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公爵に捨てられた侍女の子供ですが、猫として生きていきます  作者: りな


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公爵と弟は仲良なくなったらしい

その日は、公爵の弟が屋敷を訪ねてきていた。

 前に会ったときより、なんとなく身なりがきちんとしている。……気のせいかもしれないけど。

 二人は書斎で何か話をしていたらしい。

 私は夕食の席で、少年の足元に陣取りながら食事をしていた。

 すると、公爵が口を開いた。

「明日から、弟もこの屋敷で一緒に住むことになった。今日は準備のため、一度戻るそうだ」

「よろしくお願いします」

 弟がそう言って、軽く頭を下げる。

 ……え。

 えええ?

 あの人が、ここに住むの?

 公爵、本気ですか?

 ロケットを盗もうとした危険人物ですよ!?

 二人が向かい合って、穏やかに微笑み合っている。

 ……いやいや、そんな和やかな空気出してる場合じゃありません!

「そうなの?」

 少年が無邪気に聞く。

「ああ。兄さんの仕事を手伝うことにしたんだ。公爵夫人もいなくなったし、人手が少ないだろ?」

 ……使用人さん、ちゃんといます。

 足りてます。

 どうぞ、お帰りください。

 そんな私の必死な心の叫びなど知る由もなく、弟はふとこちらに視線を向けた。

「アリアは、今は猫なんだね。色が……彼女と同じだね」

 弟は、私を見てそう言った。

 ……ひゃー。

 なんか、声に熱がある。

 やだ。

 やだ。

 やだー!

 ぞわりと毛が逆立つのが、自分でも分かった。

 反射的に、私は少年のお腹に飛び乗った。

「わっ」

 少年は少し驚いたものの、すぐに私を受け止めて、背中を撫でてくれる。

「食事中は、お行儀悪いから、だめだよ」

 そう言いながらも、撫でる手はやさしい。

 ……うう。

 叱られた。

 でも、離れる気は、まったくなかった。


「じゃあ、明日ね」

 弟がそう言った。

「こちらも、用意しておくよ」

 公爵も、自然にそれに応じる。

 ……何か、仲良くなってません?

 いつの間に、そんな関係に。

 弟は踵を返しかけて――ふと、こちらを見た。

 ぱちり、と目が合う。

 そして、爽やかとも言える笑顔を浮かべる。

 ……そんな顔をされても、私は騙されません。

 服にくるんで連れ去ろうとしたの、ちゃんと覚えてますからね。

 気づけば、私の毛は自然と逆立っていた。

「よしよし」

 少年が、そう言いながら私の背を撫でる。

 ……あの。

 それ、今すごく危険です。

 でも、私はここから動けなかった。

 撫でられるたびに、ざわついていた心が、少しずつ凪いでいくのがわかる。

「今日も、一緒に寝ようね」

 少年が無邪気に言った、その瞬間。

 部屋を出ようとしていた弟が、振り返った。

 視線が、まっすぐ私に向けられる。

 ……何ですか、その目は。

 視線だけで、人は殺せませんからね。

 ――嘘です。

 少し、死にそうです。

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