っている。

……あ。これは。 猫とか、 夜の探検とか、 そういう次元の話じゃない。

私は、 心の底から、そう悟った。

――怖い。とても、怖い。

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