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公爵に捨てられた侍女の子供ですが、猫として生きていきます  作者: りな


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公爵に言いました

朝の廊下は、まだ少し冷えていた。

 私は、少年と手を繋いで、朝食の部屋へと向かっていた。

「……アリア?」

 後ろから、聞き慣れた声。

 振り返ると、そこに立っていたのは、父さんだった。

「おはようございます」

 私は、ちゃんとそう言った。

 父さんは、一瞬、言葉を探すように視線を彷徨わせてから、戸惑いを隠せない声で尋ねる。

「……いつ、人間に?」

「まだ、暗い時間に」

 私は、少し考えてから答えた。

「なんだか、目が覚めて、自分の部屋に行ったの。それでね、人間になりたい、って思ったら……なれた」

 ――本当は、真夜中だけど。でも、暗かったのは同じだし。間違ってはいない、はず。

 父さんは、私の顔をじっと見つめてから、  ふう、と小さく息を吐いた。

 なぜか、少しだけ、ほっとした顔だった。

「……そうか。自分の意思で、なれたのか」

 私は、こくりと頷く。

 次の瞬間、 父さんは、そっと私の頭に手を置いた。

 ――よし、よし。

 撫でる、というより、確かめるような、慈しむような動き。

 ……少し、くすぐったい。なんだろう、これ。

 でも、 悪くない。

 私は、ちょっとだけ上目遣いで父さんを見た。そこには、 とても、優しい瞳があった。

 そのとき。

「ほら、早くご飯、食べに行こう」

 少年が、 間に割って入るように言った。

 そして、そのまま、 私の手をぐいっと引く。

「そうだね」

 私は、笑って答えた。

 父さんを廊下に残して、 私と少年は、 朝の屋敷を軽やかに駆け出した。


朝食の席で、 私は、公爵に向かって言った。

「私が――人間として、ここで暮らしていくことは、できますか?」

 食器の触れ合う音が、 一瞬だけ、止まった気がした。

 公爵は、私を見て言う。

「それは、貴族としてか?それとも、平民としてか?」

 温度のない声だった。 感情を交えない、判断だけの声。

「兄さん」

 父さんが、 少し慌てたように口を挟む。

 けれど、 私は視線を逸らさなかった。

「平民としてしか生活できない、というのなら。それに、従います」

 淡々と、 でも、はっきりと。

「でも。もし、貴族として生きられるのなら、……嬉しいです」

 ――母さんは、平民だった。

 平民のままでは、 きっと、少年の隣には立てない。でも。 遠くからでも、 支えることは、できるかもしれない。

 公爵は、少し間を置いてから言った。

「貴族としてなら、今よりも厳しい勉強が増える。それでも、いいのか」

「それは」  

私は、即座に答えた。

「覚悟の上です」

 公爵は、私を見つめたまま、 しばらく黙っていた。やがて。

「……少し、相談させてほしい」

 ――考えさせて、ではなく。 相談、させてほしい。

 誰に? 父さんに? それとも、もっと別の誰かに?

 私は、深くは考えず、 ただ、頷いて

「はい」

一言だけ、答えた。

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