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公爵に捨てられた侍女の子供ですが、猫として生きていきます  作者: りな


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親子鑑定しました

「あの……鑑定、とは何ですか?」

 私はおずおずと、弟に問いかけた。

「ああ。そういう道具があるんだよ」  

弟は、なんでもないことのように言う。

「少しお金はかかるけど、簡単で、すぐに終わる」

 ……まったく、分かりません。

 私の混乱をよそに、私たちは廊下を歩きながら話を続けていた。

「兄さん、親子鑑定はいつにしようか?」  公爵の姿を見つけるなり、弟がそう切り出す。

「早い方がいいな」  

公爵は書類から顔を上げて、即答した。

「じゃあ、これから行って来るよ」  

弟も、迷いなくそう言った。

 ……待って。

 そんな軽いノリで、できるものなんですか?朝ごはん、何にする?……みたいな感覚で言わないでください。

 こっちは――

 私の人生、かかってるんですけど!?

 心の中で必死に叫びながら、

 私はただ、二人の会話を呆然と聞いているしかなかった。


「僕も行く」

 少年が、きっぱりと言った。

「だめだ」

 公爵は即座に首を振る。

「あそこは、子供が簡単に出入りする場所じゃない」

 ……そんな恐ろしい所に、行くんですか?

 それに私も、年齢的には子供なんですが。

「行って来るね」

 弟に促され、私は歩き出した。

 ……え、徒歩ですか?

 屋敷を出て、町を歩く。

 人の姿、並ぶ店、混ざり合う匂い、飛び交う声。

 ――同じ町なのに。

 猫として見ていた時とは、まるで違う。

「ここだよ」

 弟が足を止めた先にあったのは、

 どこか協会のような建物だった。

 中へ入ると、しんと静まり返っていて、人の気配がない。

 弟は迷いなく、奥の部屋へと入っていった。

 そこに置かれていたのは、

 ――台秤のような、不思議な装置。

 弟は財布から硬貨を取り出し、装置の一部へ入れた。

 ……あれ。

 金色、ですよね?

 金貨、というものでは?

 つまり――大金では?

 弟は次に、ポケットから小さなナイフを取り出した。

 そして、ためらいなく指先を切り、血を秤の片側へ垂らす。

「アリアも」

 ……え。

 痛そうなんですけど。

 抗議する間もなく、弟は私の手を取り、素早く指先を切った。

 小さな痛みとともに、血がもう片方へ落ちる。

 ……なんだか、とても手慣れてませんか?

 あと、普通に痛いです。

 声が出なかった。

 しばらくして、

 弟は台秤の下にある引き出しを開けた。

 中から、一枚の紙を取り出す。

 弟は――満面の笑みを浮かべた。

「……親子、だよ。アリア」

 …………え?

 お父さん?

 いや、それより。

 その紙、どこから出てきたんですか?

 仕組みも理屈も、まったく分からない。

 混乱する私をよそに、弟は紙を眺めながら、ぽつりと呟いた。

「親子鑑定は、ロストテクノロジーなんだ」

 独り言のような声だった。

「僕らの世界は、一度滅んでいる。とても高度な文明だったらしい」

「時々、こうして遺産が発掘される。親子鑑定は、よくある遺産なのさ」

 私は、思わず瞬きをした。

「僕らは、理屈も理論も、構造すらも、わからない」

 ……それは。

 確かに、高度な文明ですね。

 でも――

 血縁を判別する道具が、当たり前のように遺産として残っている文明。

 ……欲望がダダ漏れすぎませんか?

 それ、便利というより、危険な文明だったのでは?

 私が考え込んでいると、

 弟は装置に手を触れながら、さらに言った。

「これはね、発見されてからずっとここにあるんだ。誰にも、動かすことは出来なかった」

 ……え。

 改めて周囲を見る。

 建物は古いけれど、装置の下だけ――妙に不自然だ。

 床ではなく、むき出しの地面。

 まるで――

 ……先にモノがあって、

 その“あと”に、建物を作ったみたいじゃありませんか。

 そう思った瞬間、背筋がぞわりとした。

 私は、紙を握ったまま、

 言葉を失っていた。

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