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公爵に捨てられた侍女の子供ですが、猫として生きていきます  作者: りな


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ベッドの下で

私は、少年を探した。

 少年の部屋。中庭。食堂。書庫。

 ――どこにも、いない。

 ……どうして?

 外に出た?

 でも、誰も見ていないと言っていた。

 胸の奥で、不安が、むくむくと大きくなっていく。もう一度、少年の部屋に戻った。

 ……落ち着いて。

 落ち着いて、考えるの。

 私は、深く息を吸った。

 ……あれ?

 少年の部屋だから、少年の匂いがするのは当たり前。

 けれど――この、強さ。

 まるで、本人が、すぐ近くにいるみたいな。

 もう一度、そっと息を吸う。

 ……いる。やっぱり、いる。

 私は、カーテンを引き、

 ベッドの下を、そっと覗き込んだ。

 ――いた。

 小さく身を縮めて、

 少年は、ベッドの下に隠れていた。

「……どうして、わかったの?」

 少年は、目を見開いていた。

 その表情があまりにも驚いていて――

 私は、つい。

 何も考えずに、言ってしまった。

「大好きだから、わかるの」

 かくれんぼで隠れていた子を見つけた時の、あの、嬉しさのままに。

 少年は、さらに驚いた顔をしたあと、

 ぽつりと言った。

「……初めてだよ。見つかったのは」

「出ておいで」

 私は、ベッドの下へ向けて、手を差し出した。

 けれど――

 少年は、その手を、ぐいっと引いた。

 そして、そのまま。

 私を、ベッドの下へと、引き込んだ。


ベッドの下。

 薄暗い空間で、少年の瞳が、きらりと光った。

 その光に、私は、思わず心臓が跳ねる。

「……今日ね」  

少年は、小さな声で言った。

「反獣人思想、っていうのを聞いたんだ」

 ……反獣人思想?

 聞き慣れない言葉に、私は首をかしげる。

「……異形によって造られた獣人は、みんな殺すんだって」  

少年は続けた。

「イシツ、とか……コトワリから外れてる、とか……」

 そこで、言葉が途切れた。

 ……ああ。

 前の世界でも、人種差別はあった。

 侵略の名のもとに、先住民が大量に殺された歴史も、私は知っている。

 獣人という存在が、差別され、排除される。――十分、あり得る話だ。

「……僕、こわい」

 少年の声は、震えていた。

 人が、家畜を殺すように。人が、人を殺す。それは、決して、物語の中だけの話じゃない。

「どうして……そんなこと、言えるんだろう」

 ……ああ。この子は、優しい。

 本で世界の残酷さを少しは知っていても、

 本質は、とても温かい場所で育ってきたのだ。

「僕は……」  

少年は、ぎゅっと拳を握った。

「アリアが、殺されるなんて……イヤだよ」

 ……そっか。ありがとう。

 私も、少年が、殺されるなんて、イヤだよ。

「……そうなんだね」  

私は、静かに言った。

「……アリアは、怖くないの?」  

少年は、不安そうに、私を見た。

「こわいよ」  

私は、正直に答えた。

「でも……知ったから、どうすればいいのか、考えられる」  

一呼吸おいて、続ける。

「教えてくれて、ありがとう」

 少年は、ぱちぱちと目を瞬かせた。

 まるで――

 そんな答えが、返ってくるとは思っていなかったみたいに。

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